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[SSS11-07] 常時微動計測から知る宮野原断層の地震防災的な特徴
キーワード:宮野原断層、常時微動計測、2011年長野県北部の地震、地震被害
2011年長野県北部地震では、長野県栄村や新潟県津南町、十日町市松之山地区を中心に建物被害や斜面崩壊等が集中して甚大な被害が発生した。これらの被害は、地震を発生させた震源断層の上盤側に集中していた。甚大な建物被害は栄村の森・青倉・横倉の集落に集中していたが、このエリアは干渉SAR画像を見ると主地震と最大余震の地殻変動の境界部にあたり、主地震の1時間後に発生した最大余震の影響が大きかったことが示唆される。一方、津南町の建物被害については栄村ほどの甚大被害の集中域は少なかったが、貝坂面相当の段丘面に存在し今回の震源断層では無かった宮野原断層周辺で建物被害が集中しており、地震後の現地調査でも宮野原断層沿いで重力性の地表変状が集中していた(中埜ほか,2013)。規模の大きな活断層地震が発生した時に、その周辺にある活動しなかった活断層(地質断層)での地震リスクを評価することの重要性を示しており、津南町の段丘面や宮野原断層周辺で常時微動計測を行い、地盤構造の視点から宮野原断層の地震防災リスクを検討した。特に宮野原断層では、産業技術総合研究所(以下「産総研」)が断層線に直交する方向に群列ボーリングを実施しており、同じ場所でボーリングよりも高密度に常時微動計測を実施した。なお、宮野原断層は都市圏活断層図「津南」では推定活断層とされており、田力・越後(2022)では重力性の地すべり地形の可能性を指摘している。
信濃川河岸沿いの地質調査を行ったが、段丘堆積物の基盤岩は火山角礫岩を主体とする火山砕屑堆積物であり、段丘礫層の上端の深度は、S波速度が300m/s付近でS波速度が急上昇する深度に概ね一致した。また、産総研の群列ボーリングでは1本が段丘礫層に到達していたが、その深度がS波速度が300m/s付近でS波速度が急上昇する深度に一致した。そのため、本研究ではS波速度300m/sに達する深度を基盤深度とし,段丘礫層の上端と推定した。全観測点のAVS30(深度30mまでの平均S波速度)と基盤深度の関係を見ると、宮野原断層周辺は他の津南町の計測点と比べてAVS30が小さく基盤深度が深く、明らかに地盤強度が良くない結果であった。ローム層の厚い貝坂面や朴ノ木坂面での常時微動ではAVS30が低位段丘の結果と大きくは変わらなかったので、宮野原断層周辺全体でAVS30が小さいのは基盤岩の影響と考える。実際に宮野原断層と直交する沢の地質調査では破砕帯を確認しており、シュミットハンマーを用いた岩盤強度計測でも、信濃川河岸の露頭ではR値が計測されたのに対し、宮野原断層の破砕帯周辺ではR値が計測されなかった(岩盤強度が小さく計測不能)。
宮野原断層に直交した群列計測の結果から、段丘礫層上端の明らかな変位が2箇所で確認できた。北側の変位は約5mであり、位置は現地で確認できる低断層崖の位置と概ね一致する。南側の変位は約7mで北側の変位よりは大きく、地形的には大きな変位は認められない。段丘の形成年代を貝坂面相当が約5万年前と仮定して断層の平均変位速度を計算すると、北側の変位が0.11m/千年、南側の変位が0.14m/千年となる。産総研(2016)では0.13~0.14m/千年としており、北側の変位として見た場合には概ね一致する。今回の常時微微動計測で新たに南側の礫層上端の変位が確認されたので、それも宮野原断層の活動に起因すると考えると、地形痕跡では確認されなかった変位が加わり、平均変位速度を大きめに見積もる必要があるのかもしれない。また、宮野原断層の南側(低下側)に全壊建物が複数戸認められたが、一番南の計測点ではS波速度が200m/s以下の地層が浅層に10m以上も存在しており、非常に軟弱な地盤であった。南側の礫層変位よりは南側の地点の堆積物の特徴は、その北側とは大きく変わってきており、断層の低下側に軟弱な堆積物が厚く堆積する地盤リスク(地震防災リスク)を示唆している。
本研究は、茨城大学と防災科学技術研究所との共同研究協定に基づくもので、中島の修士研究成果の一部と小荒井の国土地理院客員研究員の研究成果の一部である。現地調査費の一部には、茨城大学GLECと国文学研究資料館との共同研究費を使用している。
引用文献
田力正好・越後智雄(2022)活断層研究,56,33~46.
