[S-CG48] 海洋底地球科学

[SCG48-15] 東シナ海陸棚斜面域におけるAUV等を用いた海底地形及び地質学的観測:沖男女海陵群周辺の波状ベッドフォーム及びチャネル様構造

*堀之内 龍一¹、齋藤 京太¹、長澤 亮佑¹、牛島 学¹、衛藤 哲大¹、友久 武司¹、川上 友希¹、青木 智¹、田寺 優香¹ (1.海上保安庁)

キーワード：ベッドフォーム、チャネル、AUV、マルチビーム音響測深機、反射法地震探査

東シナ海陸棚斜面域沖男女海陵群周辺では、青木ほか（2023、JpGU）で報告のとおり、断層やリニアメント等の特徴的な地形及び地質構造が見受けられるものの、詳細な観測の報告例は少ない。したがって本報告では、沖男女海陵群周辺に分布する波状ベッドフォーム及びチャネル様構造について、AUV等を用いた観測結果について紹介する。観測データは2014年に海上保安庁海洋情報部測量船「昭洋」、「拓洋」、「海洋」、「明洋」により取得された海底地形データ、2022年に測量船「昭洋」により取得されたサブボトムプロファイル及び反射法探査データ、2021年に測量船「昭洋」により採取された表層堆積物試料、2023年に測量船「平洋」搭載のAUV”ごんどう4”（IHI社製）により取得された海底地形データ、サイドスキャンモザイク、サブボトムプロファイルである。海底地形データ、サブボトムプロファイル、反射法探査データ、AUV調査データ（海底地形データ、サイドスキャンモザイク、サブボトムプロファイル）についてはそれぞれノイズ除去やゲイン調整等の標準的なデータ処理を施し、堆積物試料については地点毎に得られた表層堆積物コアに対して粒度分析を実施した。
　海底地形データから、波状ベッドフォームとチャネル様構造が沖男女海陵群付近に顕著に分布していることが確認された。波状ベッドフォームの平均的な波長は約200m、比高は約数m、分布水深はおおよそ220-300mの範囲であった。チャネル様構造の平均的な比高は約30m、分布水深はおおよそ160-220mの範囲で、チャネル様構造と波状ベッドフォームの間にはややマウンド様の地形構造が分布する傾向にあった。また、波状ベッドフォームについて、波群毎に波長及び比高を計上し、散布図としてプロットしたところ、海洋場の影響、とりわけ内部重力波により波状ベッドフォームが形成されたと述べる先行研究Ma et al.（2016）等と同様の傾向を示していた。サブボトムプロファイル及び反射法探査データからは、波状ベッドフォーム及びチャネル様構造の近傍に特異な地質学的構造は確認できず、これらの構造が断層や褶曲等に伴う塑弾性変形により形成されたものでは無いことが示唆された。表層堆積物試料を構成する粒子の粒径と堆積物採取地点から最も近傍に位置する波状ベッドフォームの波長及び比高をプロットしたところ、いずれの散布図においても、海底付近の流れにより形成されたベッドフォームのスケールを示す先行研究Flemming(2000)と整合的な分布となっていた。また、採泥器に取り付けているカメラで撮影された海底面の画像には海底地形データに確認できないほど微細な波状地形が分布していることが確認でき、海底表面は海洋場の影響を強く受けていることが示唆された。AUVによって取得した海底地形データ、サイドスキャンモザイク、サブボトムプロファイルには本船による海底地形データでは解像度が不足していた小規模な波状ベッドフォームも確認することができ、これらの小規模な構造はいくつかの波長が異なる波状構造を重ね合わせたような形態をしていることが確認できた。多様な地形・地質データを用いた上記の観測結果から、沖男女海陵群付近に顕著に観測された波状ベッドフォーム及びチャネル様構造は、海洋内部の流体運動が寄与して発達した可能性があると考えられる。