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[SSS09-P09] 海底地震計を用いた地震探査による熊野灘沖の地震波速度構造

キーワード:南海トラフ、地震探査、スロー地震、走時トモグラフィー
南海トラフでは様々なタイプのスロー地震が発生している。このうち、超低周波地震(VLFE)や低周波微動(LFT)は、地震発生帯よりも深部のプレート境界面沿いで発生するだけでなく、海溝付近の浅部でも発生していることが近年の海底観測から明らかとなった。熊野灘沖における浅部VLFEの地震分布は一様ではなく、中部から西部にかけて集中して発生し、東部での発生は数少ない。(Takemura et al.,2023)。海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、熊野灘沖周辺のVLFEの非活動域と地下構造の関係を明らかにするため、2022年に海底地震計(OBS) を用いた屈折法・広角反射法地震探査(OBS 探査)を実施した。この測線は、2006年に実施した探査測線の一部と重複しており、今回の探査データと統合することによって、トラフ軸付近から陸側では1.3km間隔のデータセットを構築した。OBSに記録された地震波データの解析には走時トモグラフィー(Fujie et al, 2006, 2013)を用いた。走時トモグラフィーの初期モデルは、南海トラフ中部の既存研究(Qin et al.,2020)を参照して構築した。これまでのところ、トラフ陸側50km程度、深さ9km程度まで広がる上盤側の低速度域(P波速度4km/s)、沈み込む海洋マントルを示す陸側に傾斜したP波速度8km/sの速度領域などが確認できた。読み取り走時と計算走時の走時残差の二乗平均平方根は、初期モデルは230.3(ms)であったが、最終モデルは86.6(ms)となった。今後は、広角反射波などを用いてより詳細な速度構造モデルを構築し、反射法地震探査データと比較することにより、沈み込む海洋プレート上面の形状や上盤側の不均質構造等を求め、本調査領域の地下構造とスロー地震活動の関係を議論する。