日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] 口頭発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS03] Seismological advances in the ocean

2024年5月27日(月) 13:45 〜 15:00 国際会議室 (IC) (幕張メッセ国際会議場)

コンビーナ:山谷 里奈(防災科学技術研究所)、利根川 貴志(海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター)、久保田 達矢(国立研究開発法人防災科学技術研究所)、座長:山谷 里奈(防災科学技術研究所)、利根川 貴志(海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター)、久保田 達矢(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

14:15 〜 14:30

[SSS03-03] 2006年10月の月曜海山近傍の地震活動:詳細な震央分布推定による火山活動の示唆

*青山 哲也1竹内 希1青木 陽介1 (1.東京大学地震研究所)

キーワード:海底地震活動、海底火山、波形データ解析

2006年10月に、伊豆小笠原弧にある七曜海山列の一つ、月曜海山の近傍で、海底火山活動にともなうとみられるMw=6.4の海底地震が発生した。そのような中で、月曜海山の近傍を囲むような形で広帯域海底地震計(Broadband Ocean Bottom Seismometer, BBOBS)の観測網が位置していた。通常の火山観測ではあまりない程度の震央距離(100-1000km程度)のデータではあるが、アレイの中に本震が発生したため、適切な手法に基づきこの観測網のデータを解析すれば、詳細な余震分布を決定できることが期待される。Aoyama et al. (2023, JpGU)では、適切な手法開発と予備的な解析結果について報告した。本発表では解析対象イベントを増やし、慎重な到達時刻の読み取りやデータ選別を行い、詳細な余震分布を決定する。また得られた余震分布から、どのような火山活動があったかについて考察する。
気象庁のカタログでは、この地震とおよそ1週間にわたる約30回の余震が記録されていたが、余震分布は極端に東西に広く、本震の規模と大きく乖離していた。このことは初期震源パラメータに大きな不確定性があることが避けられないことを意味する。この地域の詳細な地殻構造は多くの海洋域と同様に不明であり、構造パラメータにも大きな不確定性がある。また海底地震計の波形は複雑で、立ち上がりの読み取りが難しく、かつフェーズの誤同定が多いという問題もある。Aoyama et al. (2023, JpGU)では、海底地震計に記録された波形データに独自に処理を加え、P波の到着時間を高精度に検出する方法(Baillard et al., 2014)を用いた。そして、不確定なパラメータに影響されない情報として適切な相対走時を解析し、他のデータと整合性を可視化し情報をもたらさないデータを外れ値として除外した。これらの特徴的な手法を用い、気象庁の余震に加え、海底地震計に収録されていた一定以上の振幅を記録したイベントも解析対象として、合計約45回の余震の震央を再推定した。
解析の結果、再推定した震央は、月曜海山の山体を取り囲むような形で分布し、かつ、本震から約8時間を境に異なった分布傾向を示した。本震から約8時間経過までは、おもに月曜海山の山体部分にランダムに震央が分布していたが、約8時間が経過した後では、山体の西部のくぼみで集中的に余震が頻発したことが分かった。この結果を海底火山活動と結び付けて考察したところ、本震が起こった後に山体西部にダイクが貫入したことにより、地表付近の応力場が促進され、もともとの正断層メカニズムによる地震をさらに引き起こしやすくなったと考えられる。このような余震を引き起こしやすい応力場が生じたことで、くぼみでの余震頻発につながったと解釈できた。