14:30 〜 14:45
[SCG45-04] SEM-EDSによる輝沸石の化学定量分析-電子線ダメージに弱い沸石の局所化学組成をどう測定するか?
キーワード:沸石、HEU型ゼオライト、SEM-EDS、ラスタースキャン
走査型電子顕微鏡下におけるエネルギー分散型X線分光分析(SEM-EDS)は非破壊で行なえる最も簡便な局所定量分析として、多くの物質の化学組成を調べるために利用されている。しかし、集束させた電子線ビームを微小領域に照射し続けるため、予期しない試料ダメージの可能性を孕んでいる。特に沸石は電子ビームによる表面ダメージが大きい材料の一つであり、正しい化学定量値を得るためには試料ダメージを抑える必要がある。そこで、本研究では天然輝沸石試料を用い、SEM-EDS分析時の電子ビーム照射モード(点分析、面分析)や照射電流値、照射時間を変化させ、試料表面のダメージと定量値の評価を行った。
点分析で測定を行うと、ビーム照射位置ではチャージアップが生じ、測定点の周囲には輝沸石の(010)に平行に細長く伸びたダメージ痕が観察された。これは電子プローブ直下において試料が急激に加熱され、試料表面において脱水が起こったことを示している。この際、輝沸石の結晶構造も局所的に破壊され構成元素の一部が高真空の試料室中へ蒸発するため、定量値は大きく影響を受け分析精度の低下が認められた。試料表面のダメージは、電子ビームの照射時間に比例して大きくなるが、照射時間を短くするほど今度は特性X線のカウントが少なくなるため、S/N比(シグナル/ノイズ比)が低下し、定量精度(再現性)は悪くなる。そのため、試料表面へのダメージを抑えながら定量分析に十分なX線カウントを得ることが必要となる。
そこで試料表面で電子線を走査しながら測定を行う面分析モードによる分析を試みた。面分析(ラスタースキャン)では各点当たりの照射時間は各段に短くなるため、ダメージを軽減することができる(吉原, 2000; Ohfuji and Yamamoto, 2015)。面分析では観察倍率5,000倍(16 μm×24 μm)以下の低倍率では試料表面のダメージは現れなかったが、より高倍では点分析と同様のダメージ痕が観察面の周囲にできた。しかし、観察倍率3,000~40,000倍において、沸石の定量精度を評価する指標であるE *は±10%の範囲内に収まっており、質量濃度のトータルも90%前後であり、輝沸石の理想化学組成と差のない精度の高い分析値が得られた。
点分析で測定を行うと、ビーム照射位置ではチャージアップが生じ、測定点の周囲には輝沸石の(010)に平行に細長く伸びたダメージ痕が観察された。これは電子プローブ直下において試料が急激に加熱され、試料表面において脱水が起こったことを示している。この際、輝沸石の結晶構造も局所的に破壊され構成元素の一部が高真空の試料室中へ蒸発するため、定量値は大きく影響を受け分析精度の低下が認められた。試料表面のダメージは、電子ビームの照射時間に比例して大きくなるが、照射時間を短くするほど今度は特性X線のカウントが少なくなるため、S/N比(シグナル/ノイズ比)が低下し、定量精度(再現性)は悪くなる。そのため、試料表面へのダメージを抑えながら定量分析に十分なX線カウントを得ることが必要となる。
そこで試料表面で電子線を走査しながら測定を行う面分析モードによる分析を試みた。面分析(ラスタースキャン)では各点当たりの照射時間は各段に短くなるため、ダメージを軽減することができる(吉原, 2000; Ohfuji and Yamamoto, 2015)。面分析では観察倍率5,000倍(16 μm×24 μm)以下の低倍率では試料表面のダメージは現れなかったが、より高倍では点分析と同様のダメージ痕が観察面の周囲にできた。しかし、観察倍率3,000~40,000倍において、沸石の定量精度を評価する指標であるE *は±10%の範囲内に収まっており、質量濃度のトータルも90%前後であり、輝沸石の理想化学組成と差のない精度の高い分析値が得られた。