日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM12] Electric, magnetic and electromagnetic survey technologies and scientific achievements

2024年5月26日(日) 09:00 〜 10:15 304 (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:後藤 忠徳(兵庫県立大学大学院理学研究科)、臼井 嘉哉(東京大学地震研究所)、Li Yuguo(Ocean University of China)、Heise Wiebke(GNS Science, PO Box 30368, Lower Hutt, New Zealand)、座長:藤田 清士(大阪大学院工学研究科)、鈴木 健士(京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設)

09:00 〜 09:15

[SEM12-01] 断層岩石の比抵抗-浸透率に関する普遍性と多様性

★招待講演

*澤山 和貴1 (1.京都大学大学院理学研究科附属地球熱学研究施設 )

キーワード:浸透率、比抵抗、断層、亀裂密度、デジタル岩石物理、異方性

地下の比抵抗構造は,地殻流体やその輸送特性を評価するための良い指標となる。近年の電磁探査の進歩によって,地殻応力の変化による電気比抵抗の変化が検出されるようになり,ここから地下流体の流れの変化を予測できる可能性がある。地下の浸透率の不均質性は,地熱や地震活動に大きな影響を与えるが,原位置での流体の流れを推定することは難しい。地上から観測可能な比抵抗を用いて地下の浸透率を推定できれば有益である。このような浸透率推定モデルは,多孔質媒体の比抵抗に基づくモデルは提案されているものの,亀裂性岩石に関してはほとんど研究されていない。断層は地下浅部に普遍的に存在し,その浸透率の高さから地下の熱・物質輸送を支配している。しかし亀裂性岩石の岩石物理モデルがないため,電磁探査の技術的進歩にも関わらず,そのデータを定量的に解釈することができないという問題点があった。そこで本研究では,亀裂表面の粗さ,せん断変位,化学的侵食の程度,母岩の空隙率を変化させた様々な亀裂モデルについて数値シミュレーションを行い,垂直応力の増加に伴う浸透率と比抵抗の変化における普遍性と多様性について調べた。
計算に使用したデジタル岩石亀裂は,花崗岩(庵治花崗岩と稲田花崗岩)の天然亀裂に基づいて,粗さとせん断変位を制御し,数値的に作成した。それぞれの亀裂モデルに対して、半無限体接触理論を用いて100MPaまでの垂直応力を載荷した。変形した開口幅分布をもとに,格子ボルツマン法及び有限要素法を用いてそれぞれ亀裂内流体流動および電気比抵抗のシミュレーションを行った。各シミュレーションのパラメータは室内実験に基づいて決定ししている。
数値解析の結果,垂直応力上昇時の浸透率と比抵抗の変化は,粗さとせん断変位の両方に影響されることがわかった。またせん断変位に平行/垂直な方向の浸透率異方性も,高い応力条件下では特に顕著であった。一方で,浸透率-比抵抗の関係は粗さ・せん断変位・亀裂の大きさに依存しない普遍的な関係が見いだされた。浸透率-比抵抗の両対数プロットは直線の関係にあり,流路のパーコレーションに伴って屈曲を示す。この直線の傾きは,等価流路モデルに基づくと,屈曲度ないしはArchieの膠結指数と相関する。この普遍的な結果は,断層の浸透率の変遷は,亀裂の大きさや微細構造に関係なく,比抵抗の変化で定式化できることを示唆している。その一方で,母岩の空隙率や亀裂密度が変化するとこれらの傾向は多様に変化し,浸透率の変化に対する電磁気観測の感度を変化させる。