17:15 〜 18:45
[SCG50-P09] 深層学習に基づく地震波検測技術の適用: 内陸下の低周波地震の応用に向けて

キーワード:深層学習、低周波地震、位相ピッキング
低周波地震は、地震の規模が小さいにも関わらず低周波数が卓越する地震である。低周波地震はその波形の特徴と低S/Nから、地震波着信時の判定が通常の地震よりも難しい。一方近年、深層学習の発展に伴い、地震波の自動検測技術に大きな進歩があった。しかし、この手法を日本で適用している例はいまだ多くなく、特に内陸下で発生する低周波地震に対してはほとんど行われていないようである。そこで本研究では、この技術の低周波地震への応用に向けて、通常の地震と内陸下で発生する低周波地震それぞれに深層学習に基づく検測技術を用い、低周波地震への適用可能性を検討した。
本研究では、深層学習に基づく地震波検測モデルとしてZhu and Beroza (2019)が開発したPhaseNetを使用する。このモデルは3成分の地震波形を入力とし、P波、S波の到達時刻を確率分布として出力する。対象とする地震は気象庁一元化震源カタログから、北東北周辺で2004年4月1日から2023年12月31日までに発生しているマグニチュード2―4、30 km以浅の内陸地震と低周波地震とした。ただし、低周波地震は気象庁震源カタログのフラグに基づいて判定した。防災科学技術研究所Hi-net観測点の速度波形記録を対象とし、地震発生時刻の10秒前から40秒間を切り出した。内陸地震では3成分生波形を入力して、低周波地震では生波形の他に0.5-1、1-2、2-4 Hzのバンドパスフィルタと1 Hz、2 Hz のハイパスフィルタの5種類のフィルタを適用する。合計6種類の3成分波形をそれぞれモデルに入力した。通常の地震での読み取りでは、出力された確率が最大となるピーク値の時間を予測時刻とした。一方、低周波地震での読み取りでは、生波形でのP波、S波の確率のピーク値がともに0.5以上ならばそのまま採用し、そうでなければ6つの波形から出力された確率から最も高い確率のピーク値を選択し、そのときの時間を予測時刻とした。このように我々はPhaseNetで推定した検測値と気象庁による同じ観測点の検測値とを比較した。
結果、通常の地震に対しては気象庁による検測値と整合的な検測結果が得られることを確認した。それに対し、低周波地震では生波形の検測はやや難しいものの、フィルタ処理によって改善される場合があった。中でも、2 Hzのハイパスフィルタが特に有効であった。ただし、低周波地震での検測では通常の地震の時と同じような確率のピーク値の分布を取ることはなかった。ところで、通常の地震と低周波地震のどちらであっても、PhaseNetは気象庁の検測値に比べてわずかに後ろの時間を読む傾向が見られた。これは、PhaseNetの学習に特定地域のデータが用いられていることによるバイアスの可能性がある。そこで今後は、日本国内で観測された地震波形での再学習や、低S/Nな記録に対し機械学習によるノイズ低減処理を施すことにより、高精度な低周波地震の震源分布に迫れると期待される。
本研究では、深層学習に基づく地震波検測モデルとしてZhu and Beroza (2019)が開発したPhaseNetを使用する。このモデルは3成分の地震波形を入力とし、P波、S波の到達時刻を確率分布として出力する。対象とする地震は気象庁一元化震源カタログから、北東北周辺で2004年4月1日から2023年12月31日までに発生しているマグニチュード2―4、30 km以浅の内陸地震と低周波地震とした。ただし、低周波地震は気象庁震源カタログのフラグに基づいて判定した。防災科学技術研究所Hi-net観測点の速度波形記録を対象とし、地震発生時刻の10秒前から40秒間を切り出した。内陸地震では3成分生波形を入力して、低周波地震では生波形の他に0.5-1、1-2、2-4 Hzのバンドパスフィルタと1 Hz、2 Hz のハイパスフィルタの5種類のフィルタを適用する。合計6種類の3成分波形をそれぞれモデルに入力した。通常の地震での読み取りでは、出力された確率が最大となるピーク値の時間を予測時刻とした。一方、低周波地震での読み取りでは、生波形でのP波、S波の確率のピーク値がともに0.5以上ならばそのまま採用し、そうでなければ6つの波形から出力された確率から最も高い確率のピーク値を選択し、そのときの時間を予測時刻とした。このように我々はPhaseNetで推定した検測値と気象庁による同じ観測点の検測値とを比較した。
結果、通常の地震に対しては気象庁による検測値と整合的な検測結果が得られることを確認した。それに対し、低周波地震では生波形の検測はやや難しいものの、フィルタ処理によって改善される場合があった。中でも、2 Hzのハイパスフィルタが特に有効であった。ただし、低周波地震での検測では通常の地震の時と同じような確率のピーク値の分布を取ることはなかった。ところで、通常の地震と低周波地震のどちらであっても、PhaseNetは気象庁の検測値に比べてわずかに後ろの時間を読む傾向が見られた。これは、PhaseNetの学習に特定地域のデータが用いられていることによるバイアスの可能性がある。そこで今後は、日本国内で観測された地震波形での再学習や、低S/Nな記録に対し機械学習によるノイズ低減処理を施すことにより、高精度な低周波地震の震源分布に迫れると期待される。