[S-CG48] 海洋底地球科学

[SCG48-P13] 反射法地震探査データを用いた室戸－足摺沖南海トラフ前弧海盆の活構造

*照井 孝之介^1,2、芦 寿一郎^1,2 (1.東京大学 大学院新領域創成科学研究科自然環境学専攻地球海洋環境学分野、2.大気海洋研究所海洋底地球科学部門)

キーワード：南海トラフ、横ずれ断層、サブボトムプロファイラ、マルチチャンネル反射法地震探査、リニアメント

南海トラフではプレート境界型巨大地震が繰り返し発生し、沿岸域の地形に大きな影響を与えている。例えば室戸岬では 1946 年南海地震により 1.2 m 隆起しており、周期的な地震によって平均 2 mm/y で隆起していると見積もられた(吉川ほか, 1964, 地理評)。しかしその後の研究では、室戸岬の完新世における隆起においてプレート境界型地震による隆起の影響は小さく、1000～2000 年ごとに2～4 m の間欠的隆起が支配的であるとされる(前杢, 2001, 地学雑)。この間欠的隆起の原因はプレート境界面からの分岐断層(前杢, 2006, 地学雑)や室戸岬周辺の南北走向・西傾斜の断層による非対称褶曲(Matsu'ura, 2015, Geomorphology)が考えられている。海域の大構造については、室戸岬から外縁隆起帯へ続く逆L字型隆起がプレートの斜め沈み込みによって形成されたとしており（粟田・杉山，1989, 地震)、地形と音波探査記録を元に海底活断層の分布が報告されている(岡村, 1990, 地質雑)。
本研究は、南海トラフの足摺岬から室戸岬の沖合を対象に、断層の高精度マッピングと、それらの活動の評価を目的とした。海底の浅部構造を探査するサブボトムプロファイラ(以下 SBP)、マルチチャンネル反射法地震探査(MCS)、海底地形の3種のデータを用いた。SBP 記録は、KH-15-2 航海と KH-16-5 航海において曳航型無人探査機 NSS に SBP を搭載し取得したものである。MCS データは JAMSTEC から提供を受けた。海底地形データは GEBCO 2023 を使用した。
海底地形には連続性の良い明瞭なリニアメントが 2 本認められる。リニアメント L1は、室戸岬南方の隆起帯である土佐バエから南西方向に約 50 km伸び、リニアメント沿いには周囲より約 20 m 高い凸部と約 50 m 低い凹部が点在する。リニアメント L2は、足摺岬沖から土佐バエ南方に向かって北へ大きく湾入し、東方へ潮岬沖まで約 300 km連続する。リニアメント沿いには周囲より約 20 m 高い凸部と最大で約 800 m低い凹部が点在する。このほか、L1 と L2 と間に 10 m 以下の連続した窪みが 2 列認められ、L1、L2 と合わせて雁行状配列をなしている。
MCS 記録では足摺沖の L2 と交差する区間においてネガティブフラワー構造が発達する。SBP 記録では土佐バエ南方のL2 付近の表層で南側に傾斜する堆積層が認められる。また、その南側では北側に傾斜する堆積層が発達し、いずれも深度が大きくなるにつれて傾斜が大きくなる特徴から繰り返し変動を示す。リニアメント L1 と L2 とも連続性が良く周辺に凸部と凹部が発達し、一部にフラワー構造が認められる。変位のセンスを示す明瞭な構造は現在のところ得られていないが、横ずれ変位を伴う断層であることが推定される。また、SBP 記録では表層の若い堆積層にいたる繰り返し変動が認められることから活断層と解釈でき、室戸岬周辺の地形発達にこれらの構造が大きな影響を与えたことが推定される。