17:15 〜 18:45
[STT34-P03] ドローン空中磁気測量による十勝岳の地下浅部の磁化構造の推定

キーワード:空中磁気測量、ドローン、十勝岳
十勝岳は,北海道中央高地の大雪-十勝火山列の南西端に位置する活火山である.有史以降では1857年,1887年,1926-28年,1962年,1988-89年にマグマ噴火が発生しており,その間隔は30~40年である.最後のマグマ噴火から35年経った現在,近い将来の噴火が懸念されている.
十勝岳では2008年以降,地磁気全磁力の繰り返し観測が行われており,初期の解析結果では62-Ⅱ火口直下の深さ150mに熱消磁源が推定された(橋本ほか, 2010).その後も消磁傾向は続いており,高温域がごく浅部で進行していることが示唆される.加えて,前十勝(62-Ⅱ火口の西北西側)の標高1,600m付近において確認されている温度異常域の拡大から,平ヶ岳溶岩の層理面に沿った熱水変質の進行が想像される(橋本ほか, 火山学会2023).そこで,本研究では,62-Ⅱ火口周辺の地下浅部の熱活動を明らかにするために,2023年8月にドローン空中磁気測量を実施した.
本研究では,DJI 社製ドローンMatrice 300 RTKにGEM system社製ポタシウム磁力計 GSMP-25U(テラテクニカ社所有)を搭載し,飛行速度5m/s,サンプリング間隔0.05秒で全磁力測定を行った.観測範囲は62-Ⅱ火口や振子沢噴気孔群,前十勝の地熱異常域などを含むNW-SE約1.5km,NE-SW約1.3kmの範囲で,測線間隔は約100mとした.地磁気の日変化を補正するため,北北西に約8km離れた参照点(白金模範牧場)でGEM system社製オーバーハウザー磁力計GSM-19を用いて全磁力を測定し,空中の測定値から参照点の測定値を差し引いた.ドローンの操縦についてはDJI Pilot2のマッピング飛行を利用し,離発着時以外は自動で行なった.また,対地高度についてはDJI Pilot2の地形フォロー機能を利用し,国土地理院が提供している5mメッシュの数値標高モデル(DEM)データとの対地高度が149mで一定となるように設定した.
Koyama et al. (2021)のインバージョンコードを利用し,得られた全磁力異常データから三次元磁化強度を分布を推定した.計算領域は水平2×2km2,鉛直2km (200m, 400m, 600m, 800mの4層)とした.推定された平均磁化強度は約2 A/mであった.インバージョンの目的関数におけるデータmisfit項とモデルのroughness項とのバランスをとるハイパーパラメータの値はABIC最小化(Akaike, 1980)を用いて決定した.推定されたモデルでは62-Ⅱ火口周辺から北側の大正火口周辺にかけて低磁化領域の広がりが見られた.低磁化領域の分布は主要な噴気位置と整合的な結果となった.また,62-Ⅱ火口北西側の標高1,550m付近には弱磁化領域が存在しており,温度異常域との関係が示唆される.
謝辞:
本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の支援を受けました.
十勝岳では2008年以降,地磁気全磁力の繰り返し観測が行われており,初期の解析結果では62-Ⅱ火口直下の深さ150mに熱消磁源が推定された(橋本ほか, 2010).その後も消磁傾向は続いており,高温域がごく浅部で進行していることが示唆される.加えて,前十勝(62-Ⅱ火口の西北西側)の標高1,600m付近において確認されている温度異常域の拡大から,平ヶ岳溶岩の層理面に沿った熱水変質の進行が想像される(橋本ほか, 火山学会2023).そこで,本研究では,62-Ⅱ火口周辺の地下浅部の熱活動を明らかにするために,2023年8月にドローン空中磁気測量を実施した.
本研究では,DJI 社製ドローンMatrice 300 RTKにGEM system社製ポタシウム磁力計 GSMP-25U(テラテクニカ社所有)を搭載し,飛行速度5m/s,サンプリング間隔0.05秒で全磁力測定を行った.観測範囲は62-Ⅱ火口や振子沢噴気孔群,前十勝の地熱異常域などを含むNW-SE約1.5km,NE-SW約1.3kmの範囲で,測線間隔は約100mとした.地磁気の日変化を補正するため,北北西に約8km離れた参照点(白金模範牧場)でGEM system社製オーバーハウザー磁力計GSM-19を用いて全磁力を測定し,空中の測定値から参照点の測定値を差し引いた.ドローンの操縦についてはDJI Pilot2のマッピング飛行を利用し,離発着時以外は自動で行なった.また,対地高度についてはDJI Pilot2の地形フォロー機能を利用し,国土地理院が提供している5mメッシュの数値標高モデル(DEM)データとの対地高度が149mで一定となるように設定した.
Koyama et al. (2021)のインバージョンコードを利用し,得られた全磁力異常データから三次元磁化強度を分布を推定した.計算領域は水平2×2km2,鉛直2km (200m, 400m, 600m, 800mの4層)とした.推定された平均磁化強度は約2 A/mであった.インバージョンの目的関数におけるデータmisfit項とモデルのroughness項とのバランスをとるハイパーパラメータの値はABIC最小化(Akaike, 1980)を用いて決定した.推定されたモデルでは62-Ⅱ火口周辺から北側の大正火口周辺にかけて低磁化領域の広がりが見られた.低磁化領域の分布は主要な噴気位置と整合的な結果となった.また,62-Ⅱ火口北西側の標高1,550m付近には弱磁化領域が存在しており,温度異常域との関係が示唆される.
謝辞:
本研究は文部科学省による「災害の軽減に貢献するための地震火山観測研究計画」の支援を受けました.