日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-CG 固体地球科学複合領域・一般

[S-CG55] 変動帯ダイナミクス

2024年5月30日(木) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:深畑 幸俊(京都大学防災研究所)、岩森 光(東京大学・地震研究所)、大橋 聖和(山口大学大学院創成科学研究科)

17:15 〜 18:45

[SCG55-P07] 東北地方の上部地殻におけるS波偏向異方性の起因推定

*藤村 遼太郎1岡田 知己1水田 達也1、Savage Martha2高木 涼太1吉田 圭佑1酒井 慎一3勝俣 啓4大園 真子4,3小菅 正裕5前田 拓人5山中 佳子6片尾 浩7松島 健8八木原 寛9、木村 洲徳1平原 聡1河野 俊夫1松澤 暢1田上 綾香1 (1.東北大学大学院理学研究科附属地震・噴火予知研究観測センター、2.ビクトリア大学ウェリントン、3.東大地震研、4.北大・理、5.弘前 大・理工、6.名古屋大・環境、7.京大防災研、8.九州大・理、9.鹿児島大学)

キーワード:S波スプリッティング、S波偏向異方性

S波偏向異方性をもつ媒質中をS波が伝搬する際、振動方向が直交な二つのS波に分裂し、異なる 速度で伝搬する現象(S波スプリッティング)が生じる。この現象における速い波の振動方向は SHmax(最大水平圧縮軸方向)や鉱物の結晶配向方向に由来する。上部地殻では一般にSHmaxに平行な方向の異方性が観測される。ただし断層や火山関連の地殻構造が存在するエリアでは広域応力場と異なる傾向も確認されている。 水田(東北大学修士論文, 2021)ては、東北地方全域にて広くS波スプリッティングを利用した異方性解析を行った。特に2011年東北沖地震の前後での異方性の方向と大きさの変化を測定し、地震活動の活発化と異方性の増大との関係を検証した。この解析には2008年12月から2016年4月の期間の定常・臨時地震観測データを利用し、MFAST(Multiple Filter Automatic Splitting Technique, Savage et al., 2010)を用いてS波スプリッティングのパラメータを測定した。本研究では、水田(2021)にて得られたデータのうち、上部地殻かつ東北沖地震後の異方性方向のデータを利用し、詳細な応力場との比較を行うことで、異方性方向の分布の特徴を再検討し、異方性の起因推定を行なった。応力場については、岡田・他(2022)にて東北地方全域で推定されたメカニズム解のP軸を 用いた。 異方性方向と応力場の空間分布の比較により、P軸方向に平行な異方性とそれとは異なる方向の異方性をそれぞれ検出した。青森・岩手県境付近の折爪断層近傍では、P軸方向とは異なる断層の走向に平行な異方性を確認した。この異方性は断層を貫くような波線経路を通る地震波から顕著に検出されたことから、断層が原因の異方性であると見られる。また福島・山形県境付近では、大峠カルデラおよびその付近での異方性の不均質性や、猫魔火山近傍でのP軸と異なる方向の異方性を検出した。他地域の研究(Honda et al., 2022; Johnson et al., 2011)においても火山地帯での異方性の不均質性が確認されており、今回の結果は整合的である。 異方性の不均質性は、マグマ溜まりがもたらす応力場の局所的な変化や断層など、複合的な要因により生じるとされており、異方性の空間分布の整理によって起因の解釈が行われている。今後、同様の手法の導入により、本研究の対象地域でもより詳細な空間分布の把握や起因推定が期待できる。