11:00 〜 11:15
[SSS05-17] 複雑な断層すべりの再現とその詳細な観察に向けた巨大岩石摩擦実験
★招待講演
キーワード:岩石摩擦実験、大規模実験、断層破壊
地震の本質である断層すべりを室内で再現し,そのメカニズムを理解しようとする摩擦実験がこれまでに数多くおこなわれてきた.その結果,震源核形成やそれに伴う前震活動,断層面の不均質性が地震の準備過程に与える影響など重要な知見が得られたが(例えばDieterich, 1978; Ohnaka et al., 1986; McLaskey and Kilgore, 2013; Yamashita et al., 2021; Xu et al., 2023),自然環境で実際に起こる断層すべりはより複雑であり,更なる調査研究が必要とされている.複雑性の原因の一つは断層面上の摩擦特性や応力分布等の不均質性であると考えられるが,その影響を実験環境で詳しく調べるには大きな空間スケールでの実験が必要となる.そこで我々は既存の試験機に比べさらに大規模な空間スケールで岩石摩擦実験をおこなうことのできる試験機を開発し(山下他,2023),それを用いた実験研究を進めている.
この実験では長さ7.5 m,幅0.5 m,高さ0.75 mの岩石試料の上に,幅及び高さが同一で長さが6.0 mの岩石試料を積み重ね,これらを長手方向に相対変位させている.岩種はインド産変はんれい岩である.接触面(模擬断層面)の大きさは長さ6.0 m × 幅0.5 m = 3 m2であり,その初期表面の凹凸は面全体に渡って50 µm以下になるよう研磨されている.上側試料の上面に6本の油圧ジャッキを使って垂直荷重を加え,低摩擦ローラーに載せた下側試料の側面から別の油圧ジャッキを使ってせん断荷重を加えている.垂直載荷ジャッキ1本あたりの最大載荷重は2 MNであるため,模擬断層面へ与えられる最大垂直応力は4 MPaである.せん断載荷ジャッキの最大載荷重は垂直載荷ジャッキの総最大載荷重と等しい12 MNである.せん断載荷ジャッキの動作は変位制御されており,変位速度は0.01 mm/sから1 mm/sの間で自由に設定可能で,最大変位量は1000 mmである.試験機フレームの剛性は3.6 GN/m以上になるよう設計した.各ジャッキに接続されたロードセルによる巨視的な荷重の測定に加え,断層すべりに伴い発生する局所的な現象を詳細に観察するため,模擬断層面近傍に多数のセンサーを設置している.下側試料には弾性波測定用の圧電素子センサー(オリンパス V103-RM)を64個設置し,上側試料には局所的なひずみを測定するための単軸半導体ひずみゲージ(共和電業 KSN-2-120-E4-11),二軸半導体ひずみゲージ(共和電業 KSN-2-120-F3-11),三軸半導体ひずみゲージ(共和電業 SKS-30282)をそれぞれ44枚設置している.また,FBG(Fiber Bragg Gratings)と呼ばれる光ファイバーひずみ計測センサーを44点設置した.さらに,レーザー変位計(キーエンス IL-S025)を使って上下試料それぞれ8箇所の変位を測定し,その相対値から局所的な相対変位を測定している.
せん断載荷ジャッキのスタート位置(Diniと呼ぶ)を変えながら,垂直応力1 MPaあるいは2 MPa,載荷速度0.01 mm/s,せん断載荷ジャッキ変位量 10 mmの条件で実験をおこなったところ,全ての条件でスティックスリップイベントが発生することを確認した.イベント発生にともなうせん断荷重降下量とロードポイントにおける変位量の比から実験系全体の剛性ksysを計算したところ,Dini = 0 mmの実験では3.8±0.2 GN/mと推定され,設計上のフレーム剛性を上回っていることを確認した.ただし,Diniが大きくなるにつれてksysが下がることも確認され,Dini = 990 mmでは0.4±0.0 GN/mと推定された.これはせん断載荷ジャッキの伸びに伴い,油圧ジャッキ内の剛性が低い油の体積が増えるためと考えられる.ひずみゲージアレイを使った測定によりイベント発生時の断層破壊過程が示され,基本的には模擬断層の一端から始まった破壊が長手方向にユニラテラルに進展していることが明らかとなった.ただし,その破壊が到達する前にもう一方の端からも破壊が開始しており,必ずしも単純な破壊過程ではないことも示されている.今後,弾性波データも含めた解析を進めるとともに,各垂直載荷ジャッキの荷重値を異なる値に設定することで不均質な垂直応力分布を導入し,それが断層すべりに与える影響についても調査を進めていく予定である.
