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[SMP24-P10] 領家変成帯の変成条件と構造発達史, 中部地方高遠ｰ駒ヶ根地域の例
キーワード：領家帯、変成条件、シュードセクション法、花崗岩類の固結深度
西南日本内帯に位置する領家帯は，白亜紀後期の中部地殻へのマグマパルスにより形成されたと考えられている．長野県高遠－駒ヶ根地域の領家帯には広域の変成帯とマイロナイト帯が分布していることが知られており，地殻の発達過程を理解するためにはよい研究地域といえる．本研究では高遠ｰ駒ヶ根地域において，領家変成帯の変成条件・花崗岩類の固結深度，変成岩と花崗岩類の関係などを検討することで，火成活動の活発な時期における地殻の物理条件や発達過程の理解へ貢献することを研究目的としている．先の学会発表 (吉岡・高木, 2023) に新たなデータを加え議論を行う予定である．
本地域の変成帯は，北部 (高遠地域) において変成度の上昇にともない黒雲母帯，珪線石－カリ長石帯そしてざくろ石－菫青石帯と変化する．それに対し，南部 (駒ヶ根地域) では黒雲母帯からカリ長石－菫青石帯へと変化することが明らかにされている (Hokada, 1998)．全岩XRF分析により，南北地域間において変成岩の化学組成は大きな差異はみられない結果が得られた．南北地域での変成分帯の系列の違いは化学組成によるものではなく，温度圧力条件を反映したものであると考えられる．得られた全岩化学組成を用いてシュードセクション法による解析を行った．MnO-TiO2-Na2O-CaO-K2O-FeO-MgO-Al2O3-SiO2-H2O系について計算を行った結果，北部と南部の鉱物帯の系列にあたる鉱物組み合わせが，~300 MPaよりも高圧側と低圧側でそれぞれ示された．
ざくろ石を含む変成岩試料に対し地質温度圧力計 (Hodges and Spear, 1982; Hoisch, 1990) を適用した結果，カリ長石－菫青石帯からの試料において 739°C, 431 MPa，ざくろ石－菫青石帯の試料において754°C, 545 MPaが得られた．電気石消滅アイソグラッド近傍のカリ長石－菫青石帯からの試料の条件は，Kawakami (2004) で示された電気石消滅条件 (>730℃, 400–500 MPa) と調和的な結果である．
角閃石－斜長石地質温度計と角閃石Al圧力計 (Anderson and Smith, 1995; Holland and Blundy, 1994) により勝間石英閃緑岩，日曽利花崗岩，高遠トーナル岩の固結時の圧力としてそれぞれ460 ± 44 MPa, 322 ± 27 MPaおよび365 ± 59 MPa が得られた．
変成岩と花崗岩類の関係について，花崗岩類の年代データも考慮して議論を行う予定である．
[文献]
Anderson, J. L. and Smith, D. R. (1995) Am. Mineral. 80, 549–559.
Hodges, K., V. and Spear, F. S. (1982) Am. Mineral., 67, 1118–1134.
Hoisch, T. D. (1990) Contrib. Mineral. Petrol., 104, 225–234.
Hokada, T. (1998) Island Arc, 7, 609–620.
Holland, T. and Blundy, J. (1994) Contrib. Mineral. Petrol., 116, 433–447.
Kawakami, T. (2004) Trans. R. Soc. Edinburgh: Earth Sci., 95, 111–123.
吉岡拓郎・高木秀雄（2023）日本地質学会第130年学術大会演旨，T2-P-6.
本地域の変成帯は，北部 (高遠地域) において変成度の上昇にともない黒雲母帯，珪線石－カリ長石帯そしてざくろ石－菫青石帯と変化する．それに対し，南部 (駒ヶ根地域) では黒雲母帯からカリ長石－菫青石帯へと変化することが明らかにされている (Hokada, 1998)．全岩XRF分析により，南北地域間において変成岩の化学組成は大きな差異はみられない結果が得られた．南北地域での変成分帯の系列の違いは化学組成によるものではなく，温度圧力条件を反映したものであると考えられる．得られた全岩化学組成を用いてシュードセクション法による解析を行った．MnO-TiO2-Na2O-CaO-K2O-FeO-MgO-Al2O3-SiO2-H2O系について計算を行った結果，北部と南部の鉱物帯の系列にあたる鉱物組み合わせが，~300 MPaよりも高圧側と低圧側でそれぞれ示された．
ざくろ石を含む変成岩試料に対し地質温度圧力計 (Hodges and Spear, 1982; Hoisch, 1990) を適用した結果，カリ長石－菫青石帯からの試料において 739°C, 431 MPa，ざくろ石－菫青石帯の試料において754°C, 545 MPaが得られた．電気石消滅アイソグラッド近傍のカリ長石－菫青石帯からの試料の条件は，Kawakami (2004) で示された電気石消滅条件 (>730℃, 400–500 MPa) と調和的な結果である．
角閃石－斜長石地質温度計と角閃石Al圧力計 (Anderson and Smith, 1995; Holland and Blundy, 1994) により勝間石英閃緑岩，日曽利花崗岩，高遠トーナル岩の固結時の圧力としてそれぞれ460 ± 44 MPa, 322 ± 27 MPaおよび365 ± 59 MPa が得られた．
変成岩と花崗岩類の関係について，花崗岩類の年代データも考慮して議論を行う予定である．
[文献]
Anderson, J. L. and Smith, D. R. (1995) Am. Mineral. 80, 549–559.
Hodges, K., V. and Spear, F. S. (1982) Am. Mineral., 67, 1118–1134.
Hoisch, T. D. (1990) Contrib. Mineral. Petrol., 104, 225–234.
Hokada, T. (1998) Island Arc, 7, 609–620.
Holland, T. and Blundy, J. (1994) Contrib. Mineral. Petrol., 116, 433–447.
Kawakami, T. (2004) Trans. R. Soc. Edinburgh: Earth Sci., 95, 111–123.
吉岡拓郎・高木秀雄（2023）日本地質学会第130年学術大会演旨，T2-P-6.