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[PPS08-P11] 初期太陽系のCAI形成領域におけるAl-26の不均一分布の証拠

キーワード:CAI、コンドリュール、Al–Mg系、二次イオン質量分析法
CAIやコンドリュールなどの初期太陽系物質には,半減期70.5万年の短寿命放射性核種26Alの痕跡がみられ,Al–Mg系を用いた初期太陽系物質の高時間分解能の相対年代測定が行われてきた(e.g., Kita and Ushikubo, 2012; Kita et al., 2013) 。CVコンドライト中のCAIおよびAOAの全岩アイソクロンデータ(Jacobsen et al., 2008; Larsen et al., 2011)は,少なくともcanonical CAI形成領域においては一度26Alが均一化されていたことを示す。一方で,極端に26Alに乏しいCAIの存在(e.g., Krot et al., 2012)や,アングライト(Schiller et al., 2015)とコンドリュール(Bollard et al., 2019)におけるPb–Pb絶対年代とAl–Mg相対年代の不一致,あるいはコンドライト隕石の全岩Mg同位体組成(Larsen et al., 2011)から,初期太陽系において26Alの時間的または空間的な不均一があったことが示唆されてきた。本研究では,CRコンドライト隕石NWA 801中のCAI-コンドリュール複合物のAl–Mg同位体分布から,初期太陽系のCAI形成領域における26Alの不均一分布の直接証拠を示す。
CAI-コンドリュール複合物の岩石鉱物学的観察にはFE-SEM-EDS(JEOL JSM-7000F, Oxford X-Max 150, Oxford HKL)を用い,Al–Mg同位体分析にはSIMS(Cameca ims-1280HR)を用いた。
本複合物は研磨試料上で約1.2 mm×1.0 mmの丸い形状を持ち,CAI様の組織を持つ領域(CAI領域)とコンドリュール様の組織を持つ領域(コンドリュール領域)とに分けられる。コンドリュール領域は,CAI領域を取り囲むように存在している。CAI領域とコンドリュール領域の構成鉱物種やその晶出順序はそれぞれ異なっている。CAI領域は,主に,スピネル,斜長石,かんらん石,Alを含む低Ca輝石からなり,少量のヒボナイトやペロブスカイト,Siに富むメソスタシスも存在する。コンドリュール領域は,主にかんらん石,低Ca輝石,斜長石からなる。斜長石や低Ca輝石,かんらん石の化学組成は,両領域で系統的に異なる。斜長石は,CAI領域では相対的にCaに富みNaに乏しく(An#: > 98,Na2O: < ~0.4 wt%),コンドリュール領域ではCaに乏しくNaに富む(An#: ~92–99,Na2O: ~0.3–1.6 wt%)。低Ca輝石は,CAI領域では相対的にAlとTiに富みCaに乏しく(Al2O3: ~10–14 wt%),コンドリュール領域ではAlとTiに乏しくCaに富む(Al2O3: ~2–9 wt%)。かんらん石のMg#は,CAI領域で ~98.8–99.1,コンドリュール領域で ~97.4–98.7である。CAI領域とコンドリュール領域の間は連続的で,組織的に明確な境界は見られない。CAI領域とコンドリュール領域のそれぞれの前駆物質が互いに付着した後,部分溶融し,メルトが化学的に均一化される前に結晶化したと考えられる。
CAI領域のヒボナイト,スピネル,斜長石とコンドリュール領域のかんらん石,斜長石のAl–Mg同位体組成を測定した。CAI領域のヒボナイト,スピネルと大部分の斜長石は有意な放射壊変起源の26Mgの過剰を示さなかった。一方で,コンドリュール領域の斜長石と,CAI領域の一部の斜長石は,有意な放射壊変起源の26Mgの過剰を示した。CAI領域とコンドリュール領域それぞれについて鉱物アイソクロンを定義すると,それらの初生26Al/27Al比は,CAI領域が(–0.4 ± 0.5) × 10–6,コンドリュール領域が(3.3 ± 0.9) × 10–6であった。ここで,CAI領域の鉱物アイソクロンには,斜長石の一部に見られた有意な放射壊変起源の26Mgの過剰を示すデータは採用していない。そのような斜長石が示す26Mgの過剰量は,コンドリュール領域の鉱物アイソクロンから想定される量よりも小さい。そのため,部分溶融時にコンドリュール領域のメルトと一部混合したことにより,CAI領域の斜長石の一部に有意な放射壊変起源の26Mgの過剰が生じたと考えられる。
