17:15 〜 18:45
[SGL17-P08] 南太平洋Campbell 海台の深海堆積物に記録された古第三紀前期の海洋Os 同位体比変動

キーワード:暁新世始新世境界温暖化極大 (PETM)、北大西洋火成岩岩石区 (NAIP)、化学風化、Os同位体比、国際深海科学掘削計画 (IODP)
暁新世始新世境界温暖化極大(PETM)は,新生代で最も顕著な地球温暖化イベントとして知られている[1].PETMは,全球的な気温の急激な上昇と明瞭な炭素同位体比の負異常によって特徴づけられ,これは同位体的に軽い炭素が地球表層に大量に注入されたことを示している[1-3].PETMの原因としては様々な説が提唱されているが,その発生と終息の詳細なメカニズムについては依然として議論が続いている.しかしながら,同時期に噴出した北大西洋火成岩岩石区(NAIP)がPETMの発生に関与した可能性については,広く受け入れられている[2-3].
PETMの終息に寄与したメカニズムの一つとして,珪酸塩鉱物の化学風化が挙げられる.珪酸塩鉱物は化学風化によってCO2と反応し,生成したCa2+とHCO3–が海洋中で炭酸カルシウムを形成する[4].この反応は温暖湿潤な気候の下で促進され,大気中のCO2を消費することで地球温暖化に対する負のフィードバックとして機能すると考えられている[5].
海水のOs同位体比(187Os/188Os)は,過去の化学風化フラックスを推定するために有用なプロキシである[6].海水の187Os/188Osは,大陸,マントル,宇宙起源のOsフラックスの混合によって決定される.宇宙起源OsフラックスがPETMのような短い時間間隔では一定に保たれると仮定すると,PETMにおける海水のOs同位体比は,大陸起源Osフラックス(化学風化)とマントル起源Osフラックス(NAIP)のバランスによって変動したと推定される.
本研究では,国際深海科学掘削計画 (IODP) Expedition 378 において,南太平洋Campbell海台上のSite U1553 Hole Cで掘削された,PETMを記録する深海堆積物試料のOs同位体比を分析した.本発表では,その分析結果に基づき,PETM周辺における大陸の珪酸塩岩石の化学風化フラックスとNAIP火成活動の変動について議論する.
PETMの終息に寄与したメカニズムの一つとして,珪酸塩鉱物の化学風化が挙げられる.珪酸塩鉱物は化学風化によってCO2と反応し,生成したCa2+とHCO3–が海洋中で炭酸カルシウムを形成する[4].この反応は温暖湿潤な気候の下で促進され,大気中のCO2を消費することで地球温暖化に対する負のフィードバックとして機能すると考えられている[5].
海水のOs同位体比(187Os/188Os)は,過去の化学風化フラックスを推定するために有用なプロキシである[6].海水の187Os/188Osは,大陸,マントル,宇宙起源のOsフラックスの混合によって決定される.宇宙起源OsフラックスがPETMのような短い時間間隔では一定に保たれると仮定すると,PETMにおける海水のOs同位体比は,大陸起源Osフラックス(化学風化)とマントル起源Osフラックス(NAIP)のバランスによって変動したと推定される.
本研究では,国際深海科学掘削計画 (IODP) Expedition 378 において,南太平洋Campbell海台上のSite U1553 Hole Cで掘削された,PETMを記録する深海堆積物試料のOs同位体比を分析した.本発表では,その分析結果に基づき,PETM周辺における大陸の珪酸塩岩石の化学風化フラックスとNAIP火成活動の変動について議論する.