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[SEM13-04] 赤褐色黒曜石中のε-Fe2O3の単磁区粒子
キーワード:岩石磁気学、ラマン分光法、X線回折、磁気ヒステリシス
ε-Fe2O3 は室温において 1 T をこえる巨大な保磁力をもつ磁性体であり,2000年代にはいって数十 nm の粒径の単相が合成されるようになった.考古遺物やスコリアにおいても発見され,2016年に新鉱物 luogufengiteと認定された.特徴的な低いキュリー点 (< 210℃) で ε-Fe2O3 を同定することは容易であるが,考古遺物やスコリアは巨大だがくびれた磁気ヒステリシスループをもち ε-Fe2O3 と他の磁性鉱物が共存していることをしめす.今回複数の産地から得た赤褐色黒曜石のバルク試料について,X線解析とラマン顕微鏡による観察をおこない,ヒステリシス曲線をunmixingして ε-Fe2O3 単相の磁気ヒステリシス特性を得た.赤褐色黒曜石は黒色と赤褐色のまだら模様をしめすが,研磨片をもちいて赤褐色部に 0.5 mm 径にしぼったX線を照射しリートベルト解析をおこない,ε-Fe2O3 と α-Fe2O3 (ヘマタイト) が1:2~1:3の体積比でふくまれていることがわかった.ラマンスペクトルにより赤褐色部では α-Fe2O3 が優勢であるが,粒径数 μm の ε-Fe2O3 も同定することができ,Fe3O4 (マグネタイト) の存在も確認できた.赤褐色部のチップについて低温磁気ヒステリシス測定をおこない,unmixing を行って3成分に分離した.もっとも保磁力の高い成分は,室温での保磁力は 1 T をこえ,200 K でピークをもつ.Mr/Msは温度によらずほぼ一定の 0.5 である.このヒステリシス特性は合成された ε-Fe2O3 と一致し,一軸異方性の単磁区粒子であることをしめす.