17:15 〜 18:45
[SCG48-P28] 沖縄トラフ南西部の熱流量分布(速報)
キーワード:熱流量、沖縄トラフ、背弧海盆拡大、海洋底拡大
2023年12月28日から2024年1月11日まで実施された沖縄トラフ南部での白鳳丸KH-23-11航海(主席:大坪誠)、および2024年1月25日~2月3日に実施された、新青丸KS-24-01航海(主席:三澤文慶)において、熱流量測定を行った。以前に実施されたKH-21-3航海(主席:大坪)等の結果と合わせて結果を報告する。
沖縄トラフは、ユーラシアプレートに位置する背弧海盆であり、200 万年前から断続的な拡大(リフティング)が生じている。大坪ら(2021AGU)は、大陸地殻が薄化する初期段階のステージと考えているが、この段階においてどのように地殻が薄くなるのか、それを促進する要因が何かは明らかにされていない。特に拡大軸付近での熱構造は拡大様式を規定する重要なデータであるが、これまでほとんど測定データが存在しなかった。
KH-23-11航海では、パイプ長4mのピストンコアラーに7個の温度センサーを取り付けて、コア採取と同時に温度勾配を測定した。与那国海底地溝・八重山地溝の内部で合計4点のデータがえられた。大変残念なことに、別途用意した熱流量プローブ(長さ3m)が最初のオペレーション中にワイヤー切断により海底に落下した。KS-24-01航海では、搭載した潜水船 Hyper Dolphin による潜航を、与那国海底地溝の南側にある石垣地溝(仮称、24°55’N、123°55’E付近)内の小海山で実施、潜水専用熱流量プローブにより3点のデータが得られた。またKH-23-11航海で落下した熱流量プローブを目視確認し、同時に熱流量の測定も1点実施した。
与那国海底地溝では、合計3点のデータが得られた。そのうち2点(123°30’E付近)では、軸北端で40 mW/m^2、南端で58 mW/m^2であった。一方123°5’N付近、最西端の軸部にある海山の縁では、700mW/m^2を超える高熱流量が得られた。
八重山地溝では、軸部平坦地および軸南端の正断層付近で4点の計測が行われ、いずれも約60mW/m^2であった。これらは既存の値(約20点)とほぼ一致しているが、既存値の中には100 mW/m^2を超える値も2点存在する。なお先行調査で、八重山中央海丘(124°20’E付近)に熱水性生物群集が発見されているが、その裾部の熱流量が他に比べてやや低いことが分かっている。
潜水船による調査が行われた地溝帯では、中軸部に東西に延びる海山があり、そのうちのいくつかの縁部で3点の計測を行った。30mW/m2程度の低熱流量から200mW/m2を超える高熱流量が混在するように見える。点数が少ないの系統的なことは言えないが、グラーベン中に火成活動があったとして、その形成時期の違いを反映するのかもしれない。ただし火山のすぐ裾野であっても堆積物が十分(SAHFが十分ささる程度に)あることから、グラーベンへの堆積速度は速いことが予想される。そのために、地下からの熱流量が見かけ上低くなることも考えられる。
以上から、南西部沖縄トラフの地溝帯内部では、おおむね熱流量は60mW/m^2以下であることが推定される。その中で、海山や海丘付近では、おそらくマグマ活動や熱水活動に起因して熱流量が高いのであろう。本調査では、反射法地震探査の構造解釈やコアの化学分析も予定されている。熱流量の結果と合わせて今後拡大開始時の様子を探る予定である。
沖縄トラフは、ユーラシアプレートに位置する背弧海盆であり、200 万年前から断続的な拡大(リフティング)が生じている。大坪ら(2021AGU)は、大陸地殻が薄化する初期段階のステージと考えているが、この段階においてどのように地殻が薄くなるのか、それを促進する要因が何かは明らかにされていない。特に拡大軸付近での熱構造は拡大様式を規定する重要なデータであるが、これまでほとんど測定データが存在しなかった。
KH-23-11航海では、パイプ長4mのピストンコアラーに7個の温度センサーを取り付けて、コア採取と同時に温度勾配を測定した。与那国海底地溝・八重山地溝の内部で合計4点のデータがえられた。大変残念なことに、別途用意した熱流量プローブ(長さ3m)が最初のオペレーション中にワイヤー切断により海底に落下した。KS-24-01航海では、搭載した潜水船 Hyper Dolphin による潜航を、与那国海底地溝の南側にある石垣地溝(仮称、24°55’N、123°55’E付近)内の小海山で実施、潜水専用熱流量プローブにより3点のデータが得られた。またKH-23-11航海で落下した熱流量プローブを目視確認し、同時に熱流量の測定も1点実施した。
与那国海底地溝では、合計3点のデータが得られた。そのうち2点(123°30’E付近)では、軸北端で40 mW/m^2、南端で58 mW/m^2であった。一方123°5’N付近、最西端の軸部にある海山の縁では、700mW/m^2を超える高熱流量が得られた。
八重山地溝では、軸部平坦地および軸南端の正断層付近で4点の計測が行われ、いずれも約60mW/m^2であった。これらは既存の値(約20点)とほぼ一致しているが、既存値の中には100 mW/m^2を超える値も2点存在する。なお先行調査で、八重山中央海丘(124°20’E付近)に熱水性生物群集が発見されているが、その裾部の熱流量が他に比べてやや低いことが分かっている。
潜水船による調査が行われた地溝帯では、中軸部に東西に延びる海山があり、そのうちのいくつかの縁部で3点の計測を行った。30mW/m2程度の低熱流量から200mW/m2を超える高熱流量が混在するように見える。点数が少ないの系統的なことは言えないが、グラーベン中に火成活動があったとして、その形成時期の違いを反映するのかもしれない。ただし火山のすぐ裾野であっても堆積物が十分(SAHFが十分ささる程度に)あることから、グラーベンへの堆積速度は速いことが予想される。そのために、地下からの熱流量が見かけ上低くなることも考えられる。
以上から、南西部沖縄トラフの地溝帯内部では、おおむね熱流量は60mW/m^2以下であることが推定される。その中で、海山や海丘付近では、おそらくマグマ活動や熱水活動に起因して熱流量が高いのであろう。本調査では、反射法地震探査の構造解釈やコアの化学分析も予定されている。熱流量の結果と合わせて今後拡大開始時の様子を探る予定である。