日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[J] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-MP 岩石学・鉱物学

[S-MP24] 変形岩・変成岩とテクトニクス

2024年5月30日(木) 10:45 〜 12:00 301A (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:中村 佳博(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、永冶 方敬(東京学芸大学)、針金 由美子(産業技術総合研究所)、山岡 健(国立研究開発法人産業技術総合研究所)、座長:中村 佳博(国立研究開発法人産業技術総合研究所 地質調査総合センター)、永冶 方敬(東京学芸大学)、針金 由美子(産業技術総合研究所)、山岡 健(国立研究開発法人産業技術総合研究所)

11:30 〜 11:45

[SMP24-09] 結晶界面の理論に基づく変形双晶による歪硬化

*横山 裕晃1、長濱 裕幸1 (1.東北大学大学院理学研究科地学専攻)

キーワード:変形双晶、歪硬化、面転位理論、ホールペッチ則

金属や鉱物などの材料では,変形双晶の形成がその機械的特性に影響を与える.例えば,方解石の変形双晶密度は応力の増加とともに増加することが変形実験で示されている[1-2].しかし,その理論的背景はよく理解されてこなかった.本研究では,面転位理論を用いて変形双晶密度と応力の関係を記述することを試みた.
面転位理論は,Bullough and Bilby[3]によって提案された金属におけるマルテンサイト界面の転位構造を表現した理論である.この理論では,2つの異なる方位の結晶格子は,面転位によって界面が形成されるとされている.この面転位は物体内で様々な方向に配向しているはずなので,巨視的には一般的な転位とみなすことができる.すなわち,面転位の密度は通常の転位密度として表現することができる.これを応力-転位の関係(Hall-Petch則)に置き換えると,転位密度と双晶密度の対応から変形双晶密度テンソルと応力の関係を導くことができる.これは,方解石の実験結果から得られた変形双晶密度と応力の関係[2]と一致する.
さらに,面転位理論は,界面構造の幾何学を記述する0格子理論や,界面における変形の連続性を維持する条件としてのrank-1接続およびHadamard適合条件と等価である.そのため,界面を形成するキンク形成やマルテンサイト変態にも適用できる.これらの界面は転位の運動を妨げ,歪硬化を引き起こし,ホールペッチの関係となることが知られている[4-5].したがって,面転位理論は界面形成による歪硬化を包括的に説明できることを示唆している.

参考文献
[1] Rowe and Rutter, 1990, J. Struct. Geol. 105, 80-87.
[2] Rybacki et al., 2013, J. Struct. Geol. 601, 20-36.
[3] Bullough and Bilby, 1956, Proc. Phys. Soc. B 69, 1276.
[4] Tadano, 2023, Mater. Trans. 64, 1002-1010.
[5] Morito et al., 2006, Mater. Sci. Eng. A 438-440, 237-240.