日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG51] ハイブリッド年代学 -多次元年代データ時代の到来-

2024年5月29日(水) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:仁木 創太(名古屋大学宇宙地球環境研究所年代測定研究部)、伊藤 健吾(東京大学)、坂田 周平(東京大学地震研究所)、岩野 英樹(東京大学附属地殻化学実験施設)

17:15 〜 18:45

[SCG51-P01] CAIsの3次元形状と難揮発性元素イメージング:星雲ガス凝縮過程を記録したペロブスカイト

*伊藤 健吾1栗原 かのこ1中里 雅樹1仁木 創太1平田 岳史1 (1.東大院理 地殻化学実験施設)

キーワード:カルシウム、アルミニウム包有物、微量元素3Dイメージング、ペロブスカイトU–Pb年代測定、LA-ICP-MS

CAIs (Calcium-aluminum-rich inclusions)は,原始太陽近傍において,蒸発・凝華・集積(さらに場合によって,その後の溶融過程)を経て,約45億6730万年に形成された太陽系最古の固体物質である(Connelly et al., 2012; Krot, 2019).CAIsは原始太陽近傍での形成が示唆される一方,あらゆるコンドライトに普遍的に含有されることから,形成後に原始太陽系円盤において動径方向への散逸が存在したと考えられている(Krot, 2019).この固体物質の散逸機構については,円盤中央面における乱流散逸(Ciesla, 2009)や円盤表層におけるX-windやdisk-wind(Bjerkeli et al., 2016)が提唱されている.現在のところ,その制約には至っていないが,近年CAIsの2次元形状からその機構を制約する試みが行われてきている(Lorenz et al., 2021).以上のことから,CAIsにおける難揮発性元素の分布は初期太陽系における凝華・集積過程を,その形状は原始太陽系円盤における物質輸送過程を記録すると考えられる.
そこで本研究では, 2次元形状を3次元形状へと拡張し,さらに元素分布を同時に取得するCAIsの3次元元素イメージング手法(3D イメージング)を考案し,CAIsの凝華・集積過程と散逸過程を同時に理解することを目的とした.試料は,超難揮発性包有物(Zr, Sc, Y-鉱物)が存在する (Xiong et al., 2020)ことから円盤最初期の凝華・集積・散逸過程を記録するNWA 3118(CV 3 コンドライト)を用いた. 試料の分析には,誘導結合プラズマ質量分析法と固体試料導入に適したレーザーアブレーション法を組み合わせたLA-ICP-MSを用い,Na~Uまでの23元素のイメージングを取得した.CAIsのサイズは1 mm四方で,樹脂埋めした試料に対して2Dイメージングを1枚当たり3時間で取得した.その後,得られたイメージング画像を研究室で開発したソフトウェア(Suzuki et al., 2018)を用いて,積層し3Dイメージングを取得した.
CAIsの難揮発性元素分布から,CAIs中における(i)U, Thの担体はペロブスカイトであること,(ii)ペロブスカイト中のU/Thはサイズに応じて変化し,細粒ペロブスカイトの凝華時期が早いこと,(iii)白金族元素はCAIsのコアに~10 µmのメタルナゲットとして点在し,ペロブスカイト/ケイ酸塩とともに機械的な混合をしていること,が新たに明らかになった.さらに,ペロブスカイトの古いU–Pb年代 45億7500万年(誤差:+18/-14 百万年) から,先行研究のCAIsの年代はペロブスカイトの凝華タイミングを反映していること,そして,ペロブスカイトが試料形成後の変質作用を免れた星雲ガスからの直接凝華物であることを示唆する結果となった.本発表ではさらに試料の3次元形状についても紹介し,その形成機構について議論する.