17:15 〜 18:45
[SCG48-P39] 高知県室戸沖海底下に発達する熱水変質帯の産状
キーワード:南海トラフ、重晶石、流体包有物、XCT、XRFスキャン、ODP
地殻における熱水変質帯の分布は,過去の流体循環を反映しており,地殻変動を理解する上でも重要な情報である.高知県室戸沖では,International Ocean Discovery Program(IODP)で掘削されたC0023サイトから熱水変質帯が報告されている.このような変質帯は,海洋地殻の強度や浸透率といった物性を変えて,プレート収束帯で起こる変形に影響を与えうるが,その分布や形成過程に関する研究は少ない.そこで本研究では室戸沖南海トラフを対象に,国際海洋科学掘削で採取されたコア試料を使って,海底下の熱水変質帯の分布と産状を調べた.用いたコア試料は,Ocean Drilling Program (ODP)の808,1173,1174サイト,International Ocean Discovery Program (IODP)のC0023サイトのものである.調査は,まずX線CTデータを用いて,熱水変質帯の空間分布を調べた.そして,変質帯の産状を調べるため,XRFスキャナによるコア試料の元素マッピング,XRDと光学顕微鏡を用いた構成鉱物の同定および観察,SEMとEDSによる鉱物の観察と元素組成解析,を行った.
X線CTデータから,高いCT値を示す数–数十cm厚の領域が,数mから数十mに1つの間隔で分布する深度区間が複数見つかった.高CT値が集中する区間は,4サイトで共通することから,側方の広がりを持つことがわかる.高CT値領域の産状を詳しく観察するため,1174サイトの海底下941 m付近のコア試料について,元素マッピングを行った.試料には断層帯が見られ,断層面に接するように存在する大きさ数mmの短冊状結晶と,断層面から数mm–数cm離れた場所の変質部が,高CT値を示す.短冊状結晶にはS,Baが濃集し,変質部にはCa,Mnが濃集していた.濃集の程度は,断層面から離れるほど小さくなる.XRDデータと組み合わせて,Ba,Ca,Mnの濃集部にはそれぞれバライト(BaSO4),カルサイト(CaCO3),ロードクロサイト(MnCO3)が存在していると判断した.また,このバライトに見られる流体包有物は,最高で215.0℃の均質化温度を示した.これは地温勾配から推定する同じ深度の温度より有意に高く,バライトの晶出は熱水活動に起因すると考えられる.
以上の観察結果にもとづいて熱水変質帯の形成過程を次のように考えた.半遠洋性砕屑物の堆積後に断層ができて,断層に沿って流れる熱水により変質が起こる.このとき,バライトは断層面近くのみを充填し,カルサイトやロードクロサイトは10 cm前後の範囲で晶出する.今後,鉱物帯の形成時期や熱水の起源を明らかにすることが重要である.
X線CTデータから,高いCT値を示す数–数十cm厚の領域が,数mから数十mに1つの間隔で分布する深度区間が複数見つかった.高CT値が集中する区間は,4サイトで共通することから,側方の広がりを持つことがわかる.高CT値領域の産状を詳しく観察するため,1174サイトの海底下941 m付近のコア試料について,元素マッピングを行った.試料には断層帯が見られ,断層面に接するように存在する大きさ数mmの短冊状結晶と,断層面から数mm–数cm離れた場所の変質部が,高CT値を示す.短冊状結晶にはS,Baが濃集し,変質部にはCa,Mnが濃集していた.濃集の程度は,断層面から離れるほど小さくなる.XRDデータと組み合わせて,Ba,Ca,Mnの濃集部にはそれぞれバライト(BaSO4),カルサイト(CaCO3),ロードクロサイト(MnCO3)が存在していると判断した.また,このバライトに見られる流体包有物は,最高で215.0℃の均質化温度を示した.これは地温勾配から推定する同じ深度の温度より有意に高く,バライトの晶出は熱水活動に起因すると考えられる.
以上の観察結果にもとづいて熱水変質帯の形成過程を次のように考えた.半遠洋性砕屑物の堆積後に断層ができて,断層に沿って流れる熱水により変質が起こる.このとき,バライトは断層面近くのみを充填し,カルサイトやロードクロサイトは10 cm前後の範囲で晶出する.今後,鉱物帯の形成時期や熱水の起源を明らかにすることが重要である.