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[SGL18-06] 断層ガウジのイライト年代分析による中部地方中央構造線赤石時階の再検討
キーワード：中央構造線、イライト年代分析、断層ガウジ、赤石時階、先砥部時階
中央構造線（MTL）はおよそ1億年の活動史を持ち, 近年では断層ガウジの年代測定などから，異なるステージ (時階) が区分されている（Kubota et al., 2009). 断層ガウジの年代測定の旧来の手法では, 熱水変質による自生イライトに対する, 母岩に含まれていたイライトの混入を正確に評価することができず, 粒子が細粒 (<2 μm) でイライト結晶化度 (IC値) が続成領域を示した場合に年代の意義を与えていた (高木・柴田，1992). しかし, Pevear (1992) により, 粒度によって分けられた複数のフラクションについて, ポリタイプ (1Md : 2M1比) とK-Ar年代との相関図において, 1Mdが100 % となる回帰直線の切片を求めることにより年代を解釈するillite age analysis (IAA) が提案された. それによって, 自生イライトの生成年代を推定することが可能となり, 旧来の手法による年代データを再検討する必要がでてきた.杉山ほか (2018)では, IAAを主に中部地方MTLにおいて採取した泥質片岩由来のガウジに適用し, 断層の活動年代を推定した. その後，IAAで必要なポリタイプの測定について，国際的に活用されている解析ソフトWILDFIRE© を用いて再検討をおこなった結果，杉山ほか(2018)とやや異なる結果が得られたことから，改めて中央構造線赤石時階の年代の改訂を報告する．
大鹿村安康西露頭および佐久間町下平露頭の試料からはそれぞれ19.2 ± 1.0 Maおよび20.6 ± 5.8 Maの自生イライトの年代が得られた．また, 紀伊半島東部の多気露頭の試料からは46.9 ± 2.3 Maが得られた．一方，IAAから求められた各々の砕屑性イライト年代（原岩の白雲母年代に相当）は，安康西で69.3 ± 2.7 Ma，下平で62.6 ± 7.4 Ma，多気で65.7 ± 2.2 Maとなり，周辺の三波川泥質片岩中の白雲母K-Ar年代とほぼ一致する結果が得られた．
これらの結果から, 旧来の手法のみを根拠として年代が推定されている赤石時階（23−19Ma：高木・柴田，1992）は，MTLに収斂する赤石構造線の断層ガウジの年代 (15 Ma：Tanaka et al., 1995) を含めると，概ね20−15Maの期間に絞られる．伊豆孤の衝突は17−15Ma以降に開始されたと考えられている（星，2018）が，20MaごろからMTLの活動が中部地方で活発になったことが改めて示唆される．一方, 多気露頭から得られた46.9Maは伊豆弧衝突域からはずれる位置に存在することもあり赤石時階の活動は記録されておらず，Kubota et al. (2019) がIAAを用いて示した四国の先砥部時階の活動ステージである47−46 Maに一致することから，多気露頭も含めて「先砥部時階」はこの期間に絞られる．この時期は，太平洋プレートの移動方向の折れ曲がりの時期（47.5Ma：O’Connor et al., 2013）と一致し，その影響による応力場の変遷が新たなMTLの古第三紀の活動をもたらした可能性がある．
文献
星 博幸，2018，地質雑，124，805-817.
Kubota, Y., Takeshita, T., Yagi, K., and Itaya, T., 2019, Tectonics, 39.2.
O’Conner, J.M. et al., 2013, Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 14, 4564-4584.
Pevear D. R., 1992, In: Proc. 7th Intern. Symp. Water-Rock Interaction. Balkema, Rotterdam, 1251–1254.
杉山幸太郎・高木秀雄・河本和朗，2018, JpGU演旨，SGL31-P16.
高木秀雄・柴田 賢, 1992, 地質学論集, no. 40, 31–38.
Tanaka, H., Uehara, N. and Itaya, T., 1995, Contrib. Mineral. Petrol. 120, 150–158.
大鹿村安康西露頭および佐久間町下平露頭の試料からはそれぞれ19.2 ± 1.0 Maおよび20.6 ± 5.8 Maの自生イライトの年代が得られた．また, 紀伊半島東部の多気露頭の試料からは46.9 ± 2.3 Maが得られた．一方，IAAから求められた各々の砕屑性イライト年代（原岩の白雲母年代に相当）は，安康西で69.3 ± 2.7 Ma，下平で62.6 ± 7.4 Ma，多気で65.7 ± 2.2 Maとなり，周辺の三波川泥質片岩中の白雲母K-Ar年代とほぼ一致する結果が得られた．
これらの結果から, 旧来の手法のみを根拠として年代が推定されている赤石時階（23−19Ma：高木・柴田，1992）は，MTLに収斂する赤石構造線の断層ガウジの年代 (15 Ma：Tanaka et al., 1995) を含めると，概ね20−15Maの期間に絞られる．伊豆孤の衝突は17−15Ma以降に開始されたと考えられている（星，2018）が，20MaごろからMTLの活動が中部地方で活発になったことが改めて示唆される．一方, 多気露頭から得られた46.9Maは伊豆弧衝突域からはずれる位置に存在することもあり赤石時階の活動は記録されておらず，Kubota et al. (2019) がIAAを用いて示した四国の先砥部時階の活動ステージである47−46 Maに一致することから，多気露頭も含めて「先砥部時階」はこの期間に絞られる．この時期は，太平洋プレートの移動方向の折れ曲がりの時期（47.5Ma：O’Connor et al., 2013）と一致し，その影響による応力場の変遷が新たなMTLの古第三紀の活動をもたらした可能性がある．
文献
星 博幸，2018，地質雑，124，805-817.
Kubota, Y., Takeshita, T., Yagi, K., and Itaya, T., 2019, Tectonics, 39.2.
O’Conner, J.M. et al., 2013, Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 14, 4564-4584.
Pevear D. R., 1992, In: Proc. 7th Intern. Symp. Water-Rock Interaction. Balkema, Rotterdam, 1251–1254.
杉山幸太郎・高木秀雄・河本和朗，2018, JpGU演旨，SGL31-P16.
高木秀雄・柴田 賢, 1992, 地質学論集, no. 40, 31–38.
Tanaka, H., Uehara, N. and Itaya, T., 1995, Contrib. Mineral. Petrol. 120, 150–158.