中埜貴元ほか(2013)国土地理院時報,123,35-48.
国土地理院(2022)1/25,000都市圏活断層図「津南」
産業技術総合研究所(2016)平成27年「活断層の補完調査」成果報告書 十日町断層
信濃川河岸沿いの地質調査を行ったが、段丘堆積物の基盤岩は火山角礫岩を主体とする火山砕屑堆積物であり、段丘礫層の上端の深度は、S波速度が300m/s付近でS波速度が急上昇する深度に概ね一致した。また、産総研の群列ボーリングでは1本が段丘礫層に到達していたが、その深度がS波速度が300m/s付近でS波速度が急上昇する深度に一致した。そのため、本研究ではS波速度300m/sに達する深度を基盤深度とし,段丘礫層の上端と推定した。全観測点のAVS30(深度30mまでの平均S波速度)と基盤深度の関係を見ると、宮野原断層周辺は他の津南町の計測点と比べてAVS30が小さく基盤深度が深く、明らかに地盤強度が良くない結果であった。ローム層の厚い貝坂面や朴ノ木坂面での常時微動ではAVS30が低位段丘の結果と大きくは変わらなかったので、宮野原断層周辺全体でAVS30が小さいのは基盤岩の影響と考える。実際に宮野原断層と直交する沢の地質調査では破砕帯を確認しており、シュミットハンマーを用いた岩盤強度計測でも、信濃川河岸の露頭ではR値が計測されたのに対し、宮野原断層の破砕帯周辺ではR値が計測されなかった(岩盤強度が小さく計測不能)。
宮野原断層に直交した群列計測の結果から、段丘礫層上端の明らかな変位が2箇所で確認できた。北側の変位は約5mであり、位置は現地で確認できる低断層崖の位置と概ね一致する。南側の変位は約7mで北側の変位よりは大きく、地形的には大きな変位は認められない。段丘の形成年代を貝坂面相当が約5万年前と仮定して断層の平均変位速度を計算すると、北側の変位が0.11m/千年、南側の変位が0.14m/千年となる。産総研(2016)では0.13~0.14m/千年としており、北側の変位として見た場合には概ね一致する。今回の常時微微動計測で新たに南側の礫層上端の変位が確認されたので、それも宮野原断層の活動に起因すると考えると、地形痕跡では確認されなかった変位が加わり、平均変位速度を大きめに見積もる必要があるのかもしれない。また、宮野原断層の南側(低下側)に全壊建物が複数戸認められたが、一番南の計測点ではS波速度が200m/s以下の地層が浅層に10m以上も存在しており、非常に軟弱な地盤であった。南側の礫層変位よりは南側の地点の堆積物の特徴は、その北側とは大きく変わってきており、断層の低下側に軟弱な堆積物が厚く堆積する地盤リスク(地震防災リスク)を示唆している。
本研究は、茨城大学と防災科学技術研究所との共同研究協定に基づくもので、中島の修士研究成果の一部と小荒井の国土地理院客員研究員の研究成果の一部である。現地調査費の一部には、茨城大学GLECと国文学研究資料館との共同研究費を使用している。
引用文献
田力正好・越後智雄(2022)活断層研究,56,33~46.
中埜貴元ほか(2013)国土地理院時報,123,35-48.
国土地理院(2022)1/25,000都市圏活断層図「津南」
産業技術総合研究所(2016)平成27年「活断層の補完調査」成果報告書 十日町断層