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[SCG51-11] 後期更新世火山年代学のためのアパタイトU-Th非平衡年代測定の開発
キーワード:アパタイト、UーTh非平衡、後期更新世、年代学
地質年代学および火山学において、10万年より若い火山噴出物、特にジルコンやサニディンが含まれない安山岩質〜玄武岩質岩の年代測定にも適用可能な手法開発が万国共通の急務である。本研究では、新たな手法として、アパタイトを利用したU−Th放射非平衡年代測定法[1,2]を開発する。その利点として、(1)アパタイトが玄武岩〜安山岩〜流紋岩質マグマで幅広く存在する、(2)アパタイトはマグマ中で早期に結晶化する、(3)晶出期間が比較的短いと想定できる、があり、これらの特性はマグマだまりでの結晶分化早期のタイミングを推定する上でジルコンよりも優れている。この手法を10万年前より若い火山噴火の年代測定法と噴火に至る前のマグマプロセスの年代測定法としての構築を目指す。
Niki et al.(2022)[3]は、後期更新世以後の地質試料に適用可能な放射年代測定法として、ウラン系列の中間生成物であるトリウム230(半減期7.5万年)を利用した238U−230Th放射非平衡年代測定法(以下U−Th法と略す)に注目し、コリジョンセルを搭載した四重極型ICP質量分析計を用い、質量数230に対するスペクトル干渉除去技術を新たに開発した。その年代測定応用として、洞爺火砕流や三瓶木次軽石を含む10万年から2万年前のジルコン年代を報告した。本研究では、Nikiほかで構築したジルコンLA−ICP−MS U―Th年代測定基礎をアパタイトに応用する。その際、以下の3点の改良を行った: (1)アパタイトの低ウラン濃度(ジルコンの約1/10と仮定)に伴い、約10倍のサンプリング量を取得する高速多点レーザーサンプリング条件を決定する。(2)Th/U比既知の標準物質としてDurango apatite巨晶(1cm径、Th/U比〜20)を利用する。(3)アブレーションブランク補正用にThおよびUを含まない人工アパタイトを利用する。本発表では、島根県三瓶山由来のテフラである三瓶池田火砕流を用いる。本テフラの噴出年代(46.3ka)は、福井県水月湖堆積物中での炭素14年代研究で制約されている[4]。本火砕流はジルコンとアパタイト両方を含むが、予察的な分析から外来ジルコン粒子が多く混在していることを確認した。外来結晶を除外する目的から、3~1cm径の軽石(乾燥重量32g)から分離されたジルコン、アパタイト粒子を分析対象とした。軽石から得られたジルコン、アパタイトU−Th年代と他の手法 (14C、ジルコンFT) の年代と比較しながら、年代値および測定精度を検討し、後期更新世火山年代学構築に向けてU-Th非平衡系の可能性を議論する。
[1] Kigoshi K. (1967) Science 156, 932―934. [2] Guillong M., Sliwinski J.T., Schmitt A., Forni F. and Bachmann O. (2016) Geostandards and Geoanalytical Research, 40, 377– 387. [3] Niki S., Kosugi S., Iwano H., Danhara T. and Hirata T. (2022) Geostandards and Geoanalytical Research. doi: 10.1111/ggr.12458. [4] Maruyama S.,Takemura K., Hirata T., Yamashita T. and Danhara T. (2019) Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 128, 879-903.
Niki et al.(2022)[3]は、後期更新世以後の地質試料に適用可能な放射年代測定法として、ウラン系列の中間生成物であるトリウム230(半減期7.5万年)を利用した238U−230Th放射非平衡年代測定法(以下U−Th法と略す)に注目し、コリジョンセルを搭載した四重極型ICP質量分析計を用い、質量数230に対するスペクトル干渉除去技術を新たに開発した。その年代測定応用として、洞爺火砕流や三瓶木次軽石を含む10万年から2万年前のジルコン年代を報告した。本研究では、Nikiほかで構築したジルコンLA−ICP−MS U―Th年代測定基礎をアパタイトに応用する。その際、以下の3点の改良を行った: (1)アパタイトの低ウラン濃度(ジルコンの約1/10と仮定)に伴い、約10倍のサンプリング量を取得する高速多点レーザーサンプリング条件を決定する。(2)Th/U比既知の標準物質としてDurango apatite巨晶(1cm径、Th/U比〜20)を利用する。(3)アブレーションブランク補正用にThおよびUを含まない人工アパタイトを利用する。本発表では、島根県三瓶山由来のテフラである三瓶池田火砕流を用いる。本テフラの噴出年代(46.3ka)は、福井県水月湖堆積物中での炭素14年代研究で制約されている[4]。本火砕流はジルコンとアパタイト両方を含むが、予察的な分析から外来ジルコン粒子が多く混在していることを確認した。外来結晶を除外する目的から、3~1cm径の軽石(乾燥重量32g)から分離されたジルコン、アパタイト粒子を分析対象とした。軽石から得られたジルコン、アパタイトU−Th年代と他の手法 (14C、ジルコンFT) の年代と比較しながら、年代値および測定精度を検討し、後期更新世火山年代学構築に向けてU-Th非平衡系の可能性を議論する。
[1] Kigoshi K. (1967) Science 156, 932―934. [2] Guillong M., Sliwinski J.T., Schmitt A., Forni F. and Bachmann O. (2016) Geostandards and Geoanalytical Research, 40, 377– 387. [3] Niki S., Kosugi S., Iwano H., Danhara T. and Hirata T. (2022) Geostandards and Geoanalytical Research. doi: 10.1111/ggr.12458. [4] Maruyama S.,Takemura K., Hirata T., Yamashita T. and Danhara T. (2019) Journal of Geography (Chigaku Zasshi), 128, 879-903.