日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS07] 惑星科学

2024年5月30日(木) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:荒川 創太(海洋研究開発機構)、田畑 陽久(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、冨永 遼佑(東京工業大学 理学院地球惑星科学系)

17:15 〜 18:45

[PPS07-P16] 氷球の低速度斜め衝突に関する実験的研究:二次元レーザー変位計を用いた球の回転と位置変化の観察

*豊田 優佳里1荒川 政彦1 (1. 神戸大学)

キーワード:土星リング、氷、衝突実験

はじめに:土星リングシステムは厚さ~数10 mの非常に薄い円盤状であり,複数のリングで構成されている.それらのリングのうち,A, Bリングは観測から光学的に厚いことが知られており,dense ringと呼ばれている.dense ringではリング粒子間の距離がリング粒子の平均自由工程と同程度またはそれ以下であることから,dense ringの動力学はリング粒子間の衝突現象によって支配されていると考えられている.dense ringは数 mm-数10 mのリング粒子から構成されており,組成は主に水氷(> 90wt.%)であると推測されている.また,最新の観測からリング粒子は空隙を含む多孔質な氷粒子集合体であると予測されている.衝突のほとんどは斜め衝突であり,斜め衝突におけるエネルギー散逸(法線方向・接線方向の反発係数)はリングの動力学を考える上で重要である.Supulver et al., 1995では,振り子衝突装置を用いて霜のない氷球(半径2.5 cm)と氷板との衝突実験(実験温度~100 K, 衝突速度0.02-1 cm/s)を行い,反発係数を測定した.その結果,法線方向の反発係数は衝突速度の増加に伴って減少するが,接線方向の反発係数は衝突速度の増加に伴って~0.9に漸近することがわかった.本研究では,リング粒子の最新の観測結果と整合的な模擬物質である多孔質氷球及び空隙のない氷球を用いた低速度斜め衝突実験を行った.また,水平及び高さ方向の変位や回転を観察するため,二次元レーザー変位計を用いて衝突前後の球の運動を観察した.

実験方法:本研究では滑らかな表面を持つ氷球及び多孔質氷球(半径1.5 cm)を任意の角度に傾けた花崗岩板へ自由落下させて衝突実験を行った.花崗岩板の質量は氷球よりも十分に大きいため,半無限体の花崗岩への衝突であると考えられる.実験は衝突速度~50 cm/s,衝突角度30°, 45°, 60°の3種類(90°が正面衝突)の条件下で行い,衝突前後の球の位置変化を二次元レーザー変位計で計測した.二次元レーザー変位計は図1のように設置し,高さ75 μmごとの球の輪郭(水平位置)を水平分解能5 μm・時間分解能Δt = 1 msで4秒間測定した.球の回転が観察できるように球の側面(レーザーが当たる箇所)を平らにカットした.

実験結果:二次元レーザー変位計によって得られた衝突前後の各時間における氷球のプロファイルを図2に示す.横軸がレーザー変位計からの距離,縦軸が測定範囲内の高さを表す.赤色が衝突前のプロファイル,青色が衝突後のプロファイルである.この結果から,ほぼ垂直に落下していた氷球は衝突後に水平方向への移動を伴いながら回転して,さらに落下している様子が観察できた.この結果から,これまで測定例のない二次元レーザー変位計を用いた球の時間変位の観察が可能であることが明らかになった.発表では得られた測定結果をもとに並進と回転の反発係数の解析方法及び結果について議論する.