17:15 〜 18:45
[SSS11-P12] 産総研活断層データベースを用いた活動性パラメータ間の関係と平均変位速度分布
キーワード:活断層、活断層データベース、平均変位速度分布、断層変位
マグニチュード7前後以上の地殻内大地震では地表に地震断層が現れる。そのような地表断層変位によって建物の損壊・倒壊なども多数報告されている(例えば、久田ほか,2020)。そのため,活断層の詳細位置と地震時の変位量を正確に予測することは防災対策に不可欠である。空中写真判読などによって変動地形学的に断層位置を特定することに加え,想定される断層沿いの地震時変位量分布の把握も重要となる。地震による地表変位は数万年〜数百万年といった超長期の断層の成長プロセスと密接に関連することが知られている。特に,近年,活断層沿いの地震時すべりと長期累積変位量の分布が不均一な三角形の形状となることが示され注目されている(例えば,Manigetthi et al., 2005)。
日本では地震断層のスケーリング則を研究した例はあるが,活断層の諸パラメータを包括的に解析した研究例は少ない。特に,全国単位で活断層の変位分布形状の特徴についてまとめられた研究はほとんどない。一方で,日本全国に分布する活断層等の情報を1箇所にコンパイルしたものとして,産業技術総合研究所(AIST)の活断層データベース(DB)が挙げられ,これを利用することによって日本全国の活断層を一律の評価軸で分析をすることが可能である。
本研究では,活断層DB内のデータをテキストマイニング等によって編集・分析した。まず,活動セグメントに対して値が一つ算出されている活動性パラメータである代表値の関係について分析を行った。その結果,平均変位速度,地震時変位量,断層長の間に強い相関はなかった。一方で断層長と地震時変位量の間には,回帰直線周辺に粟田(1999)で示されたスケーリング関係を反映した傾向が見られた。このうち,経験式によって算出されたと考えられるデータを除去した実測値に基づく分布では,除去前より緩やかな傾きの回帰直線となることが分かった。
次に,編集した調査地のデータを用いて日本全国の活動セグメントの平均変位速度の分布形状を検討した。データ解析可能な断層について断層長を正規化し重ね合わせた。ここでは,(1)変位速度の大きな地点を強く反映する平均変位速度を用いた分布と,(2)全国的な平均分布形状を反映させて正規化した場合の分布の2種類を作成した。
(1)鉛直変位の場合,活動セグメント端からセグメント全長の41%の位置に平均変位速度が0.3 [m/kyr]で最大となる三角形形状をとった。したがって,平均変位速度の大きな地点は,活動セグメントの中央付近に集中する。横ずれ水平変位の場合,活動セグメント端からセグメント全長の11%の位置で最大の平均変位速度1.3 [m/kyr]となり,44%の位置でも1.2 [m/kyr]となる2つのピークがあった。そして,中央からもう一方の端点まで線形的に減少する形状をとった。つまり,平均変位速度の大きな地点は,活動セグメントの端と中央付近に偏って分布する。
(2)鉛直変位の場合,活動セグメント端からセグメント全長の30%の位置に平均変位速度が0.3 で最大となり,端から中心付近まで大きな値をとり続け,線形的に減少する形状をとった。すなわち,最大値を示す地点は活動セグメントの端から中央に向かって分布し,偏った分布であった。横ずれ水平変位の場合,活動セグメント端からセグメント全長の12%の位置に平均変位速度が0.34で最大の三角形形状をとった。したがって,端点付近で最大値をとる活動セグメントが多く,Manigetthi et al. (2005)が指摘したような偏りの大きな三角形形状になる。
本研究で用いたデータはこれまでの調査量に依存する部分が大きく,数値情報がない活動セグメントや少ない活動セグメントでは分析が十分でないと考えられる。したがって今後はこうした断層の調査を行い,データ数を増やしてより高精度にしていく必要がある。
日本では地震断層のスケーリング則を研究した例はあるが,活断層の諸パラメータを包括的に解析した研究例は少ない。特に,全国単位で活断層の変位分布形状の特徴についてまとめられた研究はほとんどない。一方で,日本全国に分布する活断層等の情報を1箇所にコンパイルしたものとして,産業技術総合研究所(AIST)の活断層データベース(DB)が挙げられ,これを利用することによって日本全国の活断層を一律の評価軸で分析をすることが可能である。
本研究では,活断層DB内のデータをテキストマイニング等によって編集・分析した。まず,活動セグメントに対して値が一つ算出されている活動性パラメータである代表値の関係について分析を行った。その結果,平均変位速度,地震時変位量,断層長の間に強い相関はなかった。一方で断層長と地震時変位量の間には,回帰直線周辺に粟田(1999)で示されたスケーリング関係を反映した傾向が見られた。このうち,経験式によって算出されたと考えられるデータを除去した実測値に基づく分布では,除去前より緩やかな傾きの回帰直線となることが分かった。
次に,編集した調査地のデータを用いて日本全国の活動セグメントの平均変位速度の分布形状を検討した。データ解析可能な断層について断層長を正規化し重ね合わせた。ここでは,(1)変位速度の大きな地点を強く反映する平均変位速度を用いた分布と,(2)全国的な平均分布形状を反映させて正規化した場合の分布の2種類を作成した。
(1)鉛直変位の場合,活動セグメント端からセグメント全長の41%の位置に平均変位速度が0.3 [m/kyr]で最大となる三角形形状をとった。したがって,平均変位速度の大きな地点は,活動セグメントの中央付近に集中する。横ずれ水平変位の場合,活動セグメント端からセグメント全長の11%の位置で最大の平均変位速度1.3 [m/kyr]となり,44%の位置でも1.2 [m/kyr]となる2つのピークがあった。そして,中央からもう一方の端点まで線形的に減少する形状をとった。つまり,平均変位速度の大きな地点は,活動セグメントの端と中央付近に偏って分布する。
(2)鉛直変位の場合,活動セグメント端からセグメント全長の30%の位置に平均変位速度が0.3 で最大となり,端から中心付近まで大きな値をとり続け,線形的に減少する形状をとった。すなわち,最大値を示す地点は活動セグメントの端から中央に向かって分布し,偏った分布であった。横ずれ水平変位の場合,活動セグメント端からセグメント全長の12%の位置に平均変位速度が0.34で最大の三角形形状をとった。したがって,端点付近で最大値をとる活動セグメントが多く,Manigetthi et al. (2005)が指摘したような偏りの大きな三角形形状になる。
本研究で用いたデータはこれまでの調査量に依存する部分が大きく,数値情報がない活動セグメントや少ない活動セグメントでは分析が十分でないと考えられる。したがって今後はこうした断層の調査を行い,データ数を増やしてより高精度にしていく必要がある。