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[SIT14-P17] 下部マントルおよびマントル遷移層鉱物とメルト間の2価鉄と3価鉄分配:マグマオーシャン固化過程における鉄価数分布への制約
キーワード:初期地球、マグマオーシャン、酸化還元度、高圧実験
鉄は岩石天体のマントルに含まれる最も豊富な多価数元素である。そのため、地球をはじめとした天体のマントルの酸化状態は鉄の価数によって決まると考えられている[例えば、1]。岩石天体形成期における金属核分離時において、溶融したマントルであるマグマオーシャンは現在と比べて非常に還元的であったと考えられるが、約40億年以前に溶融したマントルから晶出したジルコン中のCe濃度から、当時の地球の上部マントルはすでに現在と同程度に酸化されていたことが示唆されている[2]。このことは地球形成期~形成後5億年の間にマントルが大酸化を経験したことを意味する。
地球マントル大酸化の有力な機構のひとつとしてマグマオーシャン中の2価鉄の電荷不均化反応が提案され[3]、実験的にも確認されている[4, 5]。一方で、マグマオーシャン固化過程における2価鉄(Fe2+)と3価鉄(Fe3+)の固液分配はマントル内部の鉄価数分布を制約する上で重要であるがほとんど研究報告がない状況である。
本発表では最近我々が取り組んでいる下部マントル主要鉱物とメルト間の2価鉄と3価鉄の分配に関する実験結果[6]について紹介する。下部マントル最主要鉱物であるブリッジマナイトはFe3+と高い適合性をもつことが知られているが、23-27GPaの圧力条件における我々の実験結果はブリッジマナイトと共存するメルト間でFe2+とFe3+の相対比の変化はほとんど見られず、マグマオーシャンから晶出するブリッジマナイトとメルトとの間でFe2+とFe3+の分別が起こらないことを示す。また、マントル遷移層圧力下でFe3+と適合性が高いと考えらえれている主要鉱物であるメージャライトについても、18 GPaの圧力条件下にてFe2+とFe3+の固液分配実験を行ったが、ブリッジマナイト同様に固相液相間で有意なFe3+/Fe2+比の分別は見られなかった。本発表ではブリッジマナイトおよびメージャライトとFe3+の適合性に影響を与えると考えられているAl量の影響、および酸素フガシティーの影響についても議論を行う予定である。
参考文献: [1] Frost and McCammon, 2008, Annual Reviews of Earth and Planetary Sciences 36, 389-420 [2] Trail et al., 2011, Nature 480, 79-82. [3] Hirschmann, 2012, Earth and Planetary Science Letters 341-344, 48-57. [4] Armstrong et al., 2019, Science 365, 903-906. [5] Kuwahara et al., 2023, Nature Geoscience 16, 461-465. [6] Kuwahara and Nakada, 2023, Earth and Planetary Science Letters 615, 118197.
地球マントル大酸化の有力な機構のひとつとしてマグマオーシャン中の2価鉄の電荷不均化反応が提案され[3]、実験的にも確認されている[4, 5]。一方で、マグマオーシャン固化過程における2価鉄(Fe2+)と3価鉄(Fe3+)の固液分配はマントル内部の鉄価数分布を制約する上で重要であるがほとんど研究報告がない状況である。
本発表では最近我々が取り組んでいる下部マントル主要鉱物とメルト間の2価鉄と3価鉄の分配に関する実験結果[6]について紹介する。下部マントル最主要鉱物であるブリッジマナイトはFe3+と高い適合性をもつことが知られているが、23-27GPaの圧力条件における我々の実験結果はブリッジマナイトと共存するメルト間でFe2+とFe3+の相対比の変化はほとんど見られず、マグマオーシャンから晶出するブリッジマナイトとメルトとの間でFe2+とFe3+の分別が起こらないことを示す。また、マントル遷移層圧力下でFe3+と適合性が高いと考えらえれている主要鉱物であるメージャライトについても、18 GPaの圧力条件下にてFe2+とFe3+の固液分配実験を行ったが、ブリッジマナイト同様に固相液相間で有意なFe3+/Fe2+比の分別は見られなかった。本発表ではブリッジマナイトおよびメージャライトとFe3+の適合性に影響を与えると考えられているAl量の影響、および酸素フガシティーの影響についても議論を行う予定である。
参考文献: [1] Frost and McCammon, 2008, Annual Reviews of Earth and Planetary Sciences 36, 389-420 [2] Trail et al., 2011, Nature 480, 79-82. [3] Hirschmann, 2012, Earth and Planetary Science Letters 341-344, 48-57. [4] Armstrong et al., 2019, Science 365, 903-906. [5] Kuwahara et al., 2023, Nature Geoscience 16, 461-465. [6] Kuwahara and Nakada, 2023, Earth and Planetary Science Letters 615, 118197.