11:00 〜 11:15
[SCG54-07] 西表島北北東海底火山はイリーズニか?
キーワード:西表島北北東海底火山、活火山、海底火山
今からちょうど100年前にあたる1924年10月31日,沖縄県八重山諸島に属する西表島の北北東海域で大量の軽石を海面に噴出する噴火が発生した.この噴火はこれを目撃した商船宮古丸の加納船長が詳細な報告を残しており,それを元に気象庁の日本活火山総覧(第4版)には,火山の位置は北緯24.8°,東経124°と記載されている.しかしながら,近年の海底地形調査によって,当該海域は陸棚から沖縄トラフへと至る大陸斜面上に当たり火山体は存在しないことが明らかとなった.一方,加藤(1982)は海底地形等の資料を基に西表島北北東海底火山の位置として数カ所を選定しドレッジ等の調査を行っているが,軽石等の火山噴出物は得られていない.海上保安庁は,噴火後100年を契機としてこれまでの海洋調査成果を見直したところ,イリーズニと呼ばれる高まりが西表北北東海底火山ではないかと考えられる感触を得たので,2023年にそれを裏付ける証拠を得るための調査を行った.
イリーズニは西表島東端の野島崎から北方13.5 kmに位置する海底の高まりである.2017年の海上保安庁測量船「拓洋」の調査では,形状はほぼ円形であり,底部の直径はおよそ1 ㎞,比高は40 mで平たいマウンド状を呈する.その東側には一回り小さな同様な形状をした海丘が2つと,イリーズニから何かが流下したような地形がある.周囲には断層変位地形が顕著であるが,イリーズニは全く変形を受けていない.頂部は平坦であるが,音波の反射強度が高い同心円状の模様が見られ,そこは地形的にもやや高くなっている.山頂中心部にはパッチ状の高反射強度部が見られ,ウォーターカラムデータにはそこから立ち昇るプルームが見られた.また,1990年に沿岸の海の基本図「西表島北部」調査の一環としてイリーズニでもドレッジが行われ,ほぼ生物遺骸からなる炭酸塩質の堆積物が得られている.
2023年にはこれらの調査結果を踏まえ,イリーズニが西表島北北東海底火山であるかどうかを明らかにするため,エアガンを用いた反射法地震探査,マルチビーム測深機を用いた地形調査,水中カメラによる撮影とドレッジを行った.地形調査においては,同心円状,パッチ状の高反射強度部や湧出するプルームが2017年とほぼ同じ場所に見られた.反射断面には海底下約150 m付近に火口を思わせるような形状の反射面が見られた.ドレッジは山頂部,山体側部において行ったが,ほぼ生物遺骸からなる炭酸塩質の砂やそれが固結した炭酸塩岩が採取されるのみで,軽石や溶岩などの火山活動の証拠となるようなものは得られなかった.
以上の調査結果を総合的にみると,イリーズニが1924年に噴火した西表島北北東海底火山である可能性はかなり低いといえるが,古い火山体である可能性がある.
イリーズニは西表島東端の野島崎から北方13.5 kmに位置する海底の高まりである.2017年の海上保安庁測量船「拓洋」の調査では,形状はほぼ円形であり,底部の直径はおよそ1 ㎞,比高は40 mで平たいマウンド状を呈する.その東側には一回り小さな同様な形状をした海丘が2つと,イリーズニから何かが流下したような地形がある.周囲には断層変位地形が顕著であるが,イリーズニは全く変形を受けていない.頂部は平坦であるが,音波の反射強度が高い同心円状の模様が見られ,そこは地形的にもやや高くなっている.山頂中心部にはパッチ状の高反射強度部が見られ,ウォーターカラムデータにはそこから立ち昇るプルームが見られた.また,1990年に沿岸の海の基本図「西表島北部」調査の一環としてイリーズニでもドレッジが行われ,ほぼ生物遺骸からなる炭酸塩質の堆積物が得られている.
2023年にはこれらの調査結果を踏まえ,イリーズニが西表島北北東海底火山であるかどうかを明らかにするため,エアガンを用いた反射法地震探査,マルチビーム測深機を用いた地形調査,水中カメラによる撮影とドレッジを行った.地形調査においては,同心円状,パッチ状の高反射強度部や湧出するプルームが2017年とほぼ同じ場所に見られた.反射断面には海底下約150 m付近に火口を思わせるような形状の反射面が見られた.ドレッジは山頂部,山体側部において行ったが,ほぼ生物遺骸からなる炭酸塩質の砂やそれが固結した炭酸塩岩が採取されるのみで,軽石や溶岩などの火山活動の証拠となるようなものは得られなかった.
以上の調査結果を総合的にみると,イリーズニが1924年に噴火した西表島北北東海底火山である可能性はかなり低いといえるが,古い火山体である可能性がある.