17:15 〜 18:45
[PPS07-P04] エウロパ内部の液体領域とElectrofreezing効果
キーワード:エウロパ、Electrofreezing効果、内部海・氷殻内部分溶融領域、H2O‐MgSO4系
木星のガリレオ衛星の内、エウロパ、ガニメデ、カリストの3つは表面の大部分が氷に覆われた氷衛星であり、ガリレオ探査機による調査や衛星軌道の観察から、その内部構造が推定されている(Fig.1)。また探査機による近赤外分光調査からエウロパ表面にはMgSO4水和物を主成分とする塩水和物の存在が推定される (J. B. Dalton et al. 2007)。そしてこの塩水和物は内部海等の液体領域由来である可能性が指摘されている(K. M. Soderlund et al. 2019)。さらに塩の溶解によってエウロパの内部海が導電性をもつ場合、木星磁場圏内を公転することで電磁誘導則に従う電場が内部海中に発生する(D. S. Colbern et al. 1986)。
電場環境下に液体水が存在する場合、液体水の過冷却状態後の凝固温度は、電場印加による影響を受けると考えられている(Electrofreezing効果、以後電場凍結効果と呼称)。この効果はギブスの自由エネルギー変化に伴う臨界核半径の減少(T. Kang et al. 2020)等の各要因の複合によって発生すると理論的・定性的に理解される。実験的にも電場凍結効果はH2O単成分系について多くの先行研究によって検証されている(S. Wei et al. 2008等)。しかしエウロパの内部海や氷殻内部分溶融領域に推定される塩水溶液についての電場凍結効果を調べた先行研究は少ない(Yahong Ma et al. 2010 (NaCl水溶液), L. F. Javitto et al. 2023 (硝酸塩水溶液)の2例)。2者の実験条件が異なることに注意が必要だが、測定された電場凍結効果は前者で-1.5℃の凝固温度降下、後者で+17.5℃の凝固温度上昇となり、相反する傾向であることが分かる。
以上の議論からエウロパ内部海や氷殻内部分溶融領域が、氷衛星の全球的なの時間経過による冷却を経験し過冷却状態となった場合、これらの液体領域の温度変化に対する相の安定性は、木星磁場に起因する電場凍結効果の側面から影響を受ける可能性がある。即ち電場凍結効果はこの過程で氷殻-内部海境界付近の凝固を抑制または促進することで氷衛星の熱進化モデル(H. Hussmann et al. 2002)を変更し得る。しかし前述のとおり塩水溶液についての電場凍結効果を調べた先行研究は少なく、また各実験条件によって結果が大きく異なっている。そしてエウロパ内部海や氷殻内部分溶融領域への溶解が推測される塩類の代表候補である、MgSO4水溶液の電場凍結効果についてはまだ調べられていない。
私の研究ではMgSO4水溶液における電場凍結効果を調べるために実験装置(Fig.2)を整備し、5wt.%~15wt.%のMgSO4水溶液を試料とした凝固実験を行う。以下に簡単な実験手法をまとめる。Ⅰ.試料室に封入した試料に0.0~1.1×103[V/m]の電場を印加しながら室温または7℃から、0.4[℃/min]で冷却する。Ⅱ.試料がリキダス温度以下で凝固する直前の温度(以後凝固温度と呼称、凝固は顕微鏡観察及び潜熱の検出から確認)を記録する。測定及び観察は、試料室内に接続したK型熱電対による温度測定、電流値の測定、光学顕微鏡観察によって行う。本研究で特に15wt.%のMgSO4水溶液を試料とした場合、凝固温度が-10.3±1.0[℃] (0.0[V/m])から-7.5±1.6[℃] (1.1×103[V/m])へ、電場凍結効果により2.8℃上昇したことが分かった。この結果を氷衛星内部に適用すると(比較的MgSO4濃度が高い場合、) 内部海や氷殻内部分溶融領域は冷却に伴い早期に凍結する可能性が示唆される。しかし現在の実験条件は実際の氷衛星内部条件より高い電場条件で行っているため、より低い電場条件や、別の塩類候補(NaCl, Na2SO4)を用いた電場凍結効果の追加の検証を行う。
電場環境下に液体水が存在する場合、液体水の過冷却状態後の凝固温度は、電場印加による影響を受けると考えられている(Electrofreezing効果、以後電場凍結効果と呼称)。この効果はギブスの自由エネルギー変化に伴う臨界核半径の減少(T. Kang et al. 2020)等の各要因の複合によって発生すると理論的・定性的に理解される。実験的にも電場凍結効果はH2O単成分系について多くの先行研究によって検証されている(S. Wei et al. 2008等)。しかしエウロパの内部海や氷殻内部分溶融領域に推定される塩水溶液についての電場凍結効果を調べた先行研究は少ない(Yahong Ma et al. 2010 (NaCl水溶液), L. F. Javitto et al. 2023 (硝酸塩水溶液)の2例)。2者の実験条件が異なることに注意が必要だが、測定された電場凍結効果は前者で-1.5℃の凝固温度降下、後者で+17.5℃の凝固温度上昇となり、相反する傾向であることが分かる。
以上の議論からエウロパ内部海や氷殻内部分溶融領域が、氷衛星の全球的なの時間経過による冷却を経験し過冷却状態となった場合、これらの液体領域の温度変化に対する相の安定性は、木星磁場に起因する電場凍結効果の側面から影響を受ける可能性がある。即ち電場凍結効果はこの過程で氷殻-内部海境界付近の凝固を抑制または促進することで氷衛星の熱進化モデル(H. Hussmann et al. 2002)を変更し得る。しかし前述のとおり塩水溶液についての電場凍結効果を調べた先行研究は少なく、また各実験条件によって結果が大きく異なっている。そしてエウロパ内部海や氷殻内部分溶融領域への溶解が推測される塩類の代表候補である、MgSO4水溶液の電場凍結効果についてはまだ調べられていない。
私の研究ではMgSO4水溶液における電場凍結効果を調べるために実験装置(Fig.2)を整備し、5wt.%~15wt.%のMgSO4水溶液を試料とした凝固実験を行う。以下に簡単な実験手法をまとめる。Ⅰ.試料室に封入した試料に0.0~1.1×103[V/m]の電場を印加しながら室温または7℃から、0.4[℃/min]で冷却する。Ⅱ.試料がリキダス温度以下で凝固する直前の温度(以後凝固温度と呼称、凝固は顕微鏡観察及び潜熱の検出から確認)を記録する。測定及び観察は、試料室内に接続したK型熱電対による温度測定、電流値の測定、光学顕微鏡観察によって行う。本研究で特に15wt.%のMgSO4水溶液を試料とした場合、凝固温度が-10.3±1.0[℃] (0.0[V/m])から-7.5±1.6[℃] (1.1×103[V/m])へ、電場凍結効果により2.8℃上昇したことが分かった。この結果を氷衛星内部に適用すると(比較的MgSO4濃度が高い場合、) 内部海や氷殻内部分溶融領域は冷却に伴い早期に凍結する可能性が示唆される。しかし現在の実験条件は実際の氷衛星内部条件より高い電場条件で行っているため、より低い電場条件や、別の塩類候補(NaCl, Na2SO4)を用いた電場凍結効果の追加の検証を行う。