[S-SS08] 地震活動とその物理

[SSS08-P03] B-positive推定の従来法との比較: 日本列島周辺におけるマグニチュード７級地震の余震での例

*三井 雄太¹ (1.静岡大学理学部地球科学科)

キーワード：B-positive、Gutenberg-Richter則、余震

地震のマグニチュード頻度分布が従うGutenberg-Richter則のb値(べき指数)を推定するため、カットオフマグニチュードMc以上の地震を用いた最尤法(宇津, 1965; Aki, 1965)が長く用いられてきた。この手法(従来法)では、Mcの値がb値の推定結果に大きく影響を与える。そのため、Mcをより精度良く決定する方法に関する多くの研究が行われてきた(e.g., Wiemer and Wyss, 2000; Mignan and Woessner, 2012)。一方、最近の研究(van der Elst, 2021)で、マグニチュードの差の頻度分布に基づく新たな手法が提案された。この手法(b-positive)では、Mcが存在しないため、よりロバストなb値の推定が可能とされている。

本研究では、気象庁の震源カタログを用いて、日本列島周辺で発生したマグニチュード7級地震25個を本震とみなし、各々のマグニチュード2以上の余震をテストケースとした。B-positiveと従来法に基づくb値推定を行い、結果を比較した。従来法として、マグニチュードの累積頻度分布(片対数)への直線回帰の当てはまり度合いからMcを決定するWiemer and Wyss (2000)の方法を採用した。余震の時間範囲として、本震後10日間および本震後1000日間の2種類をテストした。

テストの結果、b-positiveによる推定値が従来法の推定値に比べて、約0.0～0.2高くなる傾向が明らかになった。さらに、b-positiveと従来法それぞれについて、本震後10日間および本震後1000日間の推定結果同士にどの程度の相関があるかを調べた。B-positiveの場合は相関係数0.95、従来法の場合は相関係数0.69となっており、b-positiveのほうが従来法よりも余震の時間範囲の選択に影響を受けにくい推定となっていた。このことは、従来法のようにMcを都度推定しないb-positiveの解のロバスト性を示している。しかし、従来法より系統的に高くなったb-positiveの解がより現実に近いものとなっているかは別問題であるため、さらなる精査が必要である。