日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 P (宇宙惑星科学) » P-PS 惑星科学

[P-PS09] 月の科学と探査

2024年5月27日(月) 09:00 〜 10:30 101 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)、鹿山 雅裕(東京大学大学院総合文化研究科広域科学専攻広域システム科学系)、仲内 悠祐(立命館大学)、小野寺 圭祐(東京大学地震研究所)、座長:大竹 真紀子(会津大学)、西野 真木(宇宙航空研究開発機構宇宙科学研究所)


09:20 〜 09:40

[PPS09-02] 日本最初の月着陸機SLIMの着陸後のマルチバンド分光カメラ(MBC)観測

★招待講演

*佐伯 和人1大竹 真紀子2仲内 悠祐1西野 真木3長岡 央1石原 吉明3、佐藤 広幸3本田 親寿2、酒井 理沙3梶谷 伊織3横田 康弘3西谷 隆介3、三河内 岳5荒木 亮太郎4、坂井 真一郎3、澤井 秀次郎3、福田 盛介3、櫛木 賢一3 (1.立命館大学、2.会津大学、3.宇宙航空研究開発機構、4.大阪大学、5.東京大学)

キーワード:月探査、月着陸、近赤外線分光、マントル

小型月着陸実証機SLIMは2023年9月7日に打ち上げられ、2024年1月20日に月に着陸した。この着陸で日本は世界で5番目の月着陸成功国となった。また、誤差100m以内のピンポイント着陸にも世界で初めて成功した。着陸地点はSLIMに搭載されたマルチバンド分光カメラの目的を達成するために適切と思われる場所として、テオフィルスクレータのリムの南西の外側にあるSHIOLIクレータの近傍(13.3⁰S, 25.2⁰E)が選ばれた。
マルチバンド分光カメラの観測目的は、マントル物質が地上に露出していると思われる場所に着陸し、現地に点在する未知の岩相を同定し、マントル起源物質であれば含まれるカンラン石のMg#(=Mg/(Mg+Fe)原子比)を導き出して地球のマントル組成と比較することである。MBC は、岩石種を同定するために高い空間解像度(10 m で 1.3 mm/ピクセル)を持ち、鉱物種を同定したり、カンラン石のMg/Fe比を推定したりするための10バンドのバンドパスフィルター(750、920、950、970、1000、1050、1100、1250、1550、1650 (nm)) を備えている。また、鏡を動かすことで視野の方位角と仰角を変更することが可能である。
着陸姿勢が想定よりも約90度傾きかつ、太陽電池パネルが西を向いて着陸後の発電ができなかったため、着陸直後にはバッテリで運用できる範囲で、ロンチロックをはずす前の単バンドテストを1枚撮像し、ロンチロックを解除し、岩石の位置を特定するための低解像度スキャン画像を333枚中257枚撮影してモザイク画像をつくることができた。その後、月の夕方に太陽電池パネルの電力が回復し、月の夜が訪れるまでに、観測波長を変えてのスキャン画像撮影2セットや、10個の岩石や遠くのレゴリスなどの10バンドデータを取得することができた。学会では着陸後の運用の詳細と観測結果について報告する。