17:15 〜 18:45
[SCG55-P12] 自己重力を考慮した球モデルに基づく粘弾性緩和計算手法の非線形レオロジーへの拡張

キーワード:衛星重力観測、粘弾性緩和、レオロジー、余効変動
GRACEなどの人工衛星を用いた地球重力場観測は、陸海問わず面的に質量変動を捉えることができるが、GNSSと比べ時空間分解能は1か月、300 km程度と低く、巨大地震後の日~週スケールの短期的な変動を捉えるには不十分であった。しかしながら、現在、ESA/NASAが合同で進めている重力観測衛星開発計画(MAGIC計画)では、時空間分解能の目標は3-5日、100 kmである。この目標が達成されれば、沈み込み帯における巨大地震に関して、コサイズミックな重力変化とポストサイズミックな重力変化を区別し、短期的な余効変動のメカニズムを重力観測から解明できる可能性がある。
沈み込み帯における巨大地震後の余効変動メカニズムは、アフタースリップ、間隙弾性反発、粘弾性緩和の三種類あると考えられている。このうち、粘弾性緩和は東北沖地震後の特徴的な海底地殻変動パターンから、数十年スケールの長期間だけでなく、巨大地震直後の短期間でも卓越することが分かり、その後、短期間における粘弾性緩和を再現するために、様々な要因を考慮したモデルが考案されてきた。そのうちの一つである、非線形レオロジー(べき乗則クリープ)を考慮したモデルは、いくつかの研究で、巨大地震後の海底変位パターンをよく再現しているが、その重力変化への影響を調べた研究はほぼ無い。非線形レオロジーが用いられた場合、コサイズミックな大きな応力変化に対応して震源下のアセノスフィアの有効粘性率が一時的に低下するため、地震発生直後の粘弾性変動およびそれにともなう質量変化も促進されることが予想される。そこで、本研究では、非線形レオロジーを取り入れた粘弾性緩和計算手法を開発し、将来的なMAGIC衛星の活用に向けて重力変化を議論できるようにすることを目指す。
計算手法の開発は、線形レオロジー(マクスウェルモデル)に関して既に開発された、自己重力を厳密に取り入れ球の変形を計算できる手法(スペクトル有限要素法; 以下、SFEM)を非線形レオロジーに拡張することで行った。このため、重力変化の計算において、地球表層以外の密度コントラストから生じるアイソスタシー効果も考慮されている。非線形レオロジーを取り入れたいくつかの先行研究と同様に、マクスウェルモデルの粘性部分の流動則を、マントル上部の主な鉱物であるオリビンの転位クリープに関して実験的に得られている流動則に置き換えた。SFEMは微分方程式をラプラス変換せず時間領域で解くため、有効粘性率を定義することで、この場合の構成方程式も線形のものと見かけ上同一になり、各タイムステップにおいて、各グリッドの応力を用いて有効粘性率を計算するサブルーチンを付け加えることで、アルゴリズムに大きな変更を加えることなく非線形の効果を取り入れられる。発表では、スペクトル有限要素法およびその非線形レオロジーへの拡張の方法、粘性と重力の時間変化などの数値計算結果を紹介する。
沈み込み帯における巨大地震後の余効変動メカニズムは、アフタースリップ、間隙弾性反発、粘弾性緩和の三種類あると考えられている。このうち、粘弾性緩和は東北沖地震後の特徴的な海底地殻変動パターンから、数十年スケールの長期間だけでなく、巨大地震直後の短期間でも卓越することが分かり、その後、短期間における粘弾性緩和を再現するために、様々な要因を考慮したモデルが考案されてきた。そのうちの一つである、非線形レオロジー(べき乗則クリープ)を考慮したモデルは、いくつかの研究で、巨大地震後の海底変位パターンをよく再現しているが、その重力変化への影響を調べた研究はほぼ無い。非線形レオロジーが用いられた場合、コサイズミックな大きな応力変化に対応して震源下のアセノスフィアの有効粘性率が一時的に低下するため、地震発生直後の粘弾性変動およびそれにともなう質量変化も促進されることが予想される。そこで、本研究では、非線形レオロジーを取り入れた粘弾性緩和計算手法を開発し、将来的なMAGIC衛星の活用に向けて重力変化を議論できるようにすることを目指す。
計算手法の開発は、線形レオロジー(マクスウェルモデル)に関して既に開発された、自己重力を厳密に取り入れ球の変形を計算できる手法(スペクトル有限要素法; 以下、SFEM)を非線形レオロジーに拡張することで行った。このため、重力変化の計算において、地球表層以外の密度コントラストから生じるアイソスタシー効果も考慮されている。非線形レオロジーを取り入れたいくつかの先行研究と同様に、マクスウェルモデルの粘性部分の流動則を、マントル上部の主な鉱物であるオリビンの転位クリープに関して実験的に得られている流動則に置き換えた。SFEMは微分方程式をラプラス変換せず時間領域で解くため、有効粘性率を定義することで、この場合の構成方程式も線形のものと見かけ上同一になり、各タイムステップにおいて、各グリッドの応力を用いて有効粘性率を計算するサブルーチンを付け加えることで、アルゴリズムに大きな変更を加えることなく非線形の効果を取り入れられる。発表では、スペクトル有限要素法およびその非線形レオロジーへの拡張の方法、粘性と重力の時間変化などの数値計算結果を紹介する。