日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 惑星科学

2024年5月31日(金) 10:45 〜 12:00 102 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:荒川 創太(海洋研究開発機構)、田畑 陽久(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、冨永 遼佑(東京工業大学 理学院地球惑星科学系)、座長:長谷川 幸彦(東北大学)、荒川 創太(海洋研究開発機構)、冨永 遼佑(理化学研究所 開拓研究本部 坂井星・惑星形成研究室)、田畑 陽久(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)

11:45 〜 12:00

[PPS07-10] 土星リング内に埋め込まれた小衛星が作るギャップ構造の大局的N体シミュレーション

*鳥居 尚也1井田 茂1小久保 英一郎2、道越 秀吾3 (1.東京工業大学、2.国立天文台、3.京都女子大学)

キーワード:土星リング、土星衛星、N体シミュレーション

土星リング内に埋め込まれた小衛星DaphnisとPanはリング内にギャップ構造を形成していることが知られている (e.g., Porco et al., 2005). ボイジャー探査機とそれに続くカッシーニ探査機により, ギャップ端の密度波, 鋭く断ち切れたギャップ端, 山脈のように聳え立った鉛直構造など, 小衛星が作るギャップ構造の様々な特徴が詳細に観測された. しかしこうした構造はこれまで, 動径方向1次元の拡散モデル (Gratz et al., 2018), テスト粒子を用いた軌道計算 (Weiss et al., 2009), 局所的N体シミュレーション (Lewis & Stewart, 2000) など, 個別の手法・枠組みの中で個別に議論されてきた. 本研究では, これらの構造を統一的に調査するため, 数百万体の粒子を用いて, 小衛星によるギャップ形成の大局的な高解像度N体シミュレーションを実施した. 粒子間の相互作用として全ての粒子の非弾性衝突・自己重力を考慮した. 衛星の軌道進化とギャップ形成を分離して議論するため, 衛星の軌道はケプラー円軌道で固定した.

その結果, ギャップ端の密度波, 鋭く断ち切れたギャップ端, 鉛直構造など, カッシーニによって観測された特徴的な構造を統一的に再現することに成功し, 粒子間, または粒子-小衛星間の相互作用によってそれらが同時に形成されるメカニズムが明らかになった. 粒子間の非弾性衝突による離心率の減衰により鋭く断ち切れたギャップ端が際立って形成される. そして, 粒子間の非弾性衝突により, 小衛星との会合で誘起された面内のエピサイクル運動が鉛直運動へ転化されることで, 自然に鉛直構造を説明できることを新たに発見した. 鉛直方向への転化は, エピサイクル位相がずれて衝突速度が大きくなる2巡目の波面で特に顕著となる. その鉛直方向の高さは小衛星のヒル半径でスケールされ, 観測と整合的な結果が得られた.