09:00 〜 09:15
[SGC33-01] ラマン質量分析法を用いた酸素同位体比測定の課題

キーワード:ラマン質量分析法、カルサイト、精度、酸素同位体
炭酸塩鉱物は、地球上や宇宙空間に広く分布する鉱物群である。炭酸塩の酸素同位体比は、現在および過去の地質学的・環境的変動のトレーサーとして広く用いられてきた(e.g., Wang et al., 2008) 実際、周辺環境の変化に応じた酸素同位体比の変化は、鉱物の成長に伴って縞状に記録される。炭酸塩鉱物は、時に幅約1 mm の成長ゾーニングを持つ。したがって、形成条件の変化を正確に調べるには、1 mm 程度の空間分解能で酸素同位体比を測定する必要がある。これまでの同位体比分析は炭酸塩の酸素同位体比は安定同位体比質量分析法(IR-MS)や二次イオン質量分析法(SIMS)によって分析されてきた。しかし、これらの方法は空間分解能が数mm以上であるため適していない。本研究では空間分解能を解決するためにラマン分光法に着目した。これまでにカルサイトの酸素同位体比の精度は210‰とされ、天然への応用は難しいと報告した(McKay et al., 2013)。しかし近年、二酸化炭素や窒素の同位体比分析が報告されている(e.g., Yamamoto and Hagiwara, 2022; Hagiwara et al., 2023)。これらの中には天然への応用に達しているものも存在している。そこで私たちは再度カルサイトの酸素同位体比について再検討を行った。
私たちは、CO3に帰属されるラマンスペクトル(12C16O16O18Oと12C16O3)の精度を評価するために、2つのピクセル分解能を用いて様々な露光時間後のカルサイトのラマンスペクトルを測定した。測定条件の影響を評価するために行った計算では、酸素同位体比の精度は、ピクセル分解能、ラマンピークの強度およびピーク幅の関数であることが示されている(Hagiwara et al., 2023)。2つのグレーティング(1200と1800本/mm)で得られたラマンスペクトルの精度と露光時間の関係はラマンスペクトルの強度と面積比の両方の精度が露光時間の増加とともに向上することを示し、計算結果と一致した。しかし、露光時間が約90秒を超えると、両グレーティングとも、露光時間の増加に伴う精度の向上率は減少した。1200本/mmグレーティングと900秒の露光時間で測定した場合、12C16O16O18O/12C16O3の強度と面積比について、それぞれ2.69±0.84‰と3.26±0.74‰の精度が得られた。
しかし、12C16O16O18O/12C16O3の強度と面積比を900秒の露光時間で60時間以上モニターした結果の全体精度は強度比と面積比で19.1‰と20.9‰であった。しかし、20回ごとの精度を見ると最高で1.75‰の精度でありラマンスペクトルの精度と露光時間の関係と整合性がある。60時間以上モニターした時に12C16O16O18O/12C16O3の強度と面積比以外に室温や電圧などをモニターした。長時間の測定では室温や電圧などの変化によって12C16O16O18O/12C16O3の強度と面積比に影響することが示唆された。そのため室温や電圧を一定にする必要がある。
これらの結果は、これまでに得られた最高の精度よりも70倍優れており、大きな酸素同位体分布を持つ天然のカルサイトを用いた研究に適用できる可能性がある。
私たちは、CO3に帰属されるラマンスペクトル(12C16O16O18Oと12C16O3)の精度を評価するために、2つのピクセル分解能を用いて様々な露光時間後のカルサイトのラマンスペクトルを測定した。測定条件の影響を評価するために行った計算では、酸素同位体比の精度は、ピクセル分解能、ラマンピークの強度およびピーク幅の関数であることが示されている(Hagiwara et al., 2023)。2つのグレーティング(1200と1800本/mm)で得られたラマンスペクトルの精度と露光時間の関係はラマンスペクトルの強度と面積比の両方の精度が露光時間の増加とともに向上することを示し、計算結果と一致した。しかし、露光時間が約90秒を超えると、両グレーティングとも、露光時間の増加に伴う精度の向上率は減少した。1200本/mmグレーティングと900秒の露光時間で測定した場合、12C16O16O18O/12C16O3の強度と面積比について、それぞれ2.69±0.84‰と3.26±0.74‰の精度が得られた。
しかし、12C16O16O18O/12C16O3の強度と面積比を900秒の露光時間で60時間以上モニターした結果の全体精度は強度比と面積比で19.1‰と20.9‰であった。しかし、20回ごとの精度を見ると最高で1.75‰の精度でありラマンスペクトルの精度と露光時間の関係と整合性がある。60時間以上モニターした時に12C16O16O18O/12C16O3の強度と面積比以外に室温や電圧などをモニターした。長時間の測定では室温や電圧などの変化によって12C16O16O18O/12C16O3の強度と面積比に影響することが示唆された。そのため室温や電圧を一定にする必要がある。
これらの結果は、これまでに得られた最高の精度よりも70倍優れており、大きな酸素同位体分布を持つ天然のカルサイトを用いた研究に適用できる可能性がある。