日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG45] 岩石・鉱物・資源

2024年5月30日(木) 15:30 〜 16:45 302 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、野崎 達生(国立研究開発法人 海洋研究開発機構 海洋機能利用部門 海底資源センター)、纐纈 佑衣(名古屋大学大学院 環境学研究科)、西原 遊(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、座長:福士 圭介(金沢大学環日本海域環境研究センター)、西原 遊(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、纐纈 佑衣(名古屋大学大学院 環境学研究科)

16:30 〜 16:45

[SCG45-10] 稲田花崗岩中の副成分鉱物の分布と微量元素分布のスケールごとの不均質性-地球ニュートリノによる地球深部観測に向けて-

*原口 悟1飯塚 毅2上木 賢太3竹内 希1田中 明子4渡辺 寛子5榎本 三四郎6 (1.東京大学地震研究所、2.東京大学、3.海洋研究開発機構、4.産業技術総合研究所、5.東北大学ニュートリノ科学研究センター、6.ワシントン大学)

キーワード:稲田花崗岩、副成分鉱物、放射性元素、不均質性

平成27〜31年度科学研究費補助金「核−マントルの相互作用と共進化」において、岐阜県飛騨市神岡に位置する反ニュートリノ検出装置「KamLAND」でのマントル中の放射性元素に由来するジオニュートリノの検出を目的として、マントルよりはるかに放射性元素濃度が高い地殻に由来するジオニュートリノを正確に区分するため、地殻中の放射性元素分布の正確なモデリングに取り組んできた。同プロジェクトに引き続き、令和5〜7年度科学研究費補助金(基盤研究(B))「全地球化学組成の検証のための日本列島地殻地球ニュートリノモデリングの高度化」で地殻、岩石中の放射性元素の「スケール毎の」均質性、不均質性を検討している。
放射性元素のホスト相として、肉眼〜ルーペスケール(cm~1/10mm程度)では、微量元素を含有する副成分鉱物が有力視される。そこで、稲田花崗岩(茨城県笠間市)の薄片を、電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて、副成分鉱物を中心として定量および定性分析を行なった。EPMAを用いた微量元素分析は、坂野(2023)で微量元素の標準試料を用いた手法が公表されているが、本報告では、EPMA分析では標準的な、主要元素の定量を行なった。微量元素に富む鉱物は、主要元素分析では、主要元素合計が100%よりも大幅に低下し、欠損部を微量元素が占めることが示唆される。その結果、ジルコン、アパタイト等放射性元素含有鉱物として著名な鉱物のほか、褐簾石(allanite)が有力な放射性元素ホスト相として確認された。ジルコン、アパタイト等と異なって、褐簾石は有色鉱物であること、黒雲母に伴う時、放射性元素に由来するハロが形成されるため、薄片観察では開放ニコルで容易に区別できること、また、稲田花崗岩中の緑簾石はmmオーダーのスケールを有するため、低倍率の顕微鏡で観察できることから、分布の観察が容易な鉱物である。また、褐簾石は主要元素合計が60~70%で、残りは主にLREEが%のオーダーで入るが、Thも酸化物で数%程度入り、定性分析での確認が可能である。褐簾石はこのような特徴を有するため、石原・村上(2006)等で指摘される、「レアアース資源としての花崗岩」のレアアース元素のホスト相として注目されると共に、放射性元素のホスト相としても、鉱物量および元素存在量の見積りが容易なことが注目される。本報告では、褐簾石を主とした副成分鉱物の定量結果を基として、副成分鉱物の放射性元素のホスト相としての寄与の割合、岩石中の分布等を考察したい。