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[SCG54-P09] 薩摩硫黄島の稲村岳における玄武岩質マグマの分化プロセス

キーワード:薩摩硫黄島
鬼界カルデラは九州最南端の佐多岬から南西約40㎞に位置している第四紀の火山である.700ka以降に火山活動が開始し,先カルデラ期,カルデラ形成期,後カルデラ期に分けられている.薩摩硫黄島中央部に位置する稲村岳は,後カルデラ期に活動をした玄武岩質の火山である.稲村岳は3.9kaから活動を開始して,南溶岩・東溶岩・磯松崎溶岩の3つの溶岩流と火砕丘を形成し,2.2kaまで活動したとされているが,玄武岩質マグマの生成・分化過程の詳細は明らかにされていない.鬼界カルデラでは,後カルデラ期に玄武岩質マグマと流紋岩質マグマの両者が存在するバイモーダル火山活動があったことが知られ,両者の間で混合があったことも明らかにされている.そのため,玄武岩質マグマの生成過程を明らかにすることは,後カルデラ期の鬼界カルデラの火山活動を知る上で重要である.そこで,本研究では特に稲村岳の玄武岩質マグマの分化プロセスを明らかにすることを目的として,薩摩硫黄島で採取した試料について,岩石記載,蛍光X線分析装置を用いた全岩化学組成分析,電子線マイクロプローブアナライザを用いた鉱物化学組成分析を行った.
稲村岳では,南溶岩,東溶岩・火砕丘,磯松崎溶岩の順に噴出し,時代と共に全岩SiO2,Na2O 量が増加,MgO ,FeO*,CaOが単調に減少する.今回未採取の南溶岩を除いて,いずれの試料も20vol%超の斑晶を有し,その大部分が斜長石である.そのほかに数vol%の単斜輝石,少量の直方輝石,かんらん石,磁鉄鉱を有する.斜長石斑晶コア部のAn#は最頻値が東溶岩,火砕丘スコリア,磯松崎溶岩の順に高くなる.火砕丘スコリアには褐色部と黒色部の石基が存在し,両者の境界は曲線的な形状をしている.それぞれの領域に含まれる斑晶組成は系統的に異なり,褐色部に含まれる単斜輝石,直方輝石斑晶はMg#頻度分布図においてバイモーダル分布を示す一方,黒色部のそれらはユニモーダル分布を示す.斜長石斑晶コア部は,黒色部よりも褐色部の方が幅広いAn#を有する.これらのことから,火砕丘を構成するスコリアは噴火直前にマグマ混合が生じていた可能性が高い.一方,ほぼ同時期に噴出したとされる東溶岩や,活動後期の磯松崎溶岩にはスコリア試料のような石基の不均質は認められない.稲村岳玄武岩質試料の全岩化学組成幅が結晶分別作用で説明できるか最小二乗法を用いて検討した結果,各試料の主成分元素組成は,互いに斑晶として含まれる鉱物の分別によって生成可能であることがわかった.両輝石温度計を用いてマグマ温度を推定した結果,東溶岩で986±9℃,スコリアで959℃±20℃および1051±4℃,磯松崎溶岩で985±20℃となった.
これらの結果に基づき,次のようなマグマ分化過程を考えた.南溶岩の温度低下に伴い,中心部に東溶岩マグマ(986℃),周縁部でスコリアの低温マグマ(959℃)からなる2層のマグマ溜りが形成された.より深部から少量の高温マグマ(1051℃)が供給され,おしだされるように東溶岩マグマが噴出した.同時に,マグマ溜り周縁部の低温マグマと供給された高温マグマが混合したマグマが噴出し,火砕丘を形成した.その後,さらに分化が進んだマグマが磯松崎溶岩として噴出した.
稲村岳では,南溶岩,東溶岩・火砕丘,磯松崎溶岩の順に噴出し,時代と共に全岩SiO2,Na2O 量が増加,MgO ,FeO*,CaOが単調に減少する.今回未採取の南溶岩を除いて,いずれの試料も20vol%超の斑晶を有し,その大部分が斜長石である.そのほかに数vol%の単斜輝石,少量の直方輝石,かんらん石,磁鉄鉱を有する.斜長石斑晶コア部のAn#は最頻値が東溶岩,火砕丘スコリア,磯松崎溶岩の順に高くなる.火砕丘スコリアには褐色部と黒色部の石基が存在し,両者の境界は曲線的な形状をしている.それぞれの領域に含まれる斑晶組成は系統的に異なり,褐色部に含まれる単斜輝石,直方輝石斑晶はMg#頻度分布図においてバイモーダル分布を示す一方,黒色部のそれらはユニモーダル分布を示す.斜長石斑晶コア部は,黒色部よりも褐色部の方が幅広いAn#を有する.これらのことから,火砕丘を構成するスコリアは噴火直前にマグマ混合が生じていた可能性が高い.一方,ほぼ同時期に噴出したとされる東溶岩や,活動後期の磯松崎溶岩にはスコリア試料のような石基の不均質は認められない.稲村岳玄武岩質試料の全岩化学組成幅が結晶分別作用で説明できるか最小二乗法を用いて検討した結果,各試料の主成分元素組成は,互いに斑晶として含まれる鉱物の分別によって生成可能であることがわかった.両輝石温度計を用いてマグマ温度を推定した結果,東溶岩で986±9℃,スコリアで959℃±20℃および1051±4℃,磯松崎溶岩で985±20℃となった.
これらの結果に基づき,次のようなマグマ分化過程を考えた.南溶岩の温度低下に伴い,中心部に東溶岩マグマ(986℃),周縁部でスコリアの低温マグマ(959℃)からなる2層のマグマ溜りが形成された.より深部から少量の高温マグマ(1051℃)が供給され,おしだされるように東溶岩マグマが噴出した.同時に,マグマ溜り周縁部の低温マグマと供給された高温マグマが混合したマグマが噴出し,火砕丘を形成した.その後,さらに分化が進んだマグマが磯松崎溶岩として噴出した.