17:15 〜 18:45
[SSS07-P14] 内部亀裂状態が異なる花崗岩の弾性定数の周波数依存性

キーワード:低周波、弾性定数
背景・目的
地下の岩石の弾性特性は、地震波探査や自然の地震波(0.1 ~ 100 Hz)から推定される。その観測結果から、地下の岩石の種類や空隙率および亀裂分布、応力状態などを推定する際は、室内の弾性波測定(100 k ~ 1 MHz)に基づくことが一般的である。しかし、弾性波の周波数に依存することが知られている岩石の弾性特性を、何桁もかけ離れた周波数帯で比較し物質を推定する際には注意が必要である。例えば、岩石の弾性特性が周波数依存性を示す要因の1つに間隙流体と岩石の相互作用(Mavko & Jizba, 1991)が知られている。このことから、内部亀裂状態がその周波数依存性に影響を与えると考えられ、その性質を調べることを重要である。そこで本研究では、動的応力-ひずみ法を用いて亀裂分布が異なる花崗岩の弾性定数とその周波数依存性を調べることを目的とした。高周波帯(1 MHz)では、AEセンサーを用いた透過法測定により、Vp/Vs比からポアソン比およびヤング率の導出を行った。
実験手法
実験には、庵治花崗岩(香川県産)を直径40 mm、長さ80 mmの円柱形に整形した試料を用いた。はじめに、異なる亀裂分布状態にすることを目的として、未加熱試料(間隙率 0.30%)、550℃に加熱し加熱炉内に静置することで緩やかに冷却した試料(間隙率 1.45%)の2種類を用意した。それぞれの試料について、軸方向に低周波(0.13 ~ 13 Hz)の弾性振動を与え、軸応力および軸・周ひずみを測定した。この測定は、試料の乾燥・飽和状態でそれぞれ行った。試料に弾性振動を与えるために、ピエゾアクチュエーター(ピーアイジャパン社製 P-045.20P)を使用した。ピエゾアクチュエーターへの入力電圧信号には正弦波および矩形波を用いた。測定データの応力および軸・周ひずみの振幅値や周波数スペクトルから、弾性定数の導出を行い、その周波数依存性を調べた。高周波(1 MHz)測定では、AEセンサーを用いた透過法により弾性波速度測定を行った。試料の両底面にAEセンサーの端子を接着させ、周波数1 MHz、電圧10 Vp-p、矩形波の電気信号をAEセンサーに入力し、オシロスコープで岩石を透過した矩形波の波形を確認した。
結果・考察
どちらの飽和試料においてもポアソン比・ヤング率・P波速度と周波数には正の相関が見られた。飽和未加熱試料(間隙率 0.3 %)は周波数が0.13, 1.3, 13 Hzと上がるにつれてヤング率が58.9, 65, 65.7 GPaと増加し、ポアソン比は0.24, 0.26, 0.28と増加した。飽和加熱後試料(間隙率 1.45%)はヤング率が41.5, 41.8, 43.6 GPaと増加、ポアソン比は0.25, 0.28, 0.31と増加した。未加熱試料よりも加熱後試料の方がポアソン比の値が高かったのはPimienta et al. (2018)の結果と矛盾しない。また、これら弾性特性の値の増加は岩石と間隙水の相互作用が働いた可能性を示唆する。この測定では、間隙率の違いと弾性特性の周波数依存性の差は見られなかった。今後は封圧下での測定と内部亀裂状態の観察を考えている。
参考文献
Mavko, G. and Jizba, D.(1991)Estimating grain scale fluid effects on velocity dispersion in rocks. Geophysics, 56, 1940-1949.
Pimienta, L et al.(2018)Anomalous Vp/Vs Ratios at Seismic Frequencies Might Evidence Highly Damaged Rocks in Subduction Zones. Geophysical Research Letters, 45, 12210-12217
地下の岩石の弾性特性は、地震波探査や自然の地震波(0.1 ~ 100 Hz)から推定される。その観測結果から、地下の岩石の種類や空隙率および亀裂分布、応力状態などを推定する際は、室内の弾性波測定(100 k ~ 1 MHz)に基づくことが一般的である。しかし、弾性波の周波数に依存することが知られている岩石の弾性特性を、何桁もかけ離れた周波数帯で比較し物質を推定する際には注意が必要である。例えば、岩石の弾性特性が周波数依存性を示す要因の1つに間隙流体と岩石の相互作用(Mavko & Jizba, 1991)が知られている。このことから、内部亀裂状態がその周波数依存性に影響を与えると考えられ、その性質を調べることを重要である。そこで本研究では、動的応力-ひずみ法を用いて亀裂分布が異なる花崗岩の弾性定数とその周波数依存性を調べることを目的とした。高周波帯(1 MHz)では、AEセンサーを用いた透過法測定により、Vp/Vs比からポアソン比およびヤング率の導出を行った。
実験手法
実験には、庵治花崗岩(香川県産)を直径40 mm、長さ80 mmの円柱形に整形した試料を用いた。はじめに、異なる亀裂分布状態にすることを目的として、未加熱試料(間隙率 0.30%)、550℃に加熱し加熱炉内に静置することで緩やかに冷却した試料(間隙率 1.45%)の2種類を用意した。それぞれの試料について、軸方向に低周波(0.13 ~ 13 Hz)の弾性振動を与え、軸応力および軸・周ひずみを測定した。この測定は、試料の乾燥・飽和状態でそれぞれ行った。試料に弾性振動を与えるために、ピエゾアクチュエーター(ピーアイジャパン社製 P-045.20P)を使用した。ピエゾアクチュエーターへの入力電圧信号には正弦波および矩形波を用いた。測定データの応力および軸・周ひずみの振幅値や周波数スペクトルから、弾性定数の導出を行い、その周波数依存性を調べた。高周波(1 MHz)測定では、AEセンサーを用いた透過法により弾性波速度測定を行った。試料の両底面にAEセンサーの端子を接着させ、周波数1 MHz、電圧10 Vp-p、矩形波の電気信号をAEセンサーに入力し、オシロスコープで岩石を透過した矩形波の波形を確認した。
結果・考察
どちらの飽和試料においてもポアソン比・ヤング率・P波速度と周波数には正の相関が見られた。飽和未加熱試料(間隙率 0.3 %)は周波数が0.13, 1.3, 13 Hzと上がるにつれてヤング率が58.9, 65, 65.7 GPaと増加し、ポアソン比は0.24, 0.26, 0.28と増加した。飽和加熱後試料(間隙率 1.45%)はヤング率が41.5, 41.8, 43.6 GPaと増加、ポアソン比は0.25, 0.28, 0.31と増加した。未加熱試料よりも加熱後試料の方がポアソン比の値が高かったのはPimienta et al. (2018)の結果と矛盾しない。また、これら弾性特性の値の増加は岩石と間隙水の相互作用が働いた可能性を示唆する。この測定では、間隙率の違いと弾性特性の周波数依存性の差は見られなかった。今後は封圧下での測定と内部亀裂状態の観察を考えている。
参考文献
Mavko, G. and Jizba, D.(1991)Estimating grain scale fluid effects on velocity dispersion in rocks. Geophysics, 56, 1940-1949.
Pimienta, L et al.(2018)Anomalous Vp/Vs Ratios at Seismic Frequencies Might Evidence Highly Damaged Rocks in Subduction Zones. Geophysical Research Letters, 45, 12210-12217