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[SCG40-P06] 畳み込みニューラルネットワークを用いた深部テクトニック微動波形の抽出と解析:南海沈み込み帯Hi-net観測点への応用
キーワード:テクトニック微動、畳み込みニューラルネットワーク
テクトニック微動(以下,微動)は,卓越周波数が1 ‐ 10 Hz、継続時間が数分~数時間の微弱な振動現象であり,位相の検出が難しいという特徴がある.そのため,通常の地震検出法を微動に適用することは難しく,多観測点によるエンベロープ波形の相関処理から微動震源を推定する場合が多い(エンベロープ相関法;Obara, 2002).しかし,この手法では通常の地震やノイズも微動として検知してしまう場合があり,目視検査や他のプロセスによってこれらを除去する必要があった.この問題点を解決するため,先行研究では,深層学習の一種である畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた地震波形の識別が行われており,CNNを用いることで高い精度でノイズ・微動・地震波形の識別が可能であることが報告されている(Nakano et al., 2019;Takahashi et al., 2021).しかし,CNNを用いた長期間にわたる系統的な微動波形の抽出や,抽出された微動を用いた解析はまだ行われていない.そこで,本研究ではCNNベースの微動解析手法の確立を目指し,CNNを用いた微動の抽出と,抽出された微動を用いた微動活動の解析を行う.
本研究ではHi-netで記録された3成分速度波形から作成したスペクトログラムを入力データとして使用した.CNNモデルは2層の畳み込み層,プーリング層と,3層の全結合層からなり,出力層ではノイズ・微動・地震の確率値をそれぞれ出力する.ノイズ,微動,地震の各イベント4,600枚,合計13,800枚からなるテストデータによる性能評価では,モデルは正解率98.0 %を記録した.Hi-net観測点71点を使用し,2016年から2017年の2年間を対象とした連続データからの微動の抽出では,東海では12,681個,紀伊北部では6,878個,中部では4,866個,南部では2,045個,四国東部では5,859個,中部では6,776個,西部では16,064個のイベントが得られ,ハイブリッドカタログに記載されたイベントの約47%が本研究の手法でも微動として抽出された.また,本手法ではハイブリッドカタログに記載されていないが,微動と思われるイベントを数多く抽出し,対象期間において,ハイブリッドカタログの約3.8倍の微動を抽出した.これは,本手法が従来の手法では震源決定精度が低くなり,検出が困難であった活発な微動活動を抽出可能であることを示唆する結果である.本発表では,観測点ごとのイベント識別精度の詳細な調査や,継続期間に加え振幅情報も加味した微動の解析結果についても報告する.
本研究ではHi-netで記録された3成分速度波形から作成したスペクトログラムを入力データとして使用した.CNNモデルは2層の畳み込み層,プーリング層と,3層の全結合層からなり,出力層ではノイズ・微動・地震の確率値をそれぞれ出力する.ノイズ,微動,地震の各イベント4,600枚,合計13,800枚からなるテストデータによる性能評価では,モデルは正解率98.0 %を記録した.Hi-net観測点71点を使用し,2016年から2017年の2年間を対象とした連続データからの微動の抽出では,東海では12,681個,紀伊北部では6,878個,中部では4,866個,南部では2,045個,四国東部では5,859個,中部では6,776個,西部では16,064個のイベントが得られ,ハイブリッドカタログに記載されたイベントの約47%が本研究の手法でも微動として抽出された.また,本手法ではハイブリッドカタログに記載されていないが,微動と思われるイベントを数多く抽出し,対象期間において,ハイブリッドカタログの約3.8倍の微動を抽出した.これは,本手法が従来の手法では震源決定精度が低くなり,検出が困難であった活発な微動活動を抽出可能であることを示唆する結果である.本発表では,観測点ごとのイベント識別精度の詳細な調査や,継続期間に加え振幅情報も加味した微動の解析結果についても報告する.