17:15 〜 18:45
[SEM13-P07] ベトナム・ニョンタイン遺跡堆積物の磁気特性に関する基礎的研究
キーワード:ニョンタイン遺跡、ベトナム、メコンデルタ、磁気特性、堆積残留磁化
ベトナム南部カントー市のニョンタイン遺跡は、メコンデルタの湿潤な低平地に位置する集落遺跡であり、2023年実施の発掘調査も含めたこれまでの考古学的調査の過程で2つの文化層が検出されている。これらの文化層の考古年代は、初期オケオ時代(紀元後1~3世紀頃)と典型オケオ時代(紀元後4~7世紀頃)に相当する。同遺跡の年代や土地利用状況に関してさらに研究を深めることは、古代ベトナム南部の初期国家である扶南や、扶南の港市であったオケオの文化について理解する上で非常に重要であると考えられている。本研究では、将来的な考古学的研究への応用を念頭に置き、ニョンタイン遺跡の2箇所の発掘トレンチの計6層位より採取された堆積物試料(各層位につきn=3)に対して(1)段階交流消磁測定、(2)熱磁気分析、(3)IRM獲得実験を実施し、堆積物が記録する堆積残留磁化(DRM)の特性評価を行うとともに、各層位の形成環境に関する初歩的考察を行った。なお、発掘トレンチ最下層の考古学的推定年代は紀元後1世紀であり、最表層は現代の土層である。
段階交流消磁の結果、全6層位の試料のザイダーベルト図上において特徴的残留磁化成分を認定することができた。特に第3層から最下層にかけての特徴的残留磁化のMADは約2~3°であり、安定性の良いDRMを有していると判断できる。また、第3層から最下層にかけての試料からは、一定水準の集中度(α95:3.4~18.3°)を有する考古地磁気方位が復元された。これらの考古地磁気方位が土層堆積時の真の地球磁場方位であるか否かに関しては、今後より詳細に検討していく必要がある。しかしながら、これらの方位データは今後、オケオ文化関連遺跡の編年学的研究の一つの参照基準としての活用が期待される。
続く熱磁気分析(空気中)とIRM獲得実験の結果、最下層・中間層・最表層の各試料において以下の特徴が観察された。最下層および中間層試料の熱磁気曲線上では、常温から700℃にかけての緩やかな磁化の減少、もしくは500~600 ℃付近でキュリー点が観察され、IRM獲得曲線上では560~4000 mT付近で特徴的な高保磁力成分が観察された。これらの特徴はゲーサイトやゲーサイト起源のマグへマイト等の存在を示唆し、同層位が運河沿いの水上集落もしく耕作地に関連する堆積層であるとする考古学的所見と矛盾しない。また最表層試料の熱磁気曲線上では250~350 ℃付近でキュリー点が観察され、IRM獲得曲線上では36 mT付近で卓越的な保磁力成分が観察された。これらの特徴はピロータイト等の硫化鉄鉱物の存在を示唆する。現在、ニョンタイン遺跡の所在地周辺は観光農園として開発されており、堆積層中の硫化物は、そこで使用されている現代的な農薬に起因して生成された可能性が推定される。
段階交流消磁の結果、全6層位の試料のザイダーベルト図上において特徴的残留磁化成分を認定することができた。特に第3層から最下層にかけての特徴的残留磁化のMADは約2~3°であり、安定性の良いDRMを有していると判断できる。また、第3層から最下層にかけての試料からは、一定水準の集中度(α95:3.4~18.3°)を有する考古地磁気方位が復元された。これらの考古地磁気方位が土層堆積時の真の地球磁場方位であるか否かに関しては、今後より詳細に検討していく必要がある。しかしながら、これらの方位データは今後、オケオ文化関連遺跡の編年学的研究の一つの参照基準としての活用が期待される。
続く熱磁気分析(空気中)とIRM獲得実験の結果、最下層・中間層・最表層の各試料において以下の特徴が観察された。最下層および中間層試料の熱磁気曲線上では、常温から700℃にかけての緩やかな磁化の減少、もしくは500~600 ℃付近でキュリー点が観察され、IRM獲得曲線上では560~4000 mT付近で特徴的な高保磁力成分が観察された。これらの特徴はゲーサイトやゲーサイト起源のマグへマイト等の存在を示唆し、同層位が運河沿いの水上集落もしく耕作地に関連する堆積層であるとする考古学的所見と矛盾しない。また最表層試料の熱磁気曲線上では250~350 ℃付近でキュリー点が観察され、IRM獲得曲線上では36 mT付近で卓越的な保磁力成分が観察された。これらの特徴はピロータイト等の硫化鉄鉱物の存在を示唆する。現在、ニョンタイン遺跡の所在地周辺は観光農園として開発されており、堆積層中の硫化物は、そこで使用されている現代的な農薬に起因して生成された可能性が推定される。