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[SCG54-03] 西之島北東に見られる玄武岩質の古い海丘
キーワード：西之島、海底火山、調査航海
2023年11月9日から28日にかけて、海底広域研究船「かいめい」を用いて、伊豆・小笠原弧の火山観測を目的としたKM23-14航海を実施した。調査対象は三宅島、孀婦海山、西之島で、西之島においてはKM-ROV、ドレッジ、ピストンコアによる海底地質調査と、ドローンを用いた陸域の観測を実施した。
西之島は2013年以降間欠的な火山活動を見せており、第1期から4期の活動が識別されている[1]。第1-3期の活動では安山岩の溶岩流出が見られた一方で、2019-2020年の第4期噴火ではデイサイトの軽石と玄武岩～玄武岩質安山岩の岩石を放出したことが分かっている[1,2]。KM23-14航海期間中の西之島は火口の内外から白色の噴気を継続的に放出しており、白～黄色の析出物が山体斜面に確認された。
KM-ROVによる調査は、これまでの船による磁気観測で負の磁気異常が見られた北東の海丘で実施した。まず、海丘頂上付近の100m四方を曳航式磁力計により磁気マッピングした上で、磁気マッピングを参考にしながら海底地質調査とサンプリングを行った。調査領域の多くの部分は未固結な黒色の砂質火山灰によって覆われていた。
頂上付近で露頭から岩石試料を採取した（Fig. a）。試料は0.1mm程度の薄いMn被膜を持っており、仮にMn被膜の成長速度を100万年当たり1mm程度とすると、この岩体の形成年代は10万年前程度と見積もられる。岩石試料は弱く発泡しており、特定の構造は見られなかった。斑晶鉱物としてカンラン石、単斜輝石、斜長石を持ち、石基は結晶に富む。カンラン石の組成は試料によりFo77-85程度であり、縁部ではイディングサイト化が見られた（Fig. b）。
KMROV251-R02試料では面構造と、それに伴う細長い空隙が見られた。この試料はカンラン石を含まず、斜長石、ピジョン輝石、普通輝石、鉄酸化物の斑晶を持つ。鉄酸化物粒子は稀にSiO2が70mass%程度のメルト包有物を含む。細長い空隙中には、クリストバル石の自形結晶が見られる（Fig. c）。このようなクリストバル石は化学気相成長（CVD）により形成され、近年海底火山の岩石から多数報告されている[3-5]。また、この試料には火山灰の付着が見られ、付着物はカンラン石やSiO2量57%程度の火山ガラスなど、第4期噴火活動の特徴[1]を持つ。
KMROV251-R02以外の岩石は全岩化学組成として玄武岩組成を持つ。Mn被膜形成やイディングサイト化から、この岩体は西之島の歴史噴火よりも有意に古いと考えられる。Tamura et al. [2]は西之島の活動史を通じて玄武岩マグマの形成が繰り返し起きていた事を指摘しているが、今回報告する玄武岩質の古い海丘の存在はこの考えと調和的である。
1 Maeno et al. (2021) https://doi.org/10.3389/feart.2021.773819
2 Tamura et al. (2023) https://doi.org/10.3389/feart.2023.1137416
3 Ikegami et al. (2018) https://doi.org/10.3389/feart.2018.00147
4 Hamada et al. (2023) https://doi.org/10.1016/j.jvolgeores.2022.107738
5 Yoshida et al. (2023) https://doi.org/10.1111/iar.12498
西之島は2013年以降間欠的な火山活動を見せており、第1期から4期の活動が識別されている[1]。第1-3期の活動では安山岩の溶岩流出が見られた一方で、2019-2020年の第4期噴火ではデイサイトの軽石と玄武岩～玄武岩質安山岩の岩石を放出したことが分かっている[1,2]。KM23-14航海期間中の西之島は火口の内外から白色の噴気を継続的に放出しており、白～黄色の析出物が山体斜面に確認された。
KM-ROVによる調査は、これまでの船による磁気観測で負の磁気異常が見られた北東の海丘で実施した。まず、海丘頂上付近の100m四方を曳航式磁力計により磁気マッピングした上で、磁気マッピングを参考にしながら海底地質調査とサンプリングを行った。調査領域の多くの部分は未固結な黒色の砂質火山灰によって覆われていた。
頂上付近で露頭から岩石試料を採取した（Fig. a）。試料は0.1mm程度の薄いMn被膜を持っており、仮にMn被膜の成長速度を100万年当たり1mm程度とすると、この岩体の形成年代は10万年前程度と見積もられる。岩石試料は弱く発泡しており、特定の構造は見られなかった。斑晶鉱物としてカンラン石、単斜輝石、斜長石を持ち、石基は結晶に富む。カンラン石の組成は試料によりFo77-85程度であり、縁部ではイディングサイト化が見られた（Fig. b）。
KMROV251-R02試料では面構造と、それに伴う細長い空隙が見られた。この試料はカンラン石を含まず、斜長石、ピジョン輝石、普通輝石、鉄酸化物の斑晶を持つ。鉄酸化物粒子は稀にSiO2が70mass%程度のメルト包有物を含む。細長い空隙中には、クリストバル石の自形結晶が見られる（Fig. c）。このようなクリストバル石は化学気相成長（CVD）により形成され、近年海底火山の岩石から多数報告されている[3-5]。また、この試料には火山灰の付着が見られ、付着物はカンラン石やSiO2量57%程度の火山ガラスなど、第4期噴火活動の特徴[1]を持つ。
KMROV251-R02以外の岩石は全岩化学組成として玄武岩組成を持つ。Mn被膜形成やイディングサイト化から、この岩体は西之島の歴史噴火よりも有意に古いと考えられる。Tamura et al. [2]は西之島の活動史を通じて玄武岩マグマの形成が繰り返し起きていた事を指摘しているが、今回報告する玄武岩質の古い海丘の存在はこの考えと調和的である。
1 Maeno et al. (2021) https://doi.org/10.3389/feart.2021.773819
2 Tamura et al. (2023) https://doi.org/10.3389/feart.2023.1137416
3 Ikegami et al. (2018) https://doi.org/10.3389/feart.2018.00147
4 Hamada et al. (2023) https://doi.org/10.1016/j.jvolgeores.2022.107738
5 Yoshida et al. (2023) https://doi.org/10.1111/iar.12498