日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-EM 固体地球電磁気学

[S-EM13] 地磁気・古地磁気・岩石磁気

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:臼井 洋一(金沢大学)、川村 紀子(海上保安大学校 基礎教育講座)

17:15 〜 18:45

[SEM13-P05] 英国Mull岩脈群の古地磁気学的研究

*深見 基1望月 伸竜2石塚 治3下司 信夫3、Rex Taylor4 (1.熊本大学大学院 自然科学教育部 理学専攻地球環境科学コース、2.熊本大学大学院先端科学研究部 基礎科学部門 地球環境科学分野、3.産業技術総合研究所活断層火山研究部門、4.サウサンプトン大学)

キーワード:Mull dyke swarm、岩脈群、古地磁気方位、古地球磁場、古地磁気極

The North Atlantic Igneous Province (NAIP)の中でも英国周辺部のthe British Tertiary Igneous Province (BTIP)の火山岩に関して多くの古地磁気学的研究がある(例えば、Wilson et al., 1982; Dagley et al., 1984; Riisager et al., 2002)。BTIPの一部であるMull火山から噴出した溶岩や岩脈の古地磁気研究も進められてきた。Ade-Hall et al. (1972)によるMull火山に貫入した岩脈の古地磁気方位研究、Hall et al. (1977)によるMull火山の溶岩流の古地磁気方位研究、 Ganerød et al. (2008)によるMull火山の溶岩流と岩脈の古地磁気方位研究である。ただし、Mull火山を給源とする長距離岩脈群については、給源から遠方の岩脈に対して網羅的に古地磁気学的に研究されてはいない。Ishizuka et al. (2017)では、Mull火山を給源とする長距離岩脈の化学組成を分析し、マグマの輸送方向や輸送時期を明らかにする研究が行われていた。本研究は、この長距離岩脈群の古地磁気学的研究を行い、岩脈群の形成過程やこの時代(約60Ma)の古地球磁場変動の研究への貢献をめざす。本研究では、Mull火山を給源とする岩脈群(Mull dyke swarm)の77サイトの古地磁気方位を測定した。得られた古地磁気データに基づいて、Ar-Ar年代と磁気層序を組み合わせて、Mull dyke swarmの火成活動の年代推定を行った。また、本研究で得られた古地磁気データと既存のデータを組み合わせて、当時の古地球磁場の特徴を議論する。
 古地磁気方位の測定では、まず各サイトから1試料を110mTまで消磁し、特徴的残留磁化を認識できる消磁ステップを特定した。同じサイトの他の試料は同じ消磁ステップまで消磁した。古地磁気方位測定の結果、555個の試片から特徴的残留磁化方位が得られ、そのうち513個の試片を用いて各サイトの平均方位を得た 。測定した全77サイトから古地磁気方位を得た。正磁極を示すサイトは15サイト、逆磁極を示すサイトは58サイト、中間帯磁極を示すサイトは4サイトであった。正磁極と逆磁極サイトの平均方位は逆転テストに合格した。よって、得られた古地磁気方位は地心軸双極子磁場の方位とみなせるほど十分な期間のデータに基いた時間平均である。得られた古地磁気極は、報告されているMull火山のデータやBTIP全体のデータに概ね一致した。仮想地磁気極のばらつきを示す角標準偏差は22.9度であり、この値は過去5百万年間の角標準偏差のモデルに比べて5度程度大きい。また、10サイトの岩脈からは約55-60MaのAr-Ar年代を新たに得た。これらの10サイトのAr-Ar年代に対して地磁気極性タイムスケールを参照したところ、1サイトを除いて、9サイトについては本研究で得た地磁気極性と一致している。