11:30 〜 11:45
[SCG55-09] 高い間隙水圧を必要としない弱い断層モデル
キーワード:断層の強度、粘弾性、間隙水圧、内陸地震
1. 弱い断層モデル
San Andreas断層に働くせん断応力が非常に小さいという指摘(Zoback,1987)以来、プレート境界の断層のみならず内陸の断層の強度も小さいという観測結果が多数得られている(例えば、Yoshida et al., 2014)。岩石摩擦実験で計測された断層の摩擦係数から推定される強度(Byerlee, 1978)に比べて、観測データから推定される断層の強度が非常に小さい理由は、高い間隙水圧により断層に働く法線応力が低下することで説明されることが多い(Rice,1992)。Rice(1992)はSan Andreas断層の下部地殻から高い間隙水圧を持つ流体が継続的に供給されることにより、強度が小さくなることを数値的に示した。しかしながら、プレート境界と異なり内陸において高い間隙水圧を持つ流体が長期間にわたって継続的に供給されることは考えにくい。大地震の発生後に深部から上昇してきたと推定される流体の活動がとらえられることがあるが、それらの時間スケールはせいぜい数か月程度なのである(Sibson, 1988)。
San Andreas断層の掘削により得られた断層岩の分析から、蛇紋岩中に生成された滑石により強度低下することが報告されている(Moore & Rymer, 2007)。また、粘土鉱物に水が含まれることにより粘土が膨潤し断層に働く法線応力が低下することも指摘されている(例えば、Wang & Mao, 1979)。しかしながら、これらの断層物質は一般的には速度強化の摩擦特性を示すため、クリープしている断層にはこれらの考えは適用可能であるが、地震性の断層には適用な難しいと考えられる。
Yamamoto et al.(2001, 2002)は,断層破砕帯においては,断層に鉛直なクラックが存在し,それらは法線応力は支えるがせん断応力は支えないので,摩擦力を小さくできることを示した.この考えのポイントは、法線応力は支えるがせん断応力は支えない部分があると断層が弱くなるということである。高間隙水圧はまさにそういうものであるが、粘弾性物質であっても長時間経過後には緩和して、同様の状態になると考えられる。本報告では、断層のガウジ部分が粘弾性物質であるときに、長期間経過後に断層の強度がどうなるかを有限要素法によりシミュレートする。
2. 有限要素法による計算結果
断層付近にパッチ上の粘弾性領域がある有限要素モデルをABAQUS(2023)を用いて構築した。具体的には、断層直交方向の断面形状が長方形の領域(ガウジ領域と呼ぶ)を断層沿いに周期的に配置し、長期間経過後のレスポンスを調べた。最初に法線応力を一定値とした後に、断層にせん断変形を加えて、どの時点で断層がすべり始めるかを調べた。薄い長方形から正方形のガウジ領域までいくつかの形状を用いて、いずれも、均質な場合よりもマクロな強度が低下することを再現できた。
San Andreas断層に働くせん断応力が非常に小さいという指摘(Zoback,1987)以来、プレート境界の断層のみならず内陸の断層の強度も小さいという観測結果が多数得られている(例えば、Yoshida et al., 2014)。岩石摩擦実験で計測された断層の摩擦係数から推定される強度(Byerlee, 1978)に比べて、観測データから推定される断層の強度が非常に小さい理由は、高い間隙水圧により断層に働く法線応力が低下することで説明されることが多い(Rice,1992)。Rice(1992)はSan Andreas断層の下部地殻から高い間隙水圧を持つ流体が継続的に供給されることにより、強度が小さくなることを数値的に示した。しかしながら、プレート境界と異なり内陸において高い間隙水圧を持つ流体が長期間にわたって継続的に供給されることは考えにくい。大地震の発生後に深部から上昇してきたと推定される流体の活動がとらえられることがあるが、それらの時間スケールはせいぜい数か月程度なのである(Sibson, 1988)。
San Andreas断層の掘削により得られた断層岩の分析から、蛇紋岩中に生成された滑石により強度低下することが報告されている(Moore & Rymer, 2007)。また、粘土鉱物に水が含まれることにより粘土が膨潤し断層に働く法線応力が低下することも指摘されている(例えば、Wang & Mao, 1979)。しかしながら、これらの断層物質は一般的には速度強化の摩擦特性を示すため、クリープしている断層にはこれらの考えは適用可能であるが、地震性の断層には適用な難しいと考えられる。
Yamamoto et al.(2001, 2002)は,断層破砕帯においては,断層に鉛直なクラックが存在し,それらは法線応力は支えるがせん断応力は支えないので,摩擦力を小さくできることを示した.この考えのポイントは、法線応力は支えるがせん断応力は支えない部分があると断層が弱くなるということである。高間隙水圧はまさにそういうものであるが、粘弾性物質であっても長時間経過後には緩和して、同様の状態になると考えられる。本報告では、断層のガウジ部分が粘弾性物質であるときに、長期間経過後に断層の強度がどうなるかを有限要素法によりシミュレートする。
2. 有限要素法による計算結果
断層付近にパッチ上の粘弾性領域がある有限要素モデルをABAQUS(2023)を用いて構築した。具体的には、断層直交方向の断面形状が長方形の領域(ガウジ領域と呼ぶ)を断層沿いに周期的に配置し、長期間経過後のレスポンスを調べた。最初に法線応力を一定値とした後に、断層にせん断変形を加えて、どの時点で断層がすべり始めるかを調べた。薄い長方形から正方形のガウジ領域までいくつかの形状を用いて、いずれも、均質な場合よりもマクロな強度が低下することを再現できた。