日本地球惑星科学連合2024年大会

講演情報

[E] ポスター発表

セッション記号 S (固体地球科学) » S-SS 地震学

[S-SS03] Seismological advances in the ocean

2024年5月27日(月) 17:15 〜 18:45 ポスター会場 (幕張メッセ国際展示場 6ホール)

コンビーナ:山谷 里奈(防災科学技術研究所)、利根川 貴志(海洋研究開発機構 地震津波海域観測研究開発センター)、久保田 達矢(国立研究開発法人防災科学技術研究所)

17:15 〜 18:45

[SSS03-P02] 南海トラフ沿いの浅部微動モニタリングと誤検出識別

*溜渕 功史1 (1.気象研究所)

キーワード:浅部微動、T相、機械学習

南海トラフ沿いの海域浅部で発生する微動(以下,浅部微動という)の監視は,海域浅部で発生するスロースリップとその発生期間や領域が密接に関連していることから,海域のスロースリップを把握する一つの手段として重要である.これまで,浅部微動を震源決定するためのハイブリッド法を開発 (Tamaribuchi et al., 2022) し,現在では1時間ごとの更新による準リアルタイム監視を行っている.しかし,2023年9月には浅部微動活動を捉えた一方で,10月には鳥島近海の地震のT相を誤検出するケースが多数あり,遠地地震やT相等による誤決定を低減することが課題となっている.そこで本発表では,Tamaribuchi et al. (2023) の手法を基に,計算された微動カタログの特徴量から,機械学習を用いて微動と誤決定の識別を試みた.
データは,Tamaribuchi et al. (2022) が作成した2016年4月から2021年9月までの浅部微動カタログを用いた.ハイブリッド法で決定された全イベントは40,975個であり,これらを一元化震源カタログと比較して地震を除去し,震源時間差12時間以内,震央距離20km以内に4個以上という条件で抽出した6529個がクラスタリング処理後の微動カタログとして得られた.これらは微動とラベル付けした.微動は数年間隔で1~3か月程度にわたって集中的に発生することから,クラスタリング後の微動が1つ以上ある日と前後1日を除いた残りの全イベント23,127個を誤決定としてラベル付けした.訓練データと評価データは期間で7:3の割合で分割し,2020年10月までを訓練データ (20,964個),2020年11月以降をテストデータ (8,692個) とした.
特徴量として,深さ,緯度,経度,深さの推定誤差,エネルギーレート,最尤値,エンベロープの相関係数の最大値,中央値,見かけ速度の中央値,振幅の最大値,中央値,振幅の最大値と最小値の比,相関係数使用ペア数,振幅使用観測点数の計14個を抽出した.pycaretライブラリ (Ali, 2020) を用いた分類結果によれば,LightGBMが最良モデルとして得られ,学習データに対する正答率 (Accuracy) は0.942,テストデータでは0.827であった.特徴量重要度からは,緯度,経度,深さの推定誤差の値を特に重視している傾向が見られた.
次に,このモデルを用いて,2016年4月1日から2024年2月7日までの微動に対して分類を行った結果,全イベント57668個のうち,9574個が「微動」とラベル付けされた.この結果は,一元化震源との比較やクラスタリングを行わなくても,微動を効率的に抽出することができ,孤立的に発生する微動の特徴を把握するのに役立つ可能性がある.今後,さらに正答率を上げるため,特徴量等の検討を進める予定である.

参考文献
Tamaribuchi, K., M. Ogiso, A. Noda (2022), J Geophys Res, doi:10.1029/2022JB024403
Tamaribuchi, K., S. Kudo, K. Shimojo, F. Hirose (2023), Earth Planets Space, doi: 10.1186/s40623-023-01915-3