17:15 〜 18:45
[SCG48-P21] 南海トラフプレート境界断層周辺に発達する充填鉱物の分布解明:掘削コア試料のX線CTデータからのアプローチ
キーワード:X線CT、重晶石、南海トラフ、IODP、ODP、方解石
地殻内の変質帯は,周囲と比べて強度,密度,浸透率などの物性が異なることから,変動に影響を与えることが考えられる.南海トラフでは,International Ocean Discovery Program(IODP)において掘削された高知県室戸沖の南海付加体先端部に当たるC0023サイトから,海底下775–1121 mにて熱水性の充填鉱物が報告されている(Tsang et al., 2020).このような充填鉱物帯も海洋地殻の強度構造と関係すると思われるが,その分布に関する研究例はない.そこで本研究では四国および紀伊半島沖の南海トラフを対象として,複数回の国際海洋科学掘削において採取されたコア試料を使用して,充填鉱物の分布を調べた.また,南海トラフ沿いの高知県足摺沖,和歌山県熊野沖のコア試料と比較も行った.
研究対象は,室戸沖のIODPのC0023サイト,Ocean Drilling Program(ODP)の1173,1174,808サイトの4サイトのコア試料とした.これらのうち,1173サイトは南海トラフの海側に位置し,その他のサイトは南海付加体の先端部に位置する.これらのサイトでは,基盤である玄武岩の上に中期中新世以降の半遠洋性堆積物および海溝充填堆積物が重なり,これらは岩相に基づいて下位から,下部四国海盆相,上部四国海盆相,海溝充填相に分けられる(例えば,Moore et al., 2001).
手法は,まずX線コンピュータートモグラフィー(XCT)データを用いて,室戸沖海底下にて充填鉱物帯の空間分布を調べた.そして,充填鉱物の種類を同定するため,X線回析(XRD)を用いての鉱物同定や走査型電子顕微鏡(SEM)による目視観察,エネルギー分散型X線分析装置(EDS)や蛍光X線分析(XRF)で元素分析を行った.
例として,1173サイトの結果を以下に示す.このサイトで作成したXCTデータを用いた深度ごとの平均CT値は,深部に向かって約1100から1800まで徐々に上昇し,その中に2000から10000程度のスパイクが集中する区間が複数認められた. このスパイク集中は,海溝充填相から上部四国海盆相の上部まで,下部四国海盆相の最上部からデコルマン相当層準まで,および下部四国海盆相の下部の3区間で発達する.この3区間は,厚さ数cmほどの高い平均CT値の箇所が数mから数十mに1つの間隔で分布している.また,高CT値領域を構成する鉱物は,CT値が3000–4000前後のものがカルサイト(CaCO3),10000以上のものはバライト(BaSO4)とロードクロサイト(MnCO3)であることを明らかにした.以上のことから,変質帯と判断した.なお,バライト(BaSO4)とロードクロサイト(MnCO3)は,認定した変質帯のうち,下位2区間にのみ見られる.
同様の作業を他のサイトのコア試料についても行うことで,変質帯の空間分布を調べた.室戸沖の他の3サイトでは1173サイトと同層準に平均CT値の高いスパイクが集中することから,変質帯は室戸沖海低下の広域に広がっていると考えられる.熊野沖および足摺沖のサイトでは,室戸沖海底下に比べてカルサイト(CaCO3)は多く,バライト(BaSO4)やロードクロサイト(MnCO3)は少ないことがわかった.このことは,変質帯の分布がトラフと平行方向には変わることを示している.
研究対象は,室戸沖のIODPのC0023サイト,Ocean Drilling Program(ODP)の1173,1174,808サイトの4サイトのコア試料とした.これらのうち,1173サイトは南海トラフの海側に位置し,その他のサイトは南海付加体の先端部に位置する.これらのサイトでは,基盤である玄武岩の上に中期中新世以降の半遠洋性堆積物および海溝充填堆積物が重なり,これらは岩相に基づいて下位から,下部四国海盆相,上部四国海盆相,海溝充填相に分けられる(例えば,Moore et al., 2001).
手法は,まずX線コンピュータートモグラフィー(XCT)データを用いて,室戸沖海底下にて充填鉱物帯の空間分布を調べた.そして,充填鉱物の種類を同定するため,X線回析(XRD)を用いての鉱物同定や走査型電子顕微鏡(SEM)による目視観察,エネルギー分散型X線分析装置(EDS)や蛍光X線分析(XRF)で元素分析を行った.
例として,1173サイトの結果を以下に示す.このサイトで作成したXCTデータを用いた深度ごとの平均CT値は,深部に向かって約1100から1800まで徐々に上昇し,その中に2000から10000程度のスパイクが集中する区間が複数認められた. このスパイク集中は,海溝充填相から上部四国海盆相の上部まで,下部四国海盆相の最上部からデコルマン相当層準まで,および下部四国海盆相の下部の3区間で発達する.この3区間は,厚さ数cmほどの高い平均CT値の箇所が数mから数十mに1つの間隔で分布している.また,高CT値領域を構成する鉱物は,CT値が3000–4000前後のものがカルサイト(CaCO3),10000以上のものはバライト(BaSO4)とロードクロサイト(MnCO3)であることを明らかにした.以上のことから,変質帯と判断した.なお,バライト(BaSO4)とロードクロサイト(MnCO3)は,認定した変質帯のうち,下位2区間にのみ見られる.
同様の作業を他のサイトのコア試料についても行うことで,変質帯の空間分布を調べた.室戸沖の他の3サイトでは1173サイトと同層準に平均CT値の高いスパイクが集中することから,変質帯は室戸沖海低下の広域に広がっていると考えられる.熊野沖および足摺沖のサイトでは,室戸沖海底下に比べてカルサイト(CaCO3)は多く,バライト(BaSO4)やロードクロサイト(MnCO3)は少ないことがわかった.このことは,変質帯の分布がトラフと平行方向には変わることを示している.