16:00 〜 16:15
[PPS07-18] 高速自転コマ型天体における衝突クレーターの形状シミュレーション
地球近傍小惑星(162173)リュウグウのコマ型形状は、過去の臨界角速度ωc(天体の赤道において、天体重力と遠心力がつり合う時の自転角速度)に近い高速自転下で形成されたと考えられている(Watanabe et al. 2019)。このような高速自転する小天体上で天体衝突が起こると、エジェクタの軌道がコリオリ力によって西に曲げられて、クレーターリムの西側が東側より高くなる東西非対称性が生じることが示唆された(Hirata et al. 2019)。また、本研究の第一段階では、高速自転をする球形の小天体上で赤道に形成されるクレーターの、地滑り緩和で安定化した地形の非対称性を調べた。その結果、クレーターの東側に幅広なリムや真東で局所的に高いリムが見られ、地滑り緩和後も特徴的な非対称性が残ることがわかった。しかし、高速自転時の球形天体の表面は実効的重力(天体自己重力と遠心力の合力)によって実質的に斜面であり、この傾斜角が安息角30°を越え地滑りに対して不安定である。そこで、本研究の第二段階では、リュウグウのような地滑りに対して安定なコマ型形状を仮定して同様のクレーター地形解析を行い、その非対称性を明らかにすることを目的とした。
まず、Matsumoto et al. (2020)による、リュウグウ形状モデルから算出された球面調和関数から、軸対称なコマ型形状天体を求めた。この天体形状を薄い円盤の重ね合わせとして考えることによって重力場を計算し、臨界角速度ωcに近い自転角速度ω~ (ω~=ω~/ωc)で高速自転下での実効的重力を計算した。さらに、コマ型天体の重力、遠心力、コリオリ力からなるエジェクタの運動方程式を積分計算することでエジェクタの軌道と天体表面への着地点を求め、クレーター近傍でのエジェクタの厚さ分布を求めた。
コマ型天体の実効的重力を計算した結果、ω~=0.95 (リュウグウの自転周期で約3.5 h)では、表面の実効的重力による傾斜角が概ね30°-35°の範囲内になった。このことは、リュウグウの自転周期が約3.5 hの高速自転下で赤道方向への地滑りが起こり、傾斜角が安息角になり地滑りが止まることでコマ型形状が形成されたことを意味している。
また、リム半径Rr=50 m (半径448.2 mの球形と仮定したリュウグウ上)で赤道上にあるクレーターを仮定してω~を変えて、エジェクタ降り積もりによる厚さ分布を求めた。ω~≧0.8では、クレーター東側にエジェクタが着地しない領域ができ、この境界が東に凸の放物線状となった。ω~=0.9で着地域の東側境界付近にリムとは別の第2の厚さのピークが現れ、ω~=0.95では東側に2つのピークが融合した高いピークができた。このように、高速自転するコマ型天体においても、ω~≧0.8ではクレーター形状の東西非対称性が見られ、特に東側リムに特徴的な形状が見られた。
しかし、天体衝突による天体表面の掘削でできるクレーター形状は、衝突点近傍の表面地形によって変わり、これによって放出されるエジェクタの体積も変化するため、クレーターの位置による掘削クレーターの形状やエジェクタの放出体積の変化を考慮した解析を行う必要がある。また、実効的重力による天体表面の傾斜による地滑り方向の非対称性も考慮した緩和過程の解析を行う必要がある。本学会では、この2点を考慮したクレーター地形解析の方法や、この方法を導入したクレーター地形の非対称性の結果も報告する予定である。
まず、Matsumoto et al. (2020)による、リュウグウ形状モデルから算出された球面調和関数から、軸対称なコマ型形状天体を求めた。この天体形状を薄い円盤の重ね合わせとして考えることによって重力場を計算し、臨界角速度ωcに近い自転角速度ω~ (ω~=ω~/ωc)で高速自転下での実効的重力を計算した。さらに、コマ型天体の重力、遠心力、コリオリ力からなるエジェクタの運動方程式を積分計算することでエジェクタの軌道と天体表面への着地点を求め、クレーター近傍でのエジェクタの厚さ分布を求めた。
コマ型天体の実効的重力を計算した結果、ω~=0.95 (リュウグウの自転周期で約3.5 h)では、表面の実効的重力による傾斜角が概ね30°-35°の範囲内になった。このことは、リュウグウの自転周期が約3.5 hの高速自転下で赤道方向への地滑りが起こり、傾斜角が安息角になり地滑りが止まることでコマ型形状が形成されたことを意味している。
また、リム半径Rr=50 m (半径448.2 mの球形と仮定したリュウグウ上)で赤道上にあるクレーターを仮定してω~を変えて、エジェクタ降り積もりによる厚さ分布を求めた。ω~≧0.8では、クレーター東側にエジェクタが着地しない領域ができ、この境界が東に凸の放物線状となった。ω~=0.9で着地域の東側境界付近にリムとは別の第2の厚さのピークが現れ、ω~=0.95では東側に2つのピークが融合した高いピークができた。このように、高速自転するコマ型天体においても、ω~≧0.8ではクレーター形状の東西非対称性が見られ、特に東側リムに特徴的な形状が見られた。
しかし、天体衝突による天体表面の掘削でできるクレーター形状は、衝突点近傍の表面地形によって変わり、これによって放出されるエジェクタの体積も変化するため、クレーターの位置による掘削クレーターの形状やエジェクタの放出体積の変化を考慮した解析を行う必要がある。また、実効的重力による天体表面の傾斜による地滑り方向の非対称性も考慮した緩和過程の解析を行う必要がある。本学会では、この2点を考慮したクレーター地形解析の方法や、この方法を導入したクレーター地形の非対称性の結果も報告する予定である。