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[SCG55-P08] ガウス過程逆解析による応力場時間変化の客観的判定
地殻内の応力状態は地震テクトニクスに関する基本的な知見を提供するため、地震学的データの逆解析により応力場の空間分布が推定されてきた(e.g., Terakawa and Matsu'ura, 2010; Uchide et al., 2022)。さらに応力場の時間変化を推定することで、地震の準備過程や地震後の応力緩和などの情報を引き出せる可能性がある。時間変化の推定に際しては,計算量等の手法上の制約から、予め観測データを期間により分割し、各期間において定常性を仮定して推定した結果を比較するのが一般的である(e.g., Hardebeck and Michael, 2006; Terakawa and Matsu’ura, 2023)。その際、個々の地震メカニズム解が示す応力方向にはバラツキが大きいため、見かけの時間変化が真の応力変化を反映しているかを適切に判断する必要がある。
Okazaki et al. (2022)は応力場の逆解析にガウス過程を応用する手法を開発し,2011年東北地方太平洋沖地震(以後、東北沖地震)後のCMTデータを解析することで、東北沖地震の震源域周辺部における地震後の応力変化の地域性を明らかにした。本研究では、その研究の発展として,ガウス過程において超パラメタ(振幅・相関距離など)を周辺尤度最大化の規準により選択できることを利用し、解析期間において時間変化が有意に見られるか否かを観測データから客観的に判定できることを実データの解析により検証した。
解析には2003–2019年における東北地方周辺のF-net CMT解を使用した。東北沖地震により震源域周辺の地震活動が顕著に変化したことをふまえ、(i)地震前、(ii)地震後、(iii)全期間の3通りのデータセットに対し応力場の時空間変化を推定した。特に、応力変化の典型的時間を表す超パラメタ(以後、相関時間)の最適値に着目した。まず、(i)地震前においては、周辺尤度が相関時間に対し単調増加した。これは東北沖地震前の応力場は定常的であることを示唆している。それに対し(ii)地震後は、周辺尤度が相関時間19年において最大値を取った。これは東北沖地震後に応力場がわずかではあるが有意に時間変化していることを示唆している。(iii)全期間においては相関時間が8年となり、期間中に応力場が顕著に時間変化したことを示唆している。
さらに、地震等による応力場のステップ的変化を判別する方法を検討した。解析期間内のある時刻の前後でガウス過程における共分散関数の値を変更し、その程度を規定する超パラメタを周辺尤度最大化により最適化した。(ii)地震後において,例えば2014年元日に境界を取ると、ステップ的変化なしとする最適値が得られた。これは無作為な分割に対する頑健性を示している。それに対し,(iii)全期間において東北沖地震の発生時を境界に取ると、有意なステップ的変化があるとする最適値が得られた。以上のように、ガウス過程において周辺尤度最大化の規準により時間変化の有意性を適切に判定することができる。
Okazaki et al. (2022)は応力場の逆解析にガウス過程を応用する手法を開発し,2011年東北地方太平洋沖地震(以後、東北沖地震)後のCMTデータを解析することで、東北沖地震の震源域周辺部における地震後の応力変化の地域性を明らかにした。本研究では、その研究の発展として,ガウス過程において超パラメタ(振幅・相関距離など)を周辺尤度最大化の規準により選択できることを利用し、解析期間において時間変化が有意に見られるか否かを観測データから客観的に判定できることを実データの解析により検証した。
解析には2003–2019年における東北地方周辺のF-net CMT解を使用した。東北沖地震により震源域周辺の地震活動が顕著に変化したことをふまえ、(i)地震前、(ii)地震後、(iii)全期間の3通りのデータセットに対し応力場の時空間変化を推定した。特に、応力変化の典型的時間を表す超パラメタ(以後、相関時間)の最適値に着目した。まず、(i)地震前においては、周辺尤度が相関時間に対し単調増加した。これは東北沖地震前の応力場は定常的であることを示唆している。それに対し(ii)地震後は、周辺尤度が相関時間19年において最大値を取った。これは東北沖地震後に応力場がわずかではあるが有意に時間変化していることを示唆している。(iii)全期間においては相関時間が8年となり、期間中に応力場が顕著に時間変化したことを示唆している。
さらに、地震等による応力場のステップ的変化を判別する方法を検討した。解析期間内のある時刻の前後でガウス過程における共分散関数の値を変更し、その程度を規定する超パラメタを周辺尤度最大化により最適化した。(ii)地震後において,例えば2014年元日に境界を取ると、ステップ的変化なしとする最適値が得られた。これは無作為な分割に対する頑健性を示している。それに対し,(iii)全期間において東北沖地震の発生時を境界に取ると、有意なステップ的変化があるとする最適値が得られた。以上のように、ガウス過程において周辺尤度最大化の規準により時間変化の有意性を適切に判定することができる。