17:15 〜 18:45
[SCG55-P10] GNSSデータを用いた新潟―神戸ひずみ集中帯の巨視的力学特性に関する考察
キーワード:新潟ー神戸ひずみ集中帯、GNSS、非弾性変形、地殻構成関係、地殻変動、2011年東北地方太平洋沖地震
新潟―神戸ひずみ集中帯は、GPS観測により提唱された地殻変形の集中域であり、活発な地殻活動が見られる。近年、2011年東北地方太平洋沖地震(以下、東北沖地震)前後の地殻変動から持続的なひずみ集中帯における非弾性変形が検出された。しかし、先行研究ではひずみ集中帯の変形を支配する媒質の構成関係についての詳細は明らかにされていない。構成関係の解明は、この地域の地震発生や地形形成に関するテクトニクスの総合的理解にとって重要である。そこで、本研究では、過去約20年間の稠密なGNSS観測に基づく地殻変動場の時空間変化から、東北沖地震等の大地震による応力擾乱に伴う地殻の応答に着目した。具体的には、ひずみ集中帯の局所的な非弾性変形と応力変化との関係から媒質の構成関係について考察した。
本研究では、国土地理院により公開されている1999〜2021年のGNSS日座標値データを解析した。2年間ごとのGNSS変位速度場から推定されるひずみ集中帯の局所的な短縮変形の時間変化からは、東北沖地震後に震源域に近い新潟地域北部ほど短縮変形の回復が明瞭に見られず、地震時の応力変化との関係が示唆される。そこで、応力変化に対する地殻の巨視的な力学応答を調べるため、東西方向の伸張・短縮のみを扱いひずみの弾性・非弾性成分への分離を試みた。今回、対象領域の東端部(ひずみ集中帯の外)は弾性体であると仮定し、応力の連続性からこの地域の応力変化を東端部での弾性変形から評価した。その結果、ひずみ集中帯における東北沖地震前後での持続的な短縮変形が非弾性成分として分離された。また、東北沖地震前後6期間での応力変化とひずみ速度の関係からは、ひずみ集中帯での非弾性ひずみ速度が大地震前後の応力変化に依存して変化しているように見られた。そこで非弾性部に最も単純な線形粘性を仮定した場合、ひずみ速度―応力変化線図の傾きからひずみ集中帯の粘性率は概ね1019〜1020 Pa·sと得られた。
以上のことから、稠密なGNSS観測に基づく変形の時空間変化から地殻力学特性を解明できる可能性が示された。今後も継続的な観測を行うことで、応力―ひずみ速度関係の変化を追うことができ、構成関係の更なる理解に繋がることが期待される。
本研究では、国土地理院により公開されている1999〜2021年のGNSS日座標値データを解析した。2年間ごとのGNSS変位速度場から推定されるひずみ集中帯の局所的な短縮変形の時間変化からは、東北沖地震後に震源域に近い新潟地域北部ほど短縮変形の回復が明瞭に見られず、地震時の応力変化との関係が示唆される。そこで、応力変化に対する地殻の巨視的な力学応答を調べるため、東西方向の伸張・短縮のみを扱いひずみの弾性・非弾性成分への分離を試みた。今回、対象領域の東端部(ひずみ集中帯の外)は弾性体であると仮定し、応力の連続性からこの地域の応力変化を東端部での弾性変形から評価した。その結果、ひずみ集中帯における東北沖地震前後での持続的な短縮変形が非弾性成分として分離された。また、東北沖地震前後6期間での応力変化とひずみ速度の関係からは、ひずみ集中帯での非弾性ひずみ速度が大地震前後の応力変化に依存して変化しているように見られた。そこで非弾性部に最も単純な線形粘性を仮定した場合、ひずみ速度―応力変化線図の傾きからひずみ集中帯の粘性率は概ね1019〜1020 Pa·sと得られた。
以上のことから、稠密なGNSS観測に基づく変形の時空間変化から地殻力学特性を解明できる可能性が示された。今後も継続的な観測を行うことで、応力―ひずみ速度関係の変化を追うことができ、構成関係の更なる理解に繋がることが期待される。