日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG55] 変動帯ダイナミクス

2024年5月30日(木) 13:45 〜 15:15 コンベンションホール (CH-B) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和(山口大学大学院創成科学研究科)、座長:橋間 昭徳(東京学芸大学)、深畑 幸俊(京都大学防災研究所)

13:45 〜 14:00

[SCG55-11] 北アナトリア断層のすべり運動とヘレニック沈み込み運動によるエーゲ海の形成運動

*橋間 昭徳1、Eken Tülay2、Özener Haluk2 (1.東京学芸大学、2.ボアジチ大学カンディリ地震観測研究所測地学部門)

キーワード:動力学的沈み込みモデル、GPS、インバージョン、ヘレニック海溝、北アナトリア断層

エーゲ海と隣接するアナトリア半島は、ユーラシア・プレート、アフリカ・プレート、アラビア・プレートにはさまれた世界でも有数の活動的な変動帯を構成している。この地域は、ヘレニック海溝下へのアフリカプレートの沈み込みと北アナトリア断層帯(NAFZ)のすべり運動によって支配されている。ペロポネソス半島とアナトリア半島間に位置するエーゲ海は南北伸張下にあり、Mw7.0の2020年サモス地震のような正断層メカニズムによる大地震を引き起こす。この地域の地震リスクの合理的な評価のためには、ヘレニック海溝下の沈み込み運動とNAFZのすべり運動による同地域の地表変動と応力蓄積過程、地殻構造発達過程を統合的に理解する必要がある。これら2つの効果を定量的に分離するために、ギリシャ-トルコ地域の公表されたGPSデータを解析した。
本研究では同地域の構造モデルとして、簡単な弾性-粘弾性成層構造モデルを考慮した。最初のステップにおいて、様々な平均すべり条件下での各GPS観測点における変動速度に対するNAFZのすべり運動の寄与を推定した。次に、観測された変動速度データからNAFZのすべり運動による変動速度を差し引く。得られた残差速度に対してインバージョン解析を行い、ヘレニック海溝に沿った沈み込み速度を導く。得られた最適モデルは、NAFZにおいて35mm/yr未満のすべり速度と、ヘレニック海溝の平均約40mm/yrのスラブ後退速度を示している。エーゲ海において、ヘレニック海溝のスラブ後退運動とNAFZのすべり運動の寄与は同程度であり、この地域の変動に対して両者の役割は等しく重要である。