この実験では長さ7.5 m,幅0.5 m,高さ0.75 mの岩石試料の上に,幅及び高さが同一で長さが6.0 mの岩石試料を積み重ね,これらを長手方向に相対変位させている.岩種はインド産変はんれい岩である.接触面(模擬断層面)の大きさは長さ6.0 m × 幅0.5 m = 3 m2であり,その初期表面の凹凸は面全体に渡って50 µm以下になるよう研磨されている.上側試料の上面に6本の油圧ジャッキを使って垂直荷重を加え,低摩擦ローラーに載せた下側試料の側面から別の油圧ジャッキを使ってせん断荷重を加えている.垂直載荷ジャッキ1本あたりの最大載荷重は2 MNであるため,模擬断層面へ与えられる最大垂直応力は4 MPaである.せん断載荷ジャッキの最大載荷重は垂直載荷ジャッキの総最大載荷重と等しい12 MNである.せん断載荷ジャッキの動作は変位制御されており,変位速度は0.01 mm/sから1 mm/sの間で自由に設定可能で,最大変位量は1000 mmである.試験機フレームの剛性は3.6 GN/m以上になるよう設計した.各ジャッキに接続されたロードセルによる巨視的な荷重の測定に加え,断層すべりに伴い発生する局所的な現象を詳細に観察するため,模擬断層面近傍に多数のセンサーを設置している.下側試料には弾性波測定用の圧電素子センサー(オリンパス V103-RM)を64個設置し,上側試料には局所的なひずみを測定するための単軸半導体ひずみゲージ(共和電業 KSN-2-120-E4-11),二軸半導体ひずみゲージ(共和電業 KSN-2-120-F3-11),三軸半導体ひずみゲージ(共和電業 SKS-30282)をそれぞれ44枚設置している.また,FBG(Fiber Bragg Gratings)と呼ばれる光ファイバーひずみ計測センサーを44点設置した.さらに,レーザー変位計(キーエンス IL-S025)を使って上下試料それぞれ8箇所の変位を測定し,その相対値から局所的な相対変位を測定している.
せん断載荷ジャッキのスタート位置(Diniと呼ぶ)を変えながら,垂直応力1 MPaあるいは2 MPa,載荷速度0.01 mm/s,せん断載荷ジャッキ変位量 10 mmの条件で実験をおこなったところ,全ての条件でスティックスリップイベントが発生することを確認した.イベント発生にともなうせん断荷重降下量とロードポイントにおける変位量の比から実験系全体の剛性ksysを計算したところ,Dini = 0 mmの実験では3.8±0.2 GN/mと推定され,設計上のフレーム剛性を上回っていることを確認した.ただし,Diniが大きくなるにつれてksysが下がることも確認され,Dini = 990 mmでは0.4±0.0 GN/mと推定された.これはせん断載荷ジャッキの伸びに伴い,油圧ジャッキ内の剛性が低い油の体積が増えるためと考えられる.ひずみゲージアレイを使った測定によりイベント発生時の断層破壊過程が示され,基本的には模擬断層の一端から始まった破壊が長手方向にユニラテラルに進展していることが明らかとなった.ただし,その破壊が到達する前にもう一方の端からも破壊が開始しており,必ずしも単純な破壊過程ではないことも示されている.今後,弾性波データも含めた解析を進めるとともに,各垂直載荷ジャッキの荷重値を異なる値に設定することで不均質な垂直応力分布を導入し,それが断層すべりに与える影響についても調査を進めていく予定である.
