17:15 〜 18:45
[SSS08-P11] Matched Filter法で抽出した沖縄トラフ群発地震の時空間変化

キーワード:沖縄トラフ、群発地震、b 値、テクトニクス、ダイク貫入
沖縄トラフは琉球弧の北西に位置する活発な背弧海盆であり、しばしば群発地震が発生している。沖縄トラフの群発地震活動はトラフ中軸付近に集中し、沖縄トラフの南部と中部で群発地震の活動パターンが異なる。南部では群発地震域が時間とともに東西方向に拡大する傾向が見られる。いっぽう、中部ではそのような現象はほとんど見られない。また、群発地震が特に活発な地域は、過去20年間で同じ領域に集中している傾向がある。活動はほとんどの場合2、3日で収束する。しかし活動が1週間以上、あるいは1年近く継続する場合もある。
群発地震の活動の推移を見るためにはより多くの地震活動を捉える必要がある。しかし沖縄トラフで群発地震が発生した場合、一時的に検知能力が低下する(Nakamura, 2022)。そこでMatched filter法を用いて群発地震発生時に震源決定されていないイベントを検出した。2002年から2022年にかけて、沖縄トラフのリフト軸周辺で発生した主な群発地震について、気象庁のカタログにある地震データをテンプレートとして使用し、イベントの検出を行った。群発地震発生域の周辺域にある複数観測点の水平動成分の連続波形に対し、テンプレート地震のS波と連続波形との相関を計算した。相関はS波読み取り時刻のプラスマイナス2.0秒間を用いた。波形にはBandpass filter 2.0 – 4.0 Hz をかけた。検出閾値は絶対標準偏差の13倍とした。地震活動の移動が見られる場合は、Rivalta (2010)の式を採用し、地震活動の移動にあった時定数および最終移動距離を求めた。これはダイク貫入によって群発地震活動域が指数関数的に拡大するモデルである。
解析の結果、全ての群発地震で、気象庁カタログに掲載されているイベントを含めて、気象庁カタログの約2-3倍の地震を検出することができた。完全性マグニチュード(Mc)が一時的に増加した2002年石垣島北部と2013年与那国近海でもMc値がそれぞれ3.2および2.0まで下がり、検知能力が向上した。また、2013年与那国近海と2014年奄美大島近海の群発地震では地震発生領域が時間と共に大きく拡大する現象が確認された。群発地震の始まりの地点を拡大開始点として、Rivalta (2010)の式にあう時定数と最終移動距離を求めた。その結果、2013年の与那国近海の群発地震では、地震活動が北東-南西方向に長さ約26±0.3kmにわたって広がった。北東方向および南西方向への移動速度はそれぞれ約0.55km/hおよび約1.54km/hであった。時定数はそれぞれ約6.5±0.5hおよび約5.5±1.0hであった。2014年の奄美大島近海の群発地震では、地震活動が南東方向に長さ約10±0.2kmにわたって広がった。南東方向への移動速度および時定数は約0.60km/hおよび約5±0.5hであった。
これらは、Icelandでの1978年の群発地震活動で見られた移動距離と移動速度(33.1 ±2.3 km、12.3±2.3h)およびAfarでの2回の群発地震活動で見られた移動距離と移動速度(1回目:8.0 ±1.0 kmおよび1.5±0.5h、2回目:10.9 ±1.3 kmおよび3.2±1.2h)と類似している。一方、群発地震の移動を流体の拡散であるとして、Shapiro et al. (1997)の式で拡散係数を求めると、807.2となる。これは非火山性の群発地震で求められた拡散係数よりも大きい。このことから、沖縄トラフ中部・南部の群発地震活動はダイク貫入によるマグマ移動に伴って発生している可能性があると考えられる。群発地震で放出された地震モーメント(最大地震はMw5.4)よりも大きな地殻変動(断層運動でMw6.9相当)が観測されたこと(Nakamura and Kinjo, 2018;Tu and Heki, 2017 )も、マグマ貫入の影響を示唆している。
群発地震の活動の推移を見るためにはより多くの地震活動を捉える必要がある。しかし沖縄トラフで群発地震が発生した場合、一時的に検知能力が低下する(Nakamura, 2022)。そこでMatched filter法を用いて群発地震発生時に震源決定されていないイベントを検出した。2002年から2022年にかけて、沖縄トラフのリフト軸周辺で発生した主な群発地震について、気象庁のカタログにある地震データをテンプレートとして使用し、イベントの検出を行った。群発地震発生域の周辺域にある複数観測点の水平動成分の連続波形に対し、テンプレート地震のS波と連続波形との相関を計算した。相関はS波読み取り時刻のプラスマイナス2.0秒間を用いた。波形にはBandpass filter 2.0 – 4.0 Hz をかけた。検出閾値は絶対標準偏差の13倍とした。地震活動の移動が見られる場合は、Rivalta (2010)の式を採用し、地震活動の移動にあった時定数および最終移動距離を求めた。これはダイク貫入によって群発地震活動域が指数関数的に拡大するモデルである。
解析の結果、全ての群発地震で、気象庁カタログに掲載されているイベントを含めて、気象庁カタログの約2-3倍の地震を検出することができた。完全性マグニチュード(Mc)が一時的に増加した2002年石垣島北部と2013年与那国近海でもMc値がそれぞれ3.2および2.0まで下がり、検知能力が向上した。また、2013年与那国近海と2014年奄美大島近海の群発地震では地震発生領域が時間と共に大きく拡大する現象が確認された。群発地震の始まりの地点を拡大開始点として、Rivalta (2010)の式にあう時定数と最終移動距離を求めた。その結果、2013年の与那国近海の群発地震では、地震活動が北東-南西方向に長さ約26±0.3kmにわたって広がった。北東方向および南西方向への移動速度はそれぞれ約0.55km/hおよび約1.54km/hであった。時定数はそれぞれ約6.5±0.5hおよび約5.5±1.0hであった。2014年の奄美大島近海の群発地震では、地震活動が南東方向に長さ約10±0.2kmにわたって広がった。南東方向への移動速度および時定数は約0.60km/hおよび約5±0.5hであった。
これらは、Icelandでの1978年の群発地震活動で見られた移動距離と移動速度(33.1 ±2.3 km、12.3±2.3h)およびAfarでの2回の群発地震活動で見られた移動距離と移動速度(1回目:8.0 ±1.0 kmおよび1.5±0.5h、2回目:10.9 ±1.3 kmおよび3.2±1.2h)と類似している。一方、群発地震の移動を流体の拡散であるとして、Shapiro et al. (1997)の式で拡散係数を求めると、807.2となる。これは非火山性の群発地震で求められた拡散係数よりも大きい。このことから、沖縄トラフ中部・南部の群発地震活動はダイク貫入によるマグマ移動に伴って発生している可能性があると考えられる。群発地震で放出された地震モーメント(最大地震はMw5.4)よりも大きな地殻変動(断層運動でMw6.9相当)が観測されたこと(Nakamura and Kinjo, 2018;Tu and Heki, 2017 )も、マグマ貫入の影響を示唆している。