両領域は同時に部分溶融したものであるため,CAI領域が示す,コンドリュール領域よりも有意に低い初生26Al/27Al比は,CAI領域の前駆物質の形成領域が26Alに欠乏した環境であったことを示す。つまりCAI領域の前駆物質は,初期太陽系円盤に26Alが注入される前に形成したものである。本研究データは,初期太陽系のCAI形成領域における26Alの不均一分布の直接証拠である。
CAI-コンドリュール複合物の岩石鉱物学的観察にはFE-SEM-EDS(JEOL JSM-7000F, Oxford X-Max 150, Oxford HKL)を用い,Al–Mg同位体分析にはSIMS(Cameca ims-1280HR)を用いた。
本複合物は研磨試料上で約1.2 mm×1.0 mmの丸い形状を持ち,CAI様の組織を持つ領域(CAI領域)とコンドリュール様の組織を持つ領域(コンドリュール領域)とに分けられる。コンドリュール領域は,CAI領域を取り囲むように存在している。CAI領域とコンドリュール領域の構成鉱物種やその晶出順序はそれぞれ異なっている。CAI領域は,主に,スピネル,斜長石,かんらん石,Alを含む低Ca輝石からなり,少量のヒボナイトやペロブスカイト,Siに富むメソスタシスも存在する。コンドリュール領域は,主にかんらん石,低Ca輝石,斜長石からなる。斜長石や低Ca輝石,かんらん石の化学組成は,両領域で系統的に異なる。斜長石は,CAI領域では相対的にCaに富みNaに乏しく(An#: > 98,Na2O: < ~0.4 wt%),コンドリュール領域ではCaに乏しくNaに富む(An#: ~92–99,Na2O: ~0.3–1.6 wt%)。低Ca輝石は,CAI領域では相対的にAlとTiに富みCaに乏しく(Al2O3: ~10–14 wt%),コンドリュール領域ではAlとTiに乏しくCaに富む(Al2O3: ~2–9 wt%)。かんらん石のMg#は,CAI領域で ~98.8–99.1,コンドリュール領域で ~97.4–98.7である。CAI領域とコンドリュール領域の間は連続的で,組織的に明確な境界は見られない。CAI領域とコンドリュール領域のそれぞれの前駆物質が互いに付着した後,部分溶融し,メルトが化学的に均一化される前に結晶化したと考えられる。
CAI領域のヒボナイト,スピネル,斜長石とコンドリュール領域のかんらん石,斜長石のAl–Mg同位体組成を測定した。CAI領域のヒボナイト,スピネルと大部分の斜長石は有意な放射壊変起源の26Mgの過剰を示さなかった。一方で,コンドリュール領域の斜長石と,CAI領域の一部の斜長石は,有意な放射壊変起源の26Mgの過剰を示した。CAI領域とコンドリュール領域それぞれについて鉱物アイソクロンを定義すると,それらの初生26Al/27Al比は,CAI領域が(–0.4 ± 0.5) × 10–6,コンドリュール領域が(3.3 ± 0.9) × 10–6であった。ここで,CAI領域の鉱物アイソクロンには,斜長石の一部に見られた有意な放射壊変起源の26Mgの過剰を示すデータは採用していない。そのような斜長石が示す26Mgの過剰量は,コンドリュール領域の鉱物アイソクロンから想定される量よりも小さい。そのため,部分溶融時にコンドリュール領域のメルトと一部混合したことにより,CAI領域の斜長石の一部に有意な放射壊変起源の26Mgの過剰が生じたと考えられる。
両領域は同時に部分溶融したものであるため,CAI領域が示す,コンドリュール領域よりも有意に低い初生26Al/27Al比は,CAI領域の前駆物質の形成領域が26Alに欠乏した環境であったことを示す。つまりCAI領域の前駆物質は,初期太陽系円盤に26Alが注入される前に形成したものである。本研究データは,初期太陽系のCAI形成領域における26Alの不均一分布の直接証拠である。
