09:15 〜 09:30
[STT36-02] 分布型音響センシングのデータを用いた自動震源決定による津軽海峡の地震活動モニタリング
キーワード:分布型音響センシング、津軽海峡
巨大地震の震源域の大部分は海域に位置するため、海域の地震活動をモニタリングすることは重要な課題であるが、海域は定常的な観測点が少ないため地震の検出や震源決定が難しく、海域の地震のモニタリングの精度は陸域と比較すると低いと考えられる。近年、光ファイバーケーブルを用いた分布型音響センシング(DAS)とよばれる技術が、地震観測や構造探査に使われるようになっている。DASは、光ファイバーケーブルに沿って数mおきに歪もしくは歪速度の時間変化を計測できるため、空間的に密な観測が可能である。さらに、既存の海底光ファイバーケーブルを利用できるため設置のコストが低く、測器を陸に設置するためリアルタイムでのデータ確認が容易である。そのため、海域の地震のモニタリングにDAS観測は有用であると考えられる。本研究では、津軽海峡の地震活動のモニタリングを目的として、DAS観測データを用いた自動でのP波・S波の到達時刻読み取りおよび震源決定システムの構築を目指し、津軽海峡の海底ケーブルを用いてAP Sensing社のモデルによるDAS観測を行った。
DAS観測は、2023年6月26日から2023年10月17日までの約4ヶ月で行った。DASの歪速度波形を用いて、深層学習モデルPhaseNet(Zhu and Beroza, 2018)によるP波およびS波の到達時刻読み取りを行った。PhaseNetによる到達時刻読み取りは、DASデータの取得後リアルタイムで行った。到達時刻読み取りには、PhaseNetのデフォルトモデルに、過去のDAS観測データで得られた津軽海峡の地震のDAS波形データを学習させたモデルを用いた。P波・S波の読み取り後、震源決定プログラムhypomh(Hirata and Matsu’ura, 1987)を用いた自動震源決定を行い、震源決定結果を機構に伝送するシステムを構築した。
ケーブルから数 km以内で発生した地震については、DASデータを使って決められた震央は気象庁地震カタログと概ね5 km程度未満の差であった。ケーブルから20 km以内に発生した地震については、DASデータを使って決められた震央は気象庁地震カタログと10 km程度未満の差で震央を決めることができた。このことは、ケーブル近傍の地震の震源はDASのみで決めることができることを示唆する。ケーブルから20 km以上離れたところで発生した地震の震源決定結果は、気象庁地震カタログと東西方向の差がかなり大きくなっていた。これは、ケーブルが主に南北方向に延びており、東西方向の誤差が大きくなったためと考えられる。DASで観測できた気象庁地震カタログに掲載済の地震について、地震予知総合研究振興会の観測網(AS-net、Noguchi et al., 2017)のデータと併用して震源決定を行ったところ、DASデータを使って決めた震源と気象庁地震カタログとの東西方向の差が大きかったイベントについて、気象庁カタログの震央との差が数 km程度まで小さくなった。このことから、ケーブルから少し離れたイベントを高い精度で震源決定するためには、陸域の定常的な地震観測網のデータと併用した解析が有用であると考えられる。
4ヶ月の観測で気象庁地震カタログに掲載のない地震が、約25個検出および震源決定できた。これらの地震は、主に津軽海峡内部で発生したマグニチュード0クラスの地震で、震源は数 kmから10 km程度である。これらの地震のシグナルは、津軽海峡内の狭い範囲にしか見えていないため、気象庁地震カタログでシグナルの検知もしくは震源決定ができなかったものと考えられる。今後は、DASデータによる地震の自動検出・震源決定能力の既存のカタログとの比較や、決定した震源に基づく津軽海峡の地震活動についての考察を進めていく。
DAS観測は、2023年6月26日から2023年10月17日までの約4ヶ月で行った。DASの歪速度波形を用いて、深層学習モデルPhaseNet(Zhu and Beroza, 2018)によるP波およびS波の到達時刻読み取りを行った。PhaseNetによる到達時刻読み取りは、DASデータの取得後リアルタイムで行った。到達時刻読み取りには、PhaseNetのデフォルトモデルに、過去のDAS観測データで得られた津軽海峡の地震のDAS波形データを学習させたモデルを用いた。P波・S波の読み取り後、震源決定プログラムhypomh(Hirata and Matsu’ura, 1987)を用いた自動震源決定を行い、震源決定結果を機構に伝送するシステムを構築した。
ケーブルから数 km以内で発生した地震については、DASデータを使って決められた震央は気象庁地震カタログと概ね5 km程度未満の差であった。ケーブルから20 km以内に発生した地震については、DASデータを使って決められた震央は気象庁地震カタログと10 km程度未満の差で震央を決めることができた。このことは、ケーブル近傍の地震の震源はDASのみで決めることができることを示唆する。ケーブルから20 km以上離れたところで発生した地震の震源決定結果は、気象庁地震カタログと東西方向の差がかなり大きくなっていた。これは、ケーブルが主に南北方向に延びており、東西方向の誤差が大きくなったためと考えられる。DASで観測できた気象庁地震カタログに掲載済の地震について、地震予知総合研究振興会の観測網(AS-net、Noguchi et al., 2017)のデータと併用して震源決定を行ったところ、DASデータを使って決めた震源と気象庁地震カタログとの東西方向の差が大きかったイベントについて、気象庁カタログの震央との差が数 km程度まで小さくなった。このことから、ケーブルから少し離れたイベントを高い精度で震源決定するためには、陸域の定常的な地震観測網のデータと併用した解析が有用であると考えられる。
4ヶ月の観測で気象庁地震カタログに掲載のない地震が、約25個検出および震源決定できた。これらの地震は、主に津軽海峡内部で発生したマグニチュード0クラスの地震で、震源は数 kmから10 km程度である。これらの地震のシグナルは、津軽海峡内の狭い範囲にしか見えていないため、気象庁地震カタログでシグナルの検知もしくは震源決定ができなかったものと考えられる。今後は、DASデータによる地震の自動検出・震源決定能力の既存のカタログとの比較や、決定した震源に基づく津軽海峡の地震活動についての考察を進めていく。