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[SCG45-P12] X線回折分析によるスメクタイトの簡易的な定量分析とホルダーの改良による配向性の低減
キーワード:X線回折分析、スメクタイト、定量分析、配向性
1. はじめに
スメクタイトは代表的な膨潤性粘土鉱物として知られており,その高い膨潤性が土木工事の際に崩壊などを誘発する原因となるため,その含有量が議論の対象になることが多い。地盤の膨圧が発生する可能性が高くなる目安としてCEC試験や浸水崩壊度試験などで基準が設定されており,X線回折分析(以下XRD)に関しては概ねスメクタイトの含有量が20%~30%以上とされている(ex. 吉川ほか,1988)。現在,スメクタイトの定量的評価に関してはXRDによる内部標準法やメチレンブルーなどが用いられているが,XRDによる定量はその結晶度の低さや配向性の高さから精度の高い評価が難しいとされている。
2. 目的
今回は配向性の高さおよび質量吸収係数に注目する。配向性の高さはランダムな場合と比較して特定の回折線が強く出るという問題を引き起こすため,その影響の低減は重要な課題である。
一方,質量吸収係数は被検成分の濃度と回折強度との関係に影響し,被検成分とマトリックスの質量吸収係数が等しい場合以外では非線形となる(Alexander and Klug, 1948)。内部標準法は質量吸収係数の影響を受けないが,検量線の作成や被検試料への内部標準物質の混合など分析の手順が煩雑である。
今回,配向の影響の低減に関しては独自に試料ホルダーを改良し,既存のホルダーと比較してその効果を検討した。また,質量吸収係数に関しては,ある程度の誤差を含むことを前提とてスメクタイトの含有量と回折強度の関係を線形で近似した簡易的な定量法を考案し,この近似による誤差を実験的に検証した。
3. 分析手法
3.1. 改良ホルダーの製作
リガク純正0.5 mmガラスホルダーの底部にエポキシ系樹脂で凹凸をつけ,結晶方位を強制的に変化させることで底面反射が強調されないよう工夫した。配向の影響の低減については,同一試料をリガク純正アルミホルダーで測定・比較することで評価した。
3.2. 簡易定量法
今回はスメクタイト含有量30wt%までを対象とし,流紋岩,玄武岩,はんれい岩の標準試料を用いてそれぞれスメクタイトが5wt%,10wt%,15wt%,20wt%,30wt%程度となるよう電子天秤で秤量し,メノウ乳鉢で20分混合して分析試料とした。標準試料として,スメクタイトは日本粘土学会参考試料JCSS-3101,流紋岩,玄武岩,はんれい岩は産総研地球化学標準物質のJR-1,JB-3,JGb-1を使用した。各試料を3回ずつ測定し,得られたスメクタイトの001回折線の積分強度を同条件で測定した標準石英の最強線の積分強度で規格化し,スメクタイト含有量との関係を線形近似してその近似直線の傾きから簡易定量係数を得た。
3.3. 測定条件
測定は半導体検出器D/teX Ultraを装着したリガク社製MiniFlex600を用い,以下の条件で測定した。
電圧:40kV,電流:15mA,発散スリット:1.25°,走査速度:2°/分,走査範囲(2θ):標準石英26.0°~27.0°,スメクタイト3.5°~10.0°,蛍石46.0°~48.0°
4. 結果
4.1. ホルダーの改良による配向の影響の低減効果の評価
スメクタイトを混合した流紋岩(JR-1)および内部標準法検量線作成用試料をそれぞれ改良型ガラスホルダーおよび純正アルミホルダーで測定した結果,いずれにおいてもアルミホルダーではスメクタイトの含有量の増加につれて線形から外れ上昇し二次関数に近い形状になったが,改良型ホルダーでは同様の傾向が僅かに見られるもののほぼ線形となり,配向の影響が大きく低減されたことが明らかとなった(Fig.1)。
4.2. 簡易定量係数の算出と定量値の評価
スメクタイトを混合した3種の標準試料の秤量値と標準石英の最強線強度で規格化したピーク強度を比較した結果,流紋岩からはんれい岩へ質量吸収係数が大きくなるほどスメクタイトのピーク強度が弱くなった。質量吸収係数のより広い範囲を網羅するため流紋岩とはんれい岩のデータを用いて近似直線を作成し,その傾き6.57×10-3を簡易定量係数とした(Fig.2)。得られた係数を用いて測定した試料のスメクタイト含有量を再計算したところ,ほとんどの試料で秤量値に対し±3wt%以内の定量値が得られた。
また,定量値の妥当性を検証するため,天然のスメクタイト含有量未知の3試料およびガラス粉末にスメクタイトを10wt%と30wt%になるよう調合した試料を簡易定量法で定量した。天然の3試料に関しては内部標準法を実施し,その値と比較した。いずれの試料においても簡易定量法による定量値と秤量値および内部標準法による定量値との差は±3wt%程度以内となっており,よく対応している。但し,この簡易定量係数は装置ごとに測定が必要であり,同一の装置であっても定期的に簡易定量係数を確認する必要がある。
