日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG49] 固体地球科学と材料科学の融合が切り拓く新展開

2024年5月29日(水) 10:45 〜 12:00 202 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:河合 研志(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、土屋 旬(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)、大村 訓史(広島工業大学)、辻野 典秀(公益財団法人 高輝度光科学研究センター)、座長:河合 研志(東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻)、大村 訓史(広島工業大学)、辻野 典秀(公益財団法人 高輝度光科学研究センター)、土屋 旬(愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター)

11:30 〜 11:45

[SCG49-04] 高温における石英の弾性定数:分子動力学シミュレーションによる導出

*杉本 理空1佐久間 博1,2河合 研志1 (1.東京大学、2.物質・材料研究機構)

キーワード:低温型石英、分子動力学シミュレーション、弾性定数、真実接触面積

地殻の主要鉱物の一つである石英は断層に多く含まれ、その摩擦特性を知ることは断層の挙動を知る上で重要である。石英粒子間の摩擦は、凝着説によれば、真実接触面積と真実接触点での凝着を切る力に依存する。これら二つの性質を知ることは、摩擦構成則のさらなる発展に不可欠である。しかしながら、真実接触面積が温度ともにどう変化するかは、未解明であり、実験的に観察することが難しい。一般に真実接触面積は鉱物の弾性定数から見積もることができると考えられている。そこで本研究では分子動力学シミュレーションから、石英の弾性定数を見積もる方法・モデルを検討し、地殻条件に相当する室温から高温の温度範囲で石英の弾性定数を理論的に計算する。また求められた弾性定数を用いて真実接触面積の温度変化に対する知見を得る。
本研究では分子動力学(MD)シミュレーションを行った。まず、粒子数・圧力・温度(NPT)一定条件下の格子定数を決定し、そこから微小歪を加えて粒子数・体積・温度(NVT)一定条件下での応力を計算した。得られた歪み-応力関係から弾性定数を理論的に計算した。石英のポテンシャルモデルは、既往のSiO2系 のMD計算で用いられているVashishtaモデル[1]、Tersoffモデル[2]、BMH-EXPモデル[3, 4] を採用し、結果を比較した。
石英は三方晶系であり、独立な弾性定数はC11, C12, C13, C14, C33, C44の6成分である [5]。室温(300 K)において、Vashishtaモデルは、C14以外の弾性定数で実験値 [6]からの差が大きく、弾性定数の計算には適さないことがわかった。TersoffモデルはC11, C13の実験値を再現したが、それ以外の弾性定数の再現性がよくない。BMH-EXP は全体的に実験値を再現していた。 以上の結果から高温の石英の弾性定数の計算にはBMH-EXPモデルを用いることとした。
発表においては、上記の結果に加えてBMH-EXPモデルを用いた弾性定数の温度依存性から、石英の真実接触面積の変化について議論する。

参考文献.
[1] Vashishta, et al., Phys. Rev. B, 41, 12197 (1990).
[2] Mumetoh et al., Comp. Mat. Sci., 39, 334-339 (2007).
[3] Ishikawa et al., J. Mineral. Petrol. Sci., 111, 297-302 (2016).
[4] Yokoyama and Sakuma, Geochim. Cosmochim. Acta, 224, 301-312 (2018).
[5] J. F. Nye. Physical Properties of Crystals, Clarendon Press, Oxford, (1957).
[6] Ohno, J. Phys. Earth, 43, 157-169 (1995).