日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG48] 海洋底地球科学

2024年5月29日(水) 13:45 〜 15:00 302 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:沖野 郷子(東京大学大気海洋研究所)、田所 敬一(名古屋大学地震火山研究センター)、座長:大塚 宏徳(神戸大学海洋底探査センター)、浜橋 真理(山口大学 国際総合科学部)

13:45 〜 14:00

[SCG48-11] 北海道沖で起こった17世紀型巨大地震の海底堆積物の記録:千島海溝沿いの海底古地震記録

*金松 敏也1熊 衎昕1中西 諒2窪田 薫1池原 研3Chang Yu-Chun1富士原 敏也1 (1.海洋研究開発機構、2.京都大学、3.産業技術総合研究所)

キーワード:千島海溝、巨大地震、17世紀、古地震学

千島海溝沿いでは津波堆積物の記録から数百年ごとに巨大地震が発生してきた事が知られており、最も最近では17世紀に起こっている。17世紀の津波堆積物の分布を説明するためには、東北地方太平洋沖地震のような巨大な地震が発生し、複数のセグメントで起こった破壊が海溝付近まで伝播し津波を増幅させたと考えられている。一方、17世紀の北海道沖の巨大地震により広範囲で津波が発生したにもかかわらず、東北沖の海岸では、この津波に対応する記録がない。この矛盾は北海道沖の17世紀の大地震と1611年の慶長三陸地震の混乱に起因する可能性が指摘されている。このように17世紀の北海道巨大地震の実態を理解するには情報が十分でない。一方、これまで17世紀の北海道沖の巨大地震の海底記録からの検証がは進んでこなかった。海底古地震学的情報を得るために2022年3月と6月に、日高沖、十勝沖、根室沖で調査航海を行った。得られた堆積物コアの記載、X線CTイメージ、磁気ファブリックなどからイベント層が認識でき、これには厚いスランプ層も含まれる。コアに含まれる挟在する火山灰の同定により、これらのイベント層のいずれかは17世紀の陸の津波堆積物に対応すると考えられる。コアサンプルの連続的な深度年代情報を得るためバルク有機物を用いた14C年代測定を行った。スランプ層はその上下の半遠洋性堆積物よりも約1,000~2,000年程度古い14C年代を示した。これは、より深度が大きな堆積物の再移動が地震中に発生したことを示唆している。一方、他の層準の地震に起因するであろうタービダイト層は、その上下の半遠洋性堆積物とほぼ同様の14C年代を示し、ごく表面の堆積物が再移動して形成されたと理解できる。スランプ層は日高沖から釧路海底峡谷の西側まで広範囲に及んで分布し、大地震によって起った地盤運動を理解する上で重要な情報である。