スメクタイトは代表的な膨潤性粘土鉱物として知られており,その高い膨潤性が土木工事の際に崩壊などを誘発する原因となるため,その含有量が議論の対象になることが多い。地盤の膨圧が発生する可能性が高くなる目安としてCEC試験や浸水崩壊度試験などで基準が設定されており,X線回折分析(以下XRD)に関しては概ねスメクタイトの含有量が20%~30%以上とされている(ex. 吉川ほか,1988)。現在,スメクタイトの定量的評価に関してはXRDによる内部標準法やメチレンブルーなどが用いられているが,XRDによる定量はその結晶度の低さや配向性の高さから精度の高い評価が難しいとされている。
2. 目的
今回は配向性の高さおよび質量吸収係数に注目する。配向性の高さはランダムな場合と比較して特定の回折線が強く出るという問題を引き起こすため,その影響の低減は重要な課題である。
一方,質量吸収係数は被検成分の濃度と回折強度との関係に影響し,被検成分とマトリックスの質量吸収係数が等しい場合以外では非線形となる(Alexander and Klug, 1948)。内部標準法は質量吸収係数の影響を受けないが,検量線の作成や被検試料への内部標準物質の混合など分析の手順が煩雑である。
今回,配向の影響の低減に関しては独自に試料ホルダーを改良し,既存のホルダーと比較してその効果を検討した。また,質量吸収係数に関しては,ある程度の誤差を含むことを前提とてスメクタイトの含有量と回折強度の関係を線形で近似した簡易的な定量法を考案し,この近似による誤差を実験的に検証した。
3. 分析手法
3.1. 改良ホルダーの製作
リガク純正0.5 mmガラスホルダーの底部にエポキシ系樹脂で凹凸をつけ,結晶方位を強制的に変化させることで底面反射が強調されないよう工夫した。配向の影響の低減については,同一試料をリガク純正アルミホルダーで測定・比較することで評価した。
3.2. 簡易定量法
今回はスメクタイト含有量30wt%までを対象とし,流紋岩,玄武岩,はんれい岩の標準試料を用いてそれぞれスメクタイトが5wt%,10wt%,15wt%,20wt%,30wt%程度となるよう電子天秤で秤量し,メノウ乳鉢で20分混合して分析試料とした。標準試料として,スメクタイトは日本粘土学会参考試料JCSS-3101,流紋岩,玄武岩,はんれい岩は産総研地球化学標準物質のJR-1,JB-3,JGb-1を使用した。各試料を3回ずつ測定し,得られたスメクタイトの001回折線の積分強度を同条件で測定した標準石英の最強線の積分強度で規格化し,スメクタイト含有量との関係を線形近似してその近似直線の傾きから簡易定量係数を得た。
3.3. 測定条件
測定は半導体検出器D/teX Ultraを装着したリガク社製MiniFlex600を用い,以下の条件で測定した。
電圧:40kV,電流:15mA,発散スリット:1.25°,走査速度:2°/分,走査範囲(2θ):標準石英26.0°~27.0°,スメクタイト3.5°~10.0°,蛍石46.0°~48.0°
4. 結果
4.1. ホルダーの改良による配向の影響の低減効果の評価
スメクタイトを混合した流紋岩(JR-1)および内部標準法検量線作成用試料をそれぞれ改良型ガラスホルダーおよび純正アルミホルダーで測定した結果,いずれにおいてもアルミホルダーではスメクタイトの含有量の増加につれて線形から外れ上昇し二次関数に近い形状になったが,改良型ホルダーでは同様の傾向が僅かに見られるもののほぼ線形となり,配向の影響が大きく低減されたことが明らかとなった(Fig.1)。
4.2. 簡易定量係数の算出と定量値の評価
スメクタイトを混合した3種の標準試料の秤量値と標準石英の最強線強度で規格化したピーク強度を比較した結果,流紋岩からはんれい岩へ質量吸収係数が大きくなるほどスメクタイトのピーク強度が弱くなった。質量吸収係数のより広い範囲を網羅するため流紋岩とはんれい岩のデータを用いて近似直線を作成し,その傾き6.57×10-3を簡易定量係数とした(Fig.2)。得られた係数を用いて測定した試料のスメクタイト含有量を再計算したところ,ほとんどの試料で秤量値に対し±3wt%以内の定量値が得られた。
また,定量値の妥当性を検証するため,天然のスメクタイト含有量未知の3試料およびガラス粉末にスメクタイトを10wt%と30wt%になるよう調合した試料を簡易定量法で定量した。天然の3試料に関しては内部標準法を実施し,その値と比較した。いずれの試料においても簡易定量法による定量値と秤量値および内部標準法による定量値との差は±3wt%程度以内となっており,よく対応している。但し,この簡易定量係数は装置ごとに測定が必要であり,同一の装置であっても定期的に簡易定量係数を確認する必